学歴と就職事情:学歴フィルター

学生の課題に対する応用がほとんど利かなくなっているのです。考える能力が落ちていることを懸念します。それが、今では、学校の先生が手取り足取り教える。例題をいっぱいこなして、暗記していく。自分なりの勉強の仕方が確立できない。

1970年頃は、医学部に入学する学生の入試の最高点よりも、工学部の学生の最高点の方が高いこともあった。その頃から比べると学生の数は半分になりました。かつて京大に入れなかったレベルの学生が入れるようになったのかもしれません。

長期的に見ると、京大工学生の学力は低下傾向ではあったのですが、ここに来て急に下がってきている印象があります。

京都大学 前副学長:大嶌 幸一郎 名誉教授(県立芦屋高校OB) 2008年談より引用

就職活動

「大嶌 幸一郎先生の言われることは本当でしょうか?」と問う前に、おそらく保護者さんの知りたいことは、そんなことよりも「それでも、良い大学を卒業すればきちんとした会社に就職できるでしょうか?」ということではないかと思います。

ただ、この話をするとすれば、学究の道に進む場合は別として、 文系か理系か、及び保護者さんにとっての「きちんとした会社とは何か?」や業種や職種によって大いに違ってくることです。

細かい話をする前に、社会全体としては学力の低下を如実には感じているものの、総じて言えば、現実的には【優秀な人材は吐くほど居る】ということ、【優秀な人材はそれほど要らない】ということは頭に入れて置かれた方が宜しかろうと考えます。

何故なら、昔から言われるように「一部のハイタレントと大多数の安価な労働力」で社会は充分に機能するからです。

文系:学力とは別物の能力は必要だけれど…

私の文系の友人は、メガバンクに就職しましたが、新入社員研修の折には、旧帝大及び神戸大卒と早慶卒だけが集められて、吹き抜けの上階からそれ以外の新入社員を見下ろすシチュエーションの中で、「彼らは君たちの兵隊なんだよ」と教育されたそうです。

文系の場合、「学力的な優秀さは必要なのか?」というテーマはありますが、大多数に人気のある大企業や一流と言われる企業が新卒を採用する場合、主要な戦力(ピラミッドの上層)を学歴と今までの採用実績で判断することは安全性を考えればやむを得ないことかもしれません。

たとえ、その内の何割かはピラミッドの上層になれない人材だとしても、その他の替わりは十分に果たせる労働力として見ればいいだけのことなのですから。

ただ、特に文系の場合は、実働部隊に振り分けられた日々の営みは、論理的能力とは別物の人とのコミュニケーション・駆け引き・機転・会話術・押しの強さ・人間的魅力など様々な能力が業種に応じて、シーンに応じて必要とされます。

学歴と別物の能力とは両立しないというものではありませんし、むしろ両立させている人材もいくらでも居るという中で、ピラミッド構成さえ維持できればよいわけですから、現実的には、大企業となればほとんどが学歴フィルターを設けていることは今も昔も変わりないことは周知の事実です。

不公平に思われるかもしれませんが、雇う側にも選ぶ権利がありその尺度として学歴をメインにするのは、ある意味、実績による安心を選択しているとも言えます。

このように就職する際には、学歴というものは圧倒的なプライオリティを与えることは確かですが、かと言って、就職後の業務においては別物と考えねばなりません。

先にお話したように、どんなに有利に就職が出来たとしても、まずは実働的日々の営みから修行していかねばならなわけですから、論理的能力とは別物の能力の方がむしろ問われていきます。

実働の日々の営みは、基本的には誰でもできることですから、普通にこなしていても「学歴が高いのにたいしたことないよ」と言われがちですし、別物の能力が特に劣っていた場合などは、「学歴高いのにクソの役にも立たんなぁ」と陰口を叩かれることになります。

企業側も、実働部隊の優秀な戦力として自社の仕事の性質に応じた別物の能力が高い人材の確保も怠りませんので、ピラミッドの上層から漏れてしまった場合には、逆に辛い人生になってしまうかもしれません。

しかし、別物の能力が高い人材を確保するにも企業側は苦労しているようです。

私の友人は地方でメーカ系販売会社の社長をしていますが、「頭がいい系(といっても大したことないんだよ)より体育会系」を採用してみたところ、全く役に立たずに辞めていったと言っていました。

「体育会系での忍耐力や継続力と会社での忍耐力や継続力とは全く別物やなぁ。女子社員に指導されるのが耐えられないらしい。」

考えてみれば、頭より体が期待されるような仕事は、あなたが就職したいと願う会社ではまずないことは明らかですものね。

ですから、そういう意味でも、まず学歴が優先され、入社した後には、実働的諸能力や改善力・提案力などで評価が分かれていくというのが概ねの現実なのではないでしょうか?

理系:学力とは別物の能力は特に必要ないけれど…

一方、技術系は、やはり専門に対する知識・素養が要求されますから、自然に学歴は重視されます。

現実は、ほとんどの場合それほど高い知識が必要なわけではありませんが、やはり、専門に関する常識とセンスだけは最低限必要になります。

ただ、こちらも、「一部のハイタレント部隊と大多数の最前線労働力」が必要なことは、文系と類似性があるとはいえ、「大多数の最前線労働力」は専門性がある分、大切にされるという点でやや相違しますかね。

これは、平均的に見れば理系出身者は文系出身者よりも年収で約100万円上回るということにも見てとれます。(生み出した価値から見れば、もっと差があって当然なのですが、そこは日本特有のシステムが・・。)

とは言っても、技術者は技能者も含めた、たった数人のプロジェクトチームで、企業間競争はあるにせよ何万人、場合によって何十万・何百万の人に多大な価値を提供してしまう分野ですから、イノベーションや世代交代絡みの需要しかないとも言えます。

ですから、経済が昔のように成長するわけがない現在では、それほど沢山の優秀な人材は必要ないというのが本当のところです。

さて、「一部のハイタレント」は研究部門であり、「大多数の最前線労働力」は開発・設計・生産技術等の部門であると考えることができます。

「一部のハイタレント」になるには、やはり大学院修士課程修了でないと難しいですけれど、今では理工系では3割から4割が大学院へ進学する事情から考えて、修士を出ても研究に従事できる人は限られてくるような気もします。

40年前、私の時代ですら、大手では院卒でないと研究などには就かせてもらえないのが一般的でした。

私の場合は、一部上場とは言え知名度のない会社でしたから、研究部門に配属されましたけれど、それでも、そこは東大・京大及び院卒でやっと阪大と慶應といったような布陣でした。

私の同期も、文系採用で慶應と同志社ぐらいしか居らず、技術系はほぼ国公立大学出身、阪大出身でも現場配属といった感じでした。

ですから、良い大学を出ているに越したことはありませんが、カッコよい仕事に就けるという意識は最初から捨てておくことが必要です。

「企業が利益を上げるための最前線の現場で働く」「技術は肉体と頭脳の両方の労働である」という意識は必要不可欠です。

その限りにおいては、格別に高い知識を必要とすることもなく、別物の能力も大して必要ではありませんから、あまり学歴や性格の負い目に翻弄されることなく実力を正当に評価される分野ではありますが、最も大切なことは発想力・アイディア力です。

私が知っている範囲では、明治大学の工学部出身者には非常に優秀な方が多い印象があります。

技術系を巡る状況を思うままに書き出しておきますと、

  • 平均して、理系出身者は文系出身者よりは給与レベルは高い(年収レベルで平均100万円の差)
  • 但し、旧帝大及び早慶レベルから一流金融・保険・商社・広告等の特定の会社に就職した文系と比べたら遥かに低給
  • 旧帝大及び早慶レベルでも学部卒であれば、研究・開発などの分野に配属されることは難しい
  • 学究肌の人が最前線労働力として配属されてしまうと、不満が蓄積する可能性は高い
  • 最前線労働力としての立ち位置を覚悟し、これに邁進できるなら、遣り甲斐と安定の両方を手に入れることができる

まぁ、こういったところになるでしょうか。

ともかくも、文系・理系にかかわらず言えることは、

  • 学歴フィルターは厳然として存在しますから、より高い学歴を手に入れた方が圧倒的なプライオリティを手に入れることが出来る
  • その中でも企業の国公立大学優先の姿勢は依然として強い(Z会職員の方談)
  • 目指している会社において学力以外に必要であろう素養と自分の持ち備えた素養を対照して、最も相応しい進路を熟考することの大切さ
  • ※自殺された高橋まつりさんは、そもそもそこでのミスマッチングがあったのではないかと考えてみられては如何でしょうか?
    そもそも、硬の代表、東大を卒業して軟の代表、電通に行くこと自体が私には違和感をもってしか映らないのです。

  • 会社が求めるものは体や根性といったものではなく、改善の智恵や創造的なアイディアを積極的に提案できる頭の力です。

といったところになるでしょうか。

そう考えれば、冒頭の大嶌先生の言葉から考えますと、より良い大学に合格するすることへのチャンスがこれほど拡がった時代はないとも言えますし、また、これに乗じて新たな意欲ある層が、おこぼれで合格しているような層を駆逐しないことには、日本自体が弱体化していくこと必定ではないかとすら思えます。

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京都大学工学部OB2名と大阪大学大学院工学科OBの3名、しかも全員ハードエンジニア出身(教師転身2名)で執筆していますから、商売人や学生上がりのような根拠のない、いい加減な甘言は書いていません。

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