腟トリコモナス症のお薬について

腟トリコモナス症のお薬 まとめ

腟トリコモナス症の治療が必要な患者数は減少傾向にあると言われていますが、一方でWHO(世界保健機関)が2016年に15歳~49歳を対象にした調査報告によると、トリコモナス/クラミジア/淋病の順で、最も多い感染症という報告がありました。

基本的には大部分が性感染ですが、浴槽や下着・タオル・便器などを介して家族内感染することもあると言われていますから、そうでなきゃトップの座をとる事は難しいのではないかとすら考えられます。

腟トリコモナス症の治療薬には、メトロニダゾール、チニダゾールが主に使われます。
というか、この2つの有効成分しか現状ではありません。

メトロニダゾールはフラジール、チニダゾールはそのままの名称(日本での旧商品名称:ハイシジン)を商品名として処方されています。

メトロニダゾールとチニダゾールは作用機序や効能も類似しており、しかも共に内服薬と腟錠(腟坐剤)があります。

腟トリコモナス症も性器カンジダ症と同じく、再発を繰り返す方は多いようですから、今までに医師に治療を受けた際に処方されたお薬で、効果があったお薬と同じもの、あるいはそのジェネリック薬を選ぶことで、費用や時間を節約しようと考えることは何も悪いことではないと思います。

その限りにおいて参考にしていただければ幸いです。

腟トリコモナス症のお薬について

腟トリコモナス症治療 膣座薬

基本的には、主に下記の膣座薬と内服薬を投与します。

腟だけでなく尿路への可能性から経口薬も必須とされています。

  1. メトロニダゾール腟錠250mg(商品名:フラジール腟錠)
  2. チニダゾール腟錠200mg(商品名:チニダゾール腟錠「F」)

腟トリコモナス症治療 内服薬

  1. メトロニダゾール錠250mg(商品名:フラジール錠)
  2. チニダゾール錠200mg(商品名:チニダゾール錠「F」)

以上により、腟トリコモナス症治療としての一般的な治療は、上記の同番号同士の組合せとなります。

トリコモナスは乳酸菌と同じくグリコーゲンを栄養源としているため、ひ弱い善玉乳酸菌はトリコモナスに栄養分のほとんどを横取りされて、数を減らし膣内環境が荒れ放題というような状態にしてしまいます。

ですから、元凶をお薬でやっつけることはもちろんですが、再発が頻繁なことにお悩みであるのであれば、普段からプロバイオティクスで、少しでも膣内環境を良好にする努力もされてみることは必要ではないかと考えます。

※ちなみに、性感染が原因の場合はパートナーも治療しませんと、ピンポン感染で延々と続くかもしれませんからお気をつけください。

腟トリコモナス症治療薬 一覧表

やっつけなければならない相手

原虫(原生生物):膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)

膣坐剤・内服薬

有効成分 メトロニダゾール チニダゾール
膣錠 フラジール腟錠 チニダゾール腟錠「F」
メーカ 富士製薬 富士製薬
添付文書 フラジール膣錠 250mg チニダゾール膣錠 200mg「F」
内服薬 フラジール錠 チニダゾール錠「F」
メーカ 塩野義製薬 富士製薬
添付文書 フラジール内服錠 250mg チニダゾール錠 200mg「F」/ 500mg「F」
海外先発薬 フラジール内服錠 ファシジン内服錠
海外先発薬
メーカ
Abbott Healthcare(アボット・ヘルスケア)
≒Sanofi(サノフィ)
Pfizer
(ファイザー)
添付文書 Flagyl 200mg,400mg リーフレット(イギリス版) Fasigyn 500mg リーフレット(イギリス版)
ジェネリック薬 チニバ
Zydus Healthcare
(ザイダス ヘルスケア)

※海外先発薬の詳細は、それぞれのお薬のページをご参考ください。リーフレットの主要部は翻訳済みです。

※「フラジール」製造元となっているアボット・ヘルスケア(Abbott Healthcare)社は、アメリカの巨大ヘルスケア&製薬会社アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)のグループ企業。
おそらく、フラジールの開発元であるフランス最大の製薬会社サノフィ社とのライセンス契約による製造販売と考えられます。

※チニダゾールには、チニダゾール膣錠「F」とチニダゾール錠「F」がありますが、ともにトリコモナス症のみへの適応となっています。
一方、同じチニダゾールを有効成分とするファイザー社のファシジン(Fasigyn)は、細菌性膣炎への適応も謳われています。