松平先生の代表作となるのが「試験に受かるユダヤ式記憶術」であり、語学以外の一般的な「学び」に関する6作の内では4作目にあたります。

2009年8月に販売を開始されていますが、奇しくも、当方の「帝都大学へのビジョン」の一般販売開始と時期を同じくします。

松平先生は「試験に受かるユダヤ式記憶術」を何故書かれたのか?

松平先生は「ユダヤ式記憶術」を何故執筆されたのでしょうか?

松平先生と親交のある当方として、実際にお聞きした上で書き得ることだけをお示ししておきたいと考えます。

執筆動機としては、商業記憶術のあまりに不勉強な内容に怒りを感じたことであるとはっきりと仰っていました。

もう少し具体的に申し上げれば、「通俗的な右脳記憶術」への妄信を批判する意味で「ユダヤ式記憶術」を執筆され、「通俗的な右脳速読術」への妄信を批判する意味で「左脳型速読術」を執筆されたという流れとなります。

この「右脳」神話の蔓延に対する反抗の意味では、当方の「帝都大学へのビジョン」の執筆においても同じ思いがありましたことを付け加えておきます。

また、当方の推測としては、「ユダヤ式・・・」と銘打ったノウハウ本も世の中には数多ある中、どれもが感覚的・通俗的にしか使われない「ユダヤ式」なる言葉で人目を惹こうととするばかりで、その中身は浅薄なものが多い(罪がないものから罪深いものまで)こともあったのではないかと考えています。

このあたりは、「右脳・・・」や「ユダヤ式・・・」とタイトルされた書の書評やアマゾンの口コミをご覧になれば一目瞭然だと思います。(もちろん口コミ自体の真偽を判別する眼が培われていてこそ可能なことなのですが…)

この項目の最後に、「記憶術」に関しても深く探求された松平先生の知見をご紹介だけしておきましょう。

中世までに盛んに研究された「記憶術」は、デカルトによって忌み嫌われて以来、活版印刷の登場で完全に打撃を与えられ、それ以降には学術的に研究されることはほとんどない領域であると分析されています。

にもかかわらず、今の日本では受験等で知識を覚え込むための術に関するニーズが絶えないが故に、未だに溢れかえる「記憶術」本は、アカデミックの領域とは言えない、よくてシモニデスの「場所法」を意味なくアレンジした「記憶術」本であり、近年に至っての多くはトンデモ本の類と考えた方が無難であると当方は考えています。

松平先生は「情報商材」の「じょ」も知らずに原稿を提供された後、本書の出版からエージェントを現在の出版・販売元である東京教育出版さんに変更されました。

その東京教育出版の代表者さんとも遣り取りをさせていただきましたが、思いがけずにも、松平先生を彷彿とさせる方でしたから、やはり「類は友を呼ぶ」の正しさをつくづくと実感した次第です。

松平先生は「試験に受かるユダヤ式記憶術」で何を伝えられたいのか?

生命の樹

松平先生は「ユダヤ式記憶術」で何を伝えられたかったのでしょうか?

もちろん、実際的に役立つための記憶法として執筆されているわけなのですが、そこから汲み取って欲しいと願われたことは、「論理」を重んじることの大切さなのです。

それは何故か?と言えば、「論理」こそが長期記憶の鍵であると考えられたからであり、その「論理」の図式としてユダヤ教カバラ思想を起源とする「生命の樹」を捉えられたというわけです。

このように「カバラ(神秘主義)思想」などと言ってしまうと尻込みされてしまう方も多いかもしれませんが、具体的な使い方に適応した表現で言えば「正確な理論を理解するために、必要な範囲内で必要な知識を体系的に覚える」ために図式として利用してくださいということに他なりません。

松平先生は、「不必要な神秘論」や「不必要で証明されていないエセ脳科学理論」を使わずに、客観的に述べるべきだとして、記憶するための方法論を展開されています。

「論理」の図式として「生命の樹」を主題にされていますが、その他一般的な「語呂合わせ」による記憶法なども豊富に解説されています。

カバラでは、天地創造(あるいは宇宙の誕生)の象徴を10個の球(セフィラ)と22本の小径(パス)で図式化し、その図を「生命の樹」あるいは「セフィロト」と呼びました。

従って、「何かが、何らかの要因で発展して、何かに落ち着く」ということを図式化したものと言えますから、松平先生は「何かが生み出される過程」に係るものであれば、おおよそ全てが当て嵌められると記されています。

従って、大学受験においては「世界史」や「日本史」や「哲学関連項目」に最も適していると言えます。

「ユダヤ式記憶術」が役立つ人と役立たない人

皮肉で言うつもりは全くありませんが、ここではっきり明言しておいた方が親切だと考えますので、この項目を設けました。

本書は、心から「学び方の本質」を我が物にしたいと願っている人にしか役には立ちません。

金儲けやステータスのための学歴が目的で「試験に合格したい」とお考えの方には、読まれても何の役にも立ちません。

また、『記憶術』という芸が欲しい方には向きませんし、芸を利用してビジネスにしよういう算段の方にも向きません。

読まれても、その真意を汲み取ることですらされないと思います。

一方で、本来は、そういう方にこそ記憶の本質・枠組みを掴んでいただいて、本物の能力を身に付ける人へと大変身していただきたい思いがあります。

下世話な『術』に対抗するために、心ならずも「術」と冠して反抗せざるを得なかった事情もあるように思うのですが、その実は方法論の本質ですから、不純な動機の方には到底合わない記憶法であり勉強法であることは申し上げておきます。

これが、発売当初から2ch等で「もともと頭のいい奴にしか実践出来ない」とコメントされた所以であり、正しくは「真摯な心をもって学びを会得したい方には誰にでも、すぐにでは無理であっても、いつしか必ず有益となる日が来る」とお考えいただければいいかと思います。

手前味噌と思われるかもしれませんが、2024年現在をもってしても、ネット社会であれリアル社会であれ、松平先生と当方しか真っ当な指導者の指南書は見受けられないと思われます。

「試験に受かるユダヤ式記憶術」アンケート結果

学習指導した当方の教え子が長年運営しておりました真偽判別参考サイト(事情により閉鎖:以降”【XXX】”で表記)で採っておりましたアンケートとコメントをご紹介しておきます。

利用されていました「忍者アンケートフォーム」が2020年6月でサービス終了となったそうですので、アンケートページを閲覧していただくことも投票していただくこともできませんことお詫び申し上げますm(__)m

スクリーンショットで全てを保存しておけばよかったと後悔しておられましたが、保存しておられた限りをご紹介して参ります。

2018年9月13日時点でのアンケート結果画像

松平勝男:試験に受かるユダヤ式記憶術 アンケート投票結果160528

  • 「試験に受かるユダヤ式記憶術」大いに役立った!(実感)-14票-
  • 「試験に受かるユダヤ式記憶術」役立ち期待大!(予感) -25票-
  • 「試験に受かるユダヤ式記憶術」で役立ち期待薄!(予感) -5票-
  • 「試験に受かるユダヤ式記憶術」役立たず!(実感) -5票-

「ユダヤ式記憶術」に寄せられたコメント

残存している一部ですが、以下のコメントをご一読いただくだけで、あなたの知りたいことはほぼ分かるのではないでしょうか?

以前から渡辺式とつがわ式は読んでいたのですが、思うところがあってこのユダヤ式を購入しました。
【XXX】さんの書かれていた通り深いですね。

渡辺式はまだよかったのですが、そのためにやらねばならない訓練を思うとバカバカしくなり、つがわ式に至ってはウンザリしました。
ある意味誰でもやってることじゃないかと思えました。

ユダヤ式もそのまま使おうと思うとかなり難しいと思いますが、読んでいてそのまま真似しなくていいんじゃないかと気が付きました。
自分の決めた5つの相関図を作って覚えていけばいいと思い実践してます。

それで気が付いたのですが、これを気付かせるために書かれたのではないかと思いました。
おかげ様で、覚えるということがつかめたような気がしますし、実際に覚えられているという実感を毎日味わえるようになりました。

購入された方はセフィラを全部当てはめようとするのではなく、少し試用して必要な項目だけに限定して使うようにすると使いやすいと思います。

by ヒブラシ様


子供の教育に役立てられるかな、という思いで購入しました。

何にでも応用できる考え方が記述されているので、自分の立場に「あてはめ」できればいいのですが、10個のセフィラの「あてはめ」が凡人にはなかなか難しいです。

もっと個数を絞った例や、いろいろな場面での応用の具体例が沢山あれば、実感しやすい(あてはめしやすい)と思いました。

by アッキー様

松平さんが取得された「システム監査」を自分も受験しようと思い、その為の記憶術の参考になればと思い購入しました。

情報処理技術者試験への「生命の樹」の使い方の例があればと期待していたのですが、主に歴史での使い方の説明でやや残念でした。

しかしながら、ストーリー性のある分野については「生命の樹」を使って覚えるのは参考になりそうだと思いました。

システム監査についてはちょっと独学で「生命の樹」に当てはめられるか挑戦してみます。

本書では一般的な記憶術(ゴロ合わせ)なども紹介されていて参考になりました。

また、松平さん自身が地理を覚えた時の方法が具体的に書かれており、学生が歴史や地理を記憶するために多いに参考になると思います。

中学生や高校生から読み始めてもいい良書だと言えます。

最後に、「生命の樹」の10個のセフィラを覚えるのは私の場合恥ずかしながらゴロ合わせで5日程かかってしまいました。

応用できるまで時間がかかるかもしれませんが記憶定着のツールとして自由に使えるようになる為に試行錯誤してみます。

by ぴっち様


現役の受験生です。
ユダヤ式記憶術を購入し、松平さんに共感しました。
そこで、大学受験向けに松平さんのマニュアルを購入しようと思いました。
・・・後略・・・

コメントからピックアップした「ユダヤ式記憶術」判別の道標

  • 【XXX】さんの書かれていた通り深いですね
  • セフィラを全部当てはめようとするのではなく、少し試用して必要な項目だけに限定して使うようにする
  • 主に歴史での使い方の説明でやや残念でした
  • ストーリー性のある分野については「生命の樹」を使って覚えるのは参考になりそうだ
  • 10個のセフィラの「あてはめ」が凡人にはなかなか難しいです
  • もっと個数を絞った例や、いろいろな場面での応用の具体例が沢山あれば、実感しやすい(あてはめしやすい)
  • 一般的な記憶術(ゴロ合わせ)なども紹介されていて参考になりました

「ユダヤ式記憶術」への【XXX】の総評コメント

発売当初より、上記の感想を代弁するかのような声「もともと頭のいい奴にしか実践出来ない」を2chで見かけていました。

これに対し、【XXX】では、「この評価は正しくありません。賢くなりたいと願う人なら誰でも取り組めますし、その本質はひとかどの人は必ず通る普通の道です。」と書いて参りましたが、但し書きも添えておりました。

そこで、散文化していた但し書きをここにまとめておきたいと思います。

まず、「受験生なのですが効果がありますか?」あるいは「大学受験生なのですが、ユダヤ式と逆転合格とどちらがいいですか?」というご質問をよくいただきます。

これに関連して、アンケートにもう1件入っております”ぴっち様”のコメントからの引用しますと、「中学生や高校生から読み始めてもいい良書だ」と書かれています。

【XXX】でもその通りだと考えるのですが、一般的な受験生を対象の場合であれば、「勉強法全般を説いた逆転合格をお勧めします」というご回答になります。

何故ならば、受験生の多くは直接的、即時的ノウハウへの要請が強く、記憶術がその要求をベストに解決してくれるものではないかと勘違いされている場合が多いように見受けるからです。

意味のない『場所法』を用いて機械的な記憶をするといった手法を用いる数多の俗流記憶術も、結局はその手法をマスターするためにバカにならない時間が必要です。

それで習得したかと思えば、「この場所には何を当てはめたのか忘れちゃった!」なんて笑い話のエピソードがネットでも沢山暴露されていたりします。

通俗記憶術への反抗の意味でも執筆された『ユダヤ式記憶術』は、意味のない『場所法』を論理を持った意味のある『場所法』に仕立て直したとも言えるものですが、マスターするために時間を要する点では同じなのですね。

松平先生も、最初の『生命の樹』の説明の箇所で「最初は大変ですが…」と断りを入れておられます。

その代りに、非常に平易な文章で書かれているとはいえ、その構成や当てはめに意味が込められているだけ、しっかりと理解する必要があります。

「頭の悪い奴には理解できないよ!」なんて意見も散見される所以は、こういったところにあるのです。

しかし、意味が込められているだけ、一旦習得すれば、上の笑い話のような事態とは無縁になるところが決定的に違います。

そして何よりも、『ユダヤ式記憶術』の手法の枠組みは全ての学びに通じるものがありますから、それは何かを考える時の枠組みとしても知らず知らずに使っていることに繋がるでしょう。

合格してしまえば学びなどに関心がなくなる傾向が強いですので、受験生には、本来は目先の受験にこだわらずに今のうちに読んでいただくことが最良だと考えるのですが、余裕が無ければ、「大学合格を果たされた後にでも、人生を通じての学びの枠組みを作りたければ読んでみてください」と言うに止めておきます。

受験生以外の方も、通俗の記憶術本などは、何冊読んでも、半年もすればどこかに埋もれて終わりになっているのではないでしょうか?

だとすれば、その原因は、このページをお読みいただければ見当がつくのではないでしょうか?

真に人から一目置かれるような人間になりたいというあなたであれば、いつか読まれることはお勧めします。

販売者特典よりPDFファイルをダウンロードいただきますと、「帝都大学へのビジョン」を受け取るご案内が記してございます。
特に手続きいただくことはございませんので、当方よりご案内が届くまでしばらくおまちくださいませ。(24時間以内)

記憶術を巡るコラム

■爽風

松岡 正剛 氏ばりの物言いをすれば、「記憶とは整理であり、整理とは執筆である」ことに他ならず、しかも、世の中のあらゆる事象は、時間の流れの中で弁証法的対立・発展及び三すくみ的拮抗などが互いの拘束力の中でバランスして存在するなどの多面的視座を表現する「生命の樹」をテンプレートとして、これを整理することが記憶することに他ならないということでしょうか。

町の本屋さんでもネットでも『記憶術』と名の付くものを何十冊と買われても、右脳だのイメージ記憶だの写真記憶だのひたすら虚しさが増してくる場所法だの以外には見られたことがないのではないでしょうか?

そして、一度も「役立った」などと思われたためしなどないのではないでしょうか?

普通の我々に必要な「記憶」とは、「体系的にものごとを整理する」ことであることを、「生命の樹」をテンプレートとして松平先生は伝えられたのです。

テンプレート自体が大事なのではなく、まずは、「体系的にものごとを整理しようとする」心構えです。

俗本ボケしてしまうと、一生そのことが分からずに終わってしまいます。

物事の見方の目線を知るという意味で、何時かは誰にも読んでいただきたい無比の良書です。

曼荼羅チャートやマインドマップの質問もいただいたことがありますが、曼荼羅は周囲が如来様だらけですから(笑)、記憶というより目標達成に使われるのがいいでしょうし、マインドマップは単にツリーやブロック図でいけないの?って思ってしまうだけです。

曼荼羅チャートは大谷選手が高校生時代に目標設定のために使っていたということで一躍有名になってしまいましたが、「帝都大学へのビジョン」でも「合格マップ」として曼荼羅チャートをお付けしています。

一流の知識者になりたい方や実社会でも「あの人は出来る」と言わしめるレベルを目指す方には『記憶するということの本質』が抽出できる良書となるでしょう。

必ずしも方法論を『生命の樹』に頼る必要はありません。

本質を汲み取り自分の流儀で簡易モデル化すれば、それがあなたの一生ものとなる記憶法の基礎として定着するでしょう。

それで、ぴっちさんも意味を把握した上で独学で「生命の樹」に当てはめようとされています。

言うまでもなく、この気付きと決意と実践が最も大切なことなのですね。

例えば、理数分野は別として、歴史に限らず、世の中の営みや心の動きなどは二項対立的・弁証法的な構図でたいていモデル化できます。

このことは、やはり「ユダヤ式記憶術」の中で松平先生も書かれています。

こういったモデル化で見たり考えたりするクセが付いていれば、いろいろなことがクッキリと見えて来ますし印象深く心に刻まれるんですね。

「こういうところさえ分かれば、平凡な誰でもが自分なりに質のいい知識を増やすことができるよ!」

松平さんは、そう願って執筆されたということを汲み取れるほどになるまで、頑張って身に着けていただければと願います。