[脳細胞を働かせてちょう題 10] 言葉だけから答えが出る算数

メアリーの作ったクッキーは全部で21個。
僕ら5人はじゃんけんをして勝った順に好きな個数をとって食べることにした。

そして結果は、

  • ぼく「残っていたうちの3分の2の個数を食べた。」
  • ひでき「残っていたうちの半分の個数を食べたぜ。」
  • メアリー「残っていたうちの半分の個数を食べたわ。」
  • だいちゃん「残っていたぜんぶを食べたよ。」
  • ピーター「みんなちがう個数を食べたね。」

さて、ぼくは何番目にいくつたべたでしょう。

過去の算数オリンピックからの出題

言葉だけから答えが出る算数

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さーて、全く手が出ないっていう君には何と言えばいいのでしょうか?

おそらく、一般的にも突破口・糸口の源泉になるのではないかと思いますが、

  1. 「言葉(設問も含めて)だけから一つでも確実と言えることはないだろうか?」と考える条件反射
  2. 可能性はいっぱいあるわけだから、ともかく「たとえば、・・・だとすれば」と考える条件反射

いつでも、この意識で臨んでみて!
どんな問題だって、この意識が役に立つよ。

確実に言えることは何だろうか?

会話だけを見て確実に言えることは何だろうか?

  • ぼく「残っていたうちの3分の2の個数を食べた。」・・・最初に取った人ではないだろう
  • ひでき「残っていたうちの半分の個数を食べたぜ。」・・・最初に取った人ではないだろう
  • メアリー「残っていたうちの半分の個数を食べたわ。」・・・最初に取った人ではないだろう
  • だいちゃん「残っていたぜんぶを食べたよ。」・・・最後に取った人じゃないかな?
  • ピーター「みんなちがう個数を食べたね。」・・・食べられなかった人はいないんだ!

後ろの2人の談話から、

  1. だいちゃんが最後に取った人
  2. みんなちがう個数を食べた

という2点が確実に言えることだね。

ただ、僕のようにひねくれちゃうと、「みんなちがう個数を食べたね。」という談話を聞くと、算数や数学では食べなかったことを「0個食べた」と表現することがあることがついついと頭に浮かんできちゃう。

もしそうだったとすれば、ピーターが最後に食べた人である可能性だって出て来るよね。

だいちゃんが残っているクッキーを全部取っちゃって、最後にピーターが0個食べたってこと。

でも、ここではまず、普通には、こういった談話はしないだろうと考えて、「0個食べた」は考えないことにするけれど、最後には再度思い出して検討することは必要かもしれないことを頭に置いておこう。

また、「残っていたうちの・・・の個数を食べた。」も、普通は最初に取った人は言わない言葉だけれど、最初に取った人にとっては、「最初の個数」=「残っていた個数」と言えなくもないから、「最初に取った人ではないだろう」という予想に止めている。

ともかくも、確実に言えることは、

  1. だいちゃんが最後に取った人
  2. みんなちがう個数を食べた

「たとえば、・・・だとすれば」を考えていこう!

ほとんどの諸君は、面倒くさいんのか何なのかは知らないけれど、先ほどの到達点から何にもしないで「分かんな~い」と嘆くだけ。

「最初に取った人は誰だろうか?」と分かる筈のないことばっかり考えて、まるでそれが分からないと前に進めないかのように止まってしまう。

分からないときは、「たとえば、・・・だったとすれば」で考え始めてみることね。

たとえば、最初にぼくが「残っていたうちの3分の2の個数を食べた。」とすれば、最初だから21個 × 2/3 = 14個を取って食べることになる。

すると、残っているのは7個だね。

では、次に食べた人は誰?

「残っていたうちの半分の個数を食べた。」と談話したひできでもメアリーでもないよね。

だって、7個は奇数だから半分には分けれない!!

次に、最後の人であるだいちゃんでもないから、次に食べた人は、結局ピーターしか可能性はないよね。

この場合、ピーターは「残っていたうちの半分の個数を食べた。」という2人の前に食べるわけだから、自分が取った後に偶数個が残るように取らなければならないよね。

しかも、その残った偶数個の半分を次の人が取ってもまた偶数個が残るように取ってあげないと談話の辻褄が合わなくなる。

ということは、7個の内3個を取って4個を残してあげるしか可能性はない!

ここまでは決められたけれども、次を考えるとたちまち破綻する。

残った4個の半分=2個をひできかメアリーが取ると、残りは2個。

残った2個の半分=1個をメアリーかひできが取ると、残りは1個。

この1個はだいちゃんが取ることになるが、「みんなちがう個数を食べた」という談話が成立しなくなっちゃう。

よって、最初にぼくが食べたという「例えば」は虚しく散ったことになる。

仮説を立てて検証していくことに臆病な気持ちを克服する

親子でめざせ!算数オリンピック

このように進めていくと、「どういった問題なのか?」がものすごく分かってきたんじゃないかい?

ちょっと難しい言葉で言うと、「仮説を立てて検証していく」ことを身に着けるということは問題解決の突破口を開いてくれる一つの糸口を掴んだということなんですね。

このように、最初の「例えば」をやった途端に、次の「例えば」ははっきりと絞られてきたりするんですよ!

最初に取ったのはピーターしかあり得ないといったように…。

さぁ、挑戦してみてくれたまえ。

「たとえば、・・・だとすれば」と考えて、まずは走り出してみることを意識しながら…。

答えは、「4番目で2個食べた」です。

さて、「仮説を立てて検証していく」ことは、算数や数学のすべてのセンスに共通するスタート地点と言っても過言ではないほど重要な要素ですよ!

整数の性質など単元も含めての内容の本質を心に刻む作業(指導)は、もちろん必要なんですけれど、それ以前に「行き詰ったら仮説を立てて前進を試みる」という発想を知らなければなりませんし、その勇気をも常に前提として持ち合わせていなければなりません。

その意味を、この問題を介して学んでくださいね。

最後につけ足しておくと、算数、いやいや数学ですら、多くの問題は言葉でほぐしていくステップを経るものです。

そして、その多くは、「例えば、・・・で考えてやると・・・」「もし、・・・だったら」「言い換えると・・・」といった言葉を介することに集約されます。

もし、君が一つの問題に着手してから、一言の言葉も呟かなかったとすれば、それは君が実質何もしようとしていないことだと僕は見抜いてしまいますよ。

かつて、「数学は暗記だ」などという不可思議なことを言う著名人がいましたが、それを言うなら「数学は言葉だ」というべきなのです。

君が「数学は言葉だ」ということを身をもって理解し出した時、それは、君から算数や数学の苦手意識が剥がれ落ちた指標だと言えるかもしれません。