四天王寺中学校過去入試問題より・・・うそつきは秀才のはじまり!

帝都中学への算数:君は四天生になれるか?

『うそつきは秀才のはじまり』などとは不届き千万とお怒りのご父兄も多かろうと思います。

そこは、語呂合わせの修辞と大目に見てお許しくださいませ。

少し前ですが、娘が「阪急電車の社内広告にこんな問題があって、メッチャ考えててん」と話してくれたことがあり、「学校の数学もあんな問題も採り入れて教えてくれたら面白かったやろなぁ」などと話していました。

聞くと、有名な『うそつき問題』だったのですが、今年2012年の四天王寺中学の入試問題に出たらしいのです。

Z会の方から、Z会にして中高生の数学力が目に見えて落ちているというお話を聞いておりましたので、中学入試にして、こういった論理のみが問われる問題が出題されたということには、正直な話、少々違和感がありました。

学力が落ちている中で、読解力すら危惧されている中で、こんな論理の問題がどうなんだろうか?という違和感です。

僕は大阪の人間ではありませんので、四天王寺中学が偏差値の高い学校なのかどうかは全く知らないのですが、家内の友達の子どもさんが通っていて結構合格するには難しい学校だとは聞いていました。

※後日談:いやぁ失礼しましたm(__)m。大阪でも屈指の私立進学校(中高一貫の女子高)のようです。
この問題が出題されるのもさもありなんの学校でした。

ですから、僕が言いたいことは、『うそつきは秀才のはじまり』ではなくて『うそつき問題は秀才のはじまり』になる可能性を高めるだろうなということなんですね。

これはあまりにも限定的な言い方ですから、もっと正確に言えば、「論理的にものごとを考えるクセが脳を鍛えていく」ということになるでしょうか?

よく、数学センスや論理思考力を面白さを伴って高めるためにパズルなどが勧められますが、僕も確かにそれは大いに期待できると考えています。

さて、四天王寺中学の問題はネットにも出ていましたが、その前に逆に【うそつき問題】の総本家の問題に頭を悩ませてウォーミングアップをしてみることもいいのではないでしょうか?

算数の基本を鍛える問題(1)の総本家1

【うそつき問題 総本家版】

あるところに正直村とうそつき村がある。

正直村の人間(以後、単に正直者と呼ぶ)は、どんな質問をされても必ず正直に答え、うそつき村の人間(単にうそつきと呼ぶ)は、どんな質問をされても必ずうそをつく。

ある日、あなたは正直村とうそつき村の近くにやってきて、泉を見つけた。

あなたは、その泉の水が飲んでも安全かどうかを知りたい。

そこに、たまたま人が通りかかった。

その人は、正直者かうそつきか、そのどちらかであることは間違いない。

しかし、どちらかまでは分からない。

この人に、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を一つだけして、その水が飲めるかどうかを判定するにはどうすればいいだろうか?

出典:数学パズル論理パラドックス―数理センスを磨く60問

うそつきは秀才のはじまり

出典の本には、天秤の問題や蚊取り線香の問題など数学的な問題から、パラドックスやジレンマに至る課題まで、生徒さんだけでなくご父兄の皆さんにもある程度解ける問題が詰まっています。

数学のセンスというよりも、論理的にものを考えていくことの面白さを感じることができますので、文理共通の素養としてお正月に脳の鍛錬など如何でしょうか?

もし、ご父兄様がこのページをお読みでしたら、お子さんと一緒に考えてみられてはいかがでしょうか?

一つの問題を対話することは、家族が出来る【見えない教育】の一つになるとともに親子のいい関係を紡ぐ糊の役目も果たしてくれると思います。

とは言っても、なかなか難しいですね!!

そこで、基本的な問題を一つご紹介しておきましょう。

ここから始めて糸口を掴んでみられては如何でしょうか?

算数の基本を鍛える問題(1)の総本家2

ある島には次の2つの種族の人だけが暮らしています。

1つの種族はナイト(騎士)と呼ばれる人々で、彼らは「真」であることしか喋りません。

他の1つはスレーブ(ならず者)と呼ばれる人々で、彼らは「偽」であることしか喋りません。

「あなたはナイトかスレーブかどちらですか?」と尋ねた時、

  1. 「私はナイトである」と答えてくれたとすれば、彼はどちらでしょうか?
  2. 「私はスレーブである」と答えてくれたとすれば、彼はどちらでしょうか?

子どもたちは教科書が嫌いです。

なら、なんだか面白いことから始めて、それを教科書につなげていってくれるような働きかけはとても大切なことです。

先生がやらないなら親御さんがやってあげればいいんです。

親が分からないことを子どもが分かったら、徹底的に褒めてあげることこそ最高に子どもを育てます。

上記の基本的な問題は、理性の限界という書籍でも素材の一つとして、登場人物によって、まるで学校でのディスカッション風景のように面白く論議されていますから、知的好奇心の旺盛な方は是非ご一読ください。

論理的にものごとを積み重ねていくことは、大変重要なことです。

それが出来ないから、世間は感情だけの争いが絶えない面も一因としてあるのではないでしょうか?

そして、だからこそ、中学校にして、論理的な思考の出来る生徒を入学させたいという渇望が、こういった純粋に論理だけを問う入試問題を作らせるのでしょう。

算数の基本を鍛える問題(1)

出典:2012年四天王寺中学 算数入試問題

下の(ア),(イ)に登場するA,B,Cは火星人か金星人のどちらかです。

火星人の男性は常に本当のことを言い,女性は常にうそをつきます。

金星人の女性は常に本当のことを言い,男性は常にうそをつきます。

次の\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)に当てはまる語句を答えなさい。

ア)Aに「あなたは金星人ですか」とたずねたところ、「いいえ」と答え、「あなたは女性ですか」とたずねたところ、「はい」と答えました。
Aは\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)星人で、性別は\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)性です。

イ)Bは「Cは金星人です」と言い、Cは「Bは火星人です」と言いました。
また、Bは「Cは男性です」と言い、Cは「Bは女性です」と言いました。
Bは\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)星人で、性別は\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)性です。
Cは\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)星人で、性別は\(\boxed{\phantom{\text{あ}}}\)性です。

この問題を、塾や家庭教師に丸投げしていても、よほど良い指導者に付かない限り、半分以上のお子さんは結局何も理解できていませんよ。

元々は、紀元前から存在し、今では「自己言及のパラドックス」「嘘つきのパラドックス」として分類される論理学の課題に由来する問題であって、ゲーデルの不完全性定理にまで波及するレベルの問題なのですから…。