表題の「算数・数学好きになる」あるいは「算数・数学が面白くなる」というテーマは、簡単そうに見えますが多面的に考えなければならない非常に難しいテーマであり、それをクリアーしたとしても実践的にはなかなか思い通りにはいかないテーマです。

どんなに優れたアプローチであっても、文字だけで伝えるには限界があり、結局は直接指導する指導者の情熱や力量に委ねられるところがあります。

eラーニングが決して成功しないのは、やはり人対人の触れ合いが教育には欠かせない要素だということを示唆していることが出来るでしょう。

私もFAX塾を開始した後、阪神淡路大震災の直前にその課題の一環として、現在の【数学への導火線】を配布したわけです。

と同時に、その時に行った理屈を積み重ねる指導を体系化して資料としました。

それでも、全ての子どもではありませんが、やはり結局は慕ってやって来た時に顔を見ながら伝えてあげることに勝ることはないことを感じたものです。

文字だけから興味を湧かせたり、本意を汲み取り実践に移す子も確かにいますが、何らかのフォローがその時に無いとそのままに終わってしまう場合の方が多いように感じられます。

ここでは、先ず「算数や数学を面白く学んでもらう」指導で有名な芳沢光雄博士の著作をご紹介しながら、そのことも含めて考えていきたいと思います。

というのは、ご紹介する著作を読みながら、やはりその難しさをひしひしと再認識したからに他なりません。


数のモンスターアタック

芳沢先生は、対数学に対するタイプを

  1. 純粋数学型
  2. 現実社会型

に分類されて、2.現実社会型へのアプローチに重きを置かれて活動されてきた先生で、お名前は皆さんの方がよくご存知かもしれませんね。

反ゆとり教育でも精力的な活動をされている先生です。

さて、私自身は、算数や数学を好きになってもらうための指導がどれほど洗練されているのかという興味とともに「現実社会型へのアプローチ」とはどのような話がなされているのかという点に興味を持って読んでみたのです。

どうやら「数のモンスターアタック」は1.純粋数学型に向けて書かれたものであり、「不思議な数のおはなし」は2.現実社会型に向けられて書かれたものになると思われます。

そのいずれもが、子どもたちを算数好きにさせようという思いに溢れた著作であり、実際に興味を抱いてくれる子も一定は出て来ることは間違いないのではないかと思われましたが、やはり文字の限界というものを感じないということはありませんでした。

また、文字の限界という宿命を度外視したとしても、これを読めば必ず算数好きになるかと言えば、それは厳しい話でしょう。

これは、何事も一つの要素だけでは人を励起させるのは難しいとか、天分にもよるとかいった共通の要素をも含んだこととして、算数や数学を好きになってもらうには、まだまだ多くのフィルターをクリアーしなければならないように感じられます。

実は、その辺に置いてあったもので私の妻も知らぬ間に2冊とも読んだとのことで、「これ、あんまり面白くないわ。ホントに数学の先生?あなたの書いたものの方がずっとフーンと思えて面白いから、もっと書いたらいいのに。」という感想でした。

妻は、まるっきし文系人間なんですけれど、数学と物理は分かったら面白いと好奇心が強く、私の自然科学系の雑誌をチョコチョコ盗み読みしているようで、coopさんの機関誌に乗っていた「数の悪魔―算数・数学が楽しくなる12夜」という本を古本屋に行ったときに探してくれとか言うのですね。

それでamazonでどんな本かと調べてみたところ、確かに☆5つが一番多いのですが、それほど評判が良くはなくレビューを見る限りは期待外れ感の方が大きいような気がしましたね。

まぁ、それほど子どもに興味を持たせるように表現するということは難しいことなのだということはお分かりいただけたらなと思う次第です。

不思議な数のおはなし

純粋数学型への「数のモンスターアタック」では、4人の子どもたちが、それぞれ違った怪獣が住む13の世界を入り口で与えられた指示文を解くことによって怪獣を倒し夢の世界にたどり着く冒険物語仕立てになっています。

各世界の入り口での指示書の意味や解き明かすプロセスやてこの原理・作用反作用の法則といった物理との兼ね合わせでの唐突さがところどころ感じられ、全体としては小学校高学年の平均的な生徒を対象としていると考えても、やや難しいかもしれないなという感がありました。

例えば、「お腹にさえぎられる視界」の世界に入る入り口での数字列の謎では数字列が与えられます。差を取ってああでもないこうでもないというところはいいのですが、最終的に頭のよい少年ケンが双子素数という概念であっさりとケリをつけます。

【5,7,13,19,31,△,□,・・・】を見て、素数列だと見抜ける子は少なからず居ることは確かですが、それはそもそも算数が好きか興味がある子であって、見抜けない子を面白がらせるには、ここで時間を取ることが必要なんではないかと思ったのが第一点。

次に、素数列だと見抜けるレベルの子に対して、双子素数なる概念で面白がらせることを目的とした場合、これを単体で示したとしても、さほど興味は広がらないであろうと感じたのが第二点。

「お腹にさえぎられる視界」によって、逃げるよりも近づくことで避難するという意外性は子どもにとって実に面白いと思うのですが、現実的な幾何学的解決のプロセスをもう少しシンプルなものにした方がよいのではないか?と感じたのが第3点。

その他、「八つの方向に赤い光を放つ石板」では、ケンが最終的に配置の仕方を指示するのですが、その正解に対するフォローがないのが残念。

何故そう配置するのか?配置を決めるアルゴリズムまでを説明してあげると、算数への興味に繋がるのではないかという思いがあります。

ピタゴラスの定理の面積和としての表現も結論だけですので、なるほどというわけにはいかないですし、てこの原理や放水反動力など物理に関する説明もやや難しい感が拭えませんでした。

物語の中に、こういった要素を落とし込むのは冗長度との兼ね合いで難しいことであることは重々理解はできるのですが、冒険の数を減らし、その分をもう少し「何故!」という解説に回した方が興味に繋がるのではないかという印象があります。

一方、「不思議な数のおはなし」は、内容的には難しい数学を日常的なものや風景で沢山紹介するというコンセプトで書かれたのでしょう。

「へぇー面白いなぁ!」という気持ちが芽生える可能性が高いのはこちらでしょうね。
ただ、タンパク過ぎるなと感じるパートもところどころ見受けられます。

教科書に載っている通過算のようなテーマもありますが、詳しく説明しなければ「何故か?」までは分からないであろうテーマも多々ありますから、お父さんやお母さんが一緒になって家族の会話の一環として一緒に考えてあげるといいですね。

例えば、「平均寿命が75歳で、毎年100万人が生まれ100万人が亡くなる国の人口はいくら?」なんて問題は、説明されて式で示されても「意味分かんなーい」ものです。

このパート(「スーパーマーケットの謎」)を読んで面白いとは思っても分からない子は多分結構残るでしょう。
絵を見て考え「なるほど!」と分かればいいのですが…。

全体的に、もう少し掘り下げたところまで案内できればいいのでしょうが、そこは実際の指導者が介在する意味と価値だという意味で余韻を残されているのかもしれませんね。

ともかくも、お母さんやお父さんは一緒に考えてあげることだけでも様々な意味での意味や価値に繋げることができるのではないかと思います。

さて、数学が好きじゃない層、苦手が故嫌で仕方がない層、出来るようになりたいけど難しいとあきらめている層に対して、純粋数学的及び現実社会型的アプローチを織り交ぜて指導していくことはもちろん最も基幹的なことだと考えますが、もう一つ、今現在学んでいる内容に対して、「分かっちゃった!」あるいは「できちゃった!」と感じさせることほど最短距離のアプローチもないということも忘れてはなりません。


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教材では、英数と算数の興味の引き金となり、且つ本質に目を向かせてしまうコアな問題を精選し、不器用レベルの脳細胞の働かせ方目線で解説。

京都大学工学部OB2名と大阪大学大学院工学科OBの3名、しかも全員ハードエンジニア出身(教師転身2名)で執筆していますから、商売人や学生上がりのような根拠のない、いい加減な甘言は書いていません。

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