細菌性膣炎のお薬について

細菌性膣炎のお薬 まとめ

細菌性膣炎の治療が必要な患者数は減少傾向にあると言われていますが、2008年以降は、ほぼ横ばい状態で推移しています。

とは言っても、膣炎で最も多いものですから侮ってはいけません。

細菌性膣炎は、カンジダ属やトリコモナス・淋菌などの特定の微生物が原因ではない炎症として「非特異性膣炎」とも呼ばれます。

従って、初めての膣炎の場合には、原因を明らかにするために医師の診断を受けるのは必須です。

自分で単なる細菌性膣炎に違いないと勝手に思って、自分で調達できるお薬で治療したつもりでも、全く的外れになっている場合がありますから、その点だけはくれぐれもご留意ください。

細菌性膣炎のお薬について

聴きながら閲覧していただいても、聴いてから閲覧していただいても結構です。

細菌性膣炎の治療薬には、クロラムフェニコールの膣錠・軟膏、あるいはメトロニダゾールの膣錠・内服錠の二択になりますが、ニキビ治療によく使われるクリンダマイシン(ダラシン) ゲルが使われる場合もあるようです。(保険適用外)

いずれにせよ、膣錠・膣クリームによる局所療法が主になります。

すでに、診察の結果でこれらのお薬を処方された方はご存知かと思いますが、前者クロラムフェニコールの商品名は「クロマイ」あるいは「クロラムフェニコール(ジェネリック)」(膣錠と軟膏)、後者の商品名は「フラジール」(膣錠と内服薬)です。

※ジェネリック「クロラムフェニコール膣錠」は、2019年4月までは「ハイセチン膣錠」という名称でした。
ただ、軟膏の方は現在も「ハイセチンP軟膏」から名称は変わっていないようです。

フラジールの膣錠は、細菌性膣炎及びトリコモナス症の両方に効果が謳われている(2012年より)点と、内服薬はこれにプラスして嫌気性感染症や感染性の腸炎など多くの感染症に適応している点が特徴です。

さらに、日本では細菌性膣炎への効果・効能としては承認されていませんが、ファイザー製薬のチニダゾールを有効成分とする「ファシジン」(内服薬)は海外では正式に細菌性膣炎への適応が謳われており、同等製品として期待されています。

実は、「ファシジン」は、日本でも1982年以来、10年余り先発薬として活躍してきましたが、日本での製造販売は中止されており、国内での処方はありません。

近年では、妊娠していない女性に対してはフラジールの内服薬だけで治療する方法が好ましいとされる説も有力となっています。

これは、女性にとっては大いに嬉しい動向と言えそうですね。

クロマイ(クロラムフェニコール)の方も、実は昭和にはトリコモナス症の治療に頻繁に使われていたようですが、現在は適応症の中には含まれていません。(副作用の関係だとは思いますが…)

簡単に覚えるとすれば、「トリコモナス症に有効なメトロニダゾールとチニダゾールは、そろって細菌性膣炎にも有効性が期待されるけれど保険適応はフラジールだけ!」「実は、かつてのクロマイ系もトリコモナス治療に使われていたけれど、今は細菌性膣症への適応だけとなっている!」ということになるでしょうか。

細菌性膣炎もご多分に洩れず、再発を繰り返す方は多いようですから、今までに医師に治療を受けた際に処方されたお薬で、効果があったお薬と同じもの、あるいはそのジェネリック薬を選ぶことで、費用や時間を節約しようと考えることは何も悪いことではないと思います。

その限りにおいて参考にしていただければ幸いです。

細菌性膣炎に関する一般的な知識は下記をご参照ください。

基本的には、誤診や見落としも結構あるようですから、複数の医療機関で確認されることがベストでしょう。

細菌性膣炎治療 膣剤

細菌性膣炎の治療は、ほとんどが膣剤の投与と外用薬の塗布によって治療されます。

基本的には、主に下記の膣剤を投与します。

  1. クロマイ膣錠 100mg
  2. クロラムフェニコール膣錠 100mg「F」(旧商品名:ハイシジン膣錠)
  3. フラジール膣錠 250mg
  4. クリンダマイシン ゲル

細菌性膣炎治療 外用薬

  1. クロマイ-P軟膏
  2. ハイセチンP軟膏

細菌性膣炎治療 内服薬

基本的には、内服薬は下記しかありません。
フラジール内服錠は、膣錠とともに2012年より、細菌性膣症に関しても効果・効能に加えられ保険適用となっています。

  1. フラジール内服錠 250mg
  2. ファシジン錠 500mg・・・日本では承認されていません

元凶をお薬でやっつけることは手っ取り早いですが、細菌性膣炎の場合は、再発防止はもちろん、当面の治療方法としてもプロバイオティクスが期待できるかもしれません。

何故ならば、細菌性膣炎の元凶は腟内細菌叢の乱れによるとされているからです。

真菌・ウィルス・原虫が原因ではないのであれば、膣内環境をよくさえすることができれば、自然に炎症は消えるという考えは実に合理的だからです。

いずれにしても、予防として、普段からプロバイオティクスで、少しでも膣内環境を良好にする努力もされてみることには、たとえうまく行かないにしても、反って損をする事態は考えにくいからです。

※ちなみに、細菌性膣炎と言えども、性交渉があった場合には、パートナーにも細菌が感染し、尿道炎などの何らかの感染症を発症しますので、ピンポン感染と無縁ではなく、延々と続くかもしれませんからお気をつけください。

細菌性膣炎 治療薬 一覧表

やっつけなければならない相手

細菌

  • ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)
  • バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)
  • プレボテラ・ビビア(Prevotella bivia)
  • モビルンカス属(Mobiluncus)
  • ガードネラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)
  • ウレアプラズマ‐ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)
  • マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)
  • etc

膣錠

有効成分 クロラムフェニコール メトロニダゾール クリンダマイシンリン酸エステル
製品名 クロマイ膣錠 クロラムフェニコール膣錠(クロマイのジェネリック) フラジール膣錠 クリンダマイシン ゲル
メーカ アルフレッサ ファーマ 富士製薬 富士製薬 武田テバファーマetc
添付文書 クロマイ膣錠 100mg クロラムフェニコール膣錠 100mg「F」 フラジール膣錠 250mg クリンダマイシンゲル 1%

※膣錠に関しては、調達可能な海外先発薬及びジェネリック薬はありません。

※クリンダマイシン ゲルに関しては、医師の技量が必要と思われますので、調達可能なニキビ治療のクリンダマイシンに素人が手を出すことは危険ですからやめてください。

外用薬

有効成分 クロラムフェニコール メトロニダゾール クリンダマイシンリン酸エステル
製品名 クロマイ-P軟膏 ハイセチンP軟膏(クロマイのジェネリック)
メーカ アルフレッサ ファーマ 富士製薬
添付文書 クロマイ-P軟膏 ハイセチンP軟膏

※「クロマイ」には、いくつか軟膏が第2類医薬品として販売されていますが、これらは化膿性皮膚疾患が対象であり、細菌性膣炎治療のためのお薬ではありません。
基本的に細菌性膣炎治療のための市販薬はありません。

内服薬

有効成分 クロラムフェニコール メトロニダゾール チニダゾール
製品名 フラジール内服錠 チニダゾール錠「F」
適応はトリコモナス症のみ
メーカ 塩野義製薬 富士製薬
添付文書 フラジール内服錠 250mg チニダゾール錠 200mg「F」/ 500mg「F」
海外先発薬 フラジール(Flagyl) ファシジン(Fasigyn)
海外先発薬
メーカ
Abbott Healthcare
(アボット・ヘルスケア)
Pfizer
(ファイザー)
添付文書 Flagyl 200mg,400mg リーフレット(イギリス版) Fasigyn 500mg リーフレット(イギリス版)
ジェネリック薬 チニバ(Tiniba)
Zydus Healthcare
(ザイダス ヘルスケア)

※海外先発薬の詳細は、それぞれのお薬のページをご参考ください。リーフレットの主要部は翻訳済みです。

※「フラジール」製造元となっているアボット・ヘルスケア(Abbott Healthcare)社は、アメリカの巨大ヘルスケア&製薬会社アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)のグループ企業。
おそらく、フラジールの開発元であるフランス最大の製薬会社サノフィ社とのライセンス契約による製造販売と考えられます。

※チニダゾールには、チニダゾール膣錠「F」とチニダゾール錠「F」がありますが、ともにトリコモナス症のみへの適応となっています。(細菌性膣炎には保険適応外)
一方、同じチニダゾールを有効成分とするファイザー社のファシジン(Fasigyn)は、細菌性膣炎への適応も謳われています。(ジェネリックも含め個人輸入でのみ調達可能)

細菌性膣炎の知識

細菌性膣炎の原因

細菌性膣炎における細菌学的な特徴は以下の通りです。

  • 過酸化水素産生乳酸菌の減少または枯渇
  • 嫌気性細菌の過剰増殖。通常は正常時の100-1000倍に達する

プロバイオティクス(乳酸菌治療)をお考えの場合も、過酸化水素を産生する乳酸菌というポイントが大事であり、一般的なヨーグルト塗布では、それほど効果は望めないと考えられます。

培養結果で頻繁に観察される細菌は以下のようなものがあります。

Gardnerella vaginalis, Prevotella種, 嫌気性グラム陽性球菌, Mobiluncus種, Ureaplasma urealyticum, Mycoplasma hominis

細菌性膣炎の症状

大量の帯下および魚匂いを特徴としますが、これは増殖したグラム陰性嫌気性菌から産生されるムチン分解酵素によって、正常な膣のムチン成分が分解されたためです。

匂いの原因は、嫌気性菌の代謝により産生されるアミンの蒸発によるものです。

細菌性膣炎の診断基準

一般臨床で用いる基準

Amselの臨床診断基準には以下の4つの項目があり、少なくとも3つで適合する必要があります。

  1. 膣分泌物pHが4.5以上である。
  2. 膣分泌物の性状は、薄く均質である。
  3. 膣分泌物に10%KOHを一滴加えた時に、アミン臭がする(臭気テスト陽性)。
  4. 膣分泌物の生食標本で、多数のクルーセル細胞が確認される (生食標本を用いて100x顕微鏡下で膣上皮細胞の20%以上)。
    注:クルーセル細胞とは、膣の上皮細胞にたくさんの細菌が付着している細胞。

Amselの臨床診断基準は臨床的に有用なものですが、クルーセルの観察に習熟していない医師が顕微鏡観察した場合には、間違った所見が得られる可能性があると同時に、トリコモナスや酵母を見逃す場合もあります。

ただ、簡便で実用的であるので、実際の臨床現場にとっては便利な診断方法であることは間違いありませんが、客観性には乏しいとも言えますから、判断が難しい場合には、さらに下記のNugentスコアでも検査することが必要になります。

その他のポイント・オブ・ケアの検査項目

  • G. vaginalisの割合が高いこと。
  • シアリダーゼ、トリメチルアミン、およびプロリンアミノペプチダーゼ等の複数のアミンが認められること。
  • アミンと高pHの組み合わせ。

上記のような客観的な診断方法があるにも関わらず、一般臨床では、特異性のある検査を実施せずに、症状のみに基づいて処方することがよくみられます。

実際、適切な抗生物質が使用されるならば、そこそこの治癒率は達成されます。

しかし、再発や治療反応が得られなかった場合の対応を考えるならば、医師サイドとしては本来的に確かな診断根拠を持っておくことは重要です。

経過観察で改善が見られない場合は、少なくとも、Lactobacillary grade あるいはAmsel、できれば下記のNugentスコアの検査を行うべきです。

逆に、患者サイドとしては、診療を受けても一向に治癒しない場合は、違う医院に変えてみることも必要な方策であることも念頭に置いておきましょう。

細菌性膣炎の臨床研究で用いる基準

正確な診断のためには、膣液中の(=帯下のグラム染色標本)グラム染色スコアを評価します。

これは、Nugent基準と呼ばれるもので、細菌性膣炎関連細菌と乳酸菌の相対的な割合を評価して、細菌フローラの状態を0-10のスケールで示すものです:正常(スコア = 0-3)、中間 (スコア = 4-6)、細菌性膣炎 (スコア = 7-10)。

Nugentスコアは、臨床研究にてゴールドスタンダードとして用いられている評価基準です。

Nugentスコア 0-3 4-6 7-10
乳酸菌 ほぼ正常(++++) (+ – ++) 全く見られない (-)
嫌気性菌 全く見られない(-) (+ – ++) 多数 (++++)

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