性器カンジダ症のお薬について

性器カンジダ症のお薬 まとめ

性器カンジダ症は主にカンジダ・アルビカンス、次いでカンジダ・グラブラータというカンジダ属の真菌によって引き起こされる感染症で、治療が必要な患者数は300万人以上と推定されています。

デリケートゾーンに違和感を感じた際には、それだけ性器カンジダ症の可能性が高いということにもなります。

初めての違和感の場合は、必ず診察を受けなければなりません。
できれば、2つの診療機関で受診されることをお勧めします。(残念ながら、他の感染症との判別ができなかったり、最終的に誤診をしているケースも多いからです)

おそらく、本ページをご覧いただいている方は、「再発を繰り返すばかりで、分かり切った通院を繰り返すのも嫌だ!」という思いの方が多いのではないでしょうか?

そういった方は、今までに医師に治療を受けた際に処方されたお薬で、効果があったお薬と同じもの、あるいはそのジェネリック薬を選ぶことで、費用や時間を節約しようと考えることは何も悪いことではないと思います。

幸い性器カンジダ症に関するお薬は「セルフメディケーション」を目的とするOTC医薬品としてネットでも購入することができます。

また、性器カンジダ症用の膣剤や外用薬、内服薬は、同じ薬品あるいはジェネリック薬までを個人輸入することもできます。

その限りにおいて参考にしていただければ幸いです。

性器カンジダ症のお薬について

気を付けておきたいのは、膣座薬と外用薬を両方選ばれる(市販薬も含めて)場合は、有効成分が同じものに統一するということが重要だということです。(あえて違うものを選ばれることもないでしょうが…)

女性の性器カンジダ症の治療には、一般的にカンジダに対する抗真菌力のあるアゾール系の内のイミダゾール系の膣座薬と外用薬がセットで使われます。

広範囲の皮膚カンジダ症や、逆に難治性の高いカンジダ症では内服薬を用いられます。

性器カンジダ症においても、海外では内服薬で治療する報告が多かったのですが、日本では承認されないため、内服薬を使われることはありませんでした。

しかし、2015年より、フルコナゾール カプセル剤(Diflucan=ジフルカン)が承認され、世に出て使用されるようになってからは、特に再発に関して、何度も通院する煩わしさや膣錠を挿入する不快感などから解放された感があり、大きく流れが変わり主流になりつつあります。

ただ、皮肉なことにフルコナゾールは耐性菌が出現しやすいという欠点を持ちます。

性器カンジダ症に関する一般的な知識(症状・メカニズム)は下記をご参照ください。

また、治療に使われる抗真菌薬全体から見渡した性器カンジダ症治療薬をまとめていますので下記をご参照ください。

性器カンジダ症治療 膣座薬

基本的には、主に下記のイミダゾール系膣座薬を投与して、毎日あるいは1週間毎の通院治療になります。

並行して、外用薬(クリームや軟膏)を1日2,3回局部塗布する指示が出されることが一般的です。

  1. オキシコナゾール硝酸塩 腟錠100mg,600mg(商品名:オキナゾール腟錠)
  2. クロトリマゾール 腟錠100mg(商品名:エンペシド腟錠)
  3. イソコナゾール硝酸塩 腟錠100mg,300mg(商品名:アデスタン腟錠・バリナスチン腟錠)
  4. ミコナゾール硝酸塩 膣坐剤100mg(商品名:フロリード腟坐剤)

腟錠として処方される割合としては1.オキシコナゾール硝酸塩と2.クロトリマゾールが主流のようです。

毎日通院される場合は毎日100mg、1週間ごとに通院される場合は600mgあるいは300mg×2が挿入投与されます。

性器カンジダ症治療 外用薬

  • 外用薬は、主にアゾール系の内のイミダゾール系とアリルアミン系の2つに分類されます
  • イミダゾール系が、カンジダに対する抗真菌力すなわち有効性が高く、第1選択薬とされています。
  • イミダゾール系の代表的な外用薬はクロトリマゾールクリーム(商品名:エンペシドクリーム)で、一般的に性器カンジダ症の第1選択薬となります。
  • イミダゾール系で、性器カンジダ症治療としてよく処方されるのは、
    1. クロトリマゾールクリーム(商品名:エンペシドクリーム1%)
    2. オキシコナゾール硝酸塩クリーム(商品名:オキナゾールクリーム1%)
    3. イソコナゾール硝酸塩クリーム(商品名:アデスタンクリーム1%)
    4. ミコナゾール硝酸塩クリーム(商品名:フロリードDクリーム1%)
    5. エコナゾール硝酸塩クリーム(商品名:パラベールクリーム1%)
  • イミダゾール系のその他のお薬には、
    • 塩酸ネチコナゾールを有効成分とする「アトラントクリームor軟膏」
    • ケトコナゾールを有効成分とする「ニゾラールクリームorローション」
    • ラノコナゾールを有効成分とする「アスタットクリームor軟膏」

    などが効果の強い外用薬としてありますが、皮膚真菌症への適応であり、白癬への処方は極めて多いのですが、性器カンジダ症に処方されることは少ないと考えられます。

  • アリルアミン系の代表的なお薬は塩酸テルビナフィン(商品名:ラミシールクリーム)
  • アリルアミン系は、カンジダ症に対する効果・効能は謳われてはいますが、期待度は小さく(特に服用タイプ)、逆に水虫・爪水虫などの効果・効能に優位性があると言われています。

実は、クロトリマゾールをはじめイミダゾール系成分を含有する外用薬の添付文書には効果・効能としての性器カンジダ症の記載はありません。

なのに、性器カンジダ症の外用薬として(エンペシドクリームが第一選択薬)処方されるのは、全く効果がないわけではなく、しかも、メインである膣錠の補助と外陰部の痒み止めを兼ねてのことで、しかも、セットで適用することで保険適応に出来るということがあるのではないかと考えられます。

ただし、経口薬(ジフルカン)で治療される場合は、膣錠も外用薬も保険適応外になるはずです。(2つの治療を同時に行うことは基本的にありません)

さらに、これらの成分を含んだ一般市薬品では、同じような名前のものがありますが、ほとんどは水虫や白癬の治療用であることしか謳われていませんから、その点を注意深く見極められませんと思惑違いになってしまいます。(下の表は、膣カンジダの再発防止が謳われた第1類医薬品)

性器カンジダ症治療 内服薬

通院が難しい場合、膣坐剤を拒否される場合には、経口薬の服用で経過観察となります。

さらに、妊娠中の場合は、副作用が出た場合全身のどこにどのように出るかが予測できませんので、経口薬は避けなければならないのが鉄則です。

  • 内服薬は、主にトリアゾール系とアリルアミン系、ポリエンマクロライド系の3つに分類されます
  • トリアゾール系のフルコナゾール カプセル剤(商品名:ジフルカン カプセル 50mg,100mg)は、膣カンジダ症も含めた内臓真菌症の第1選択薬とされています。
  • トリアゾール系のイトリゾール カプセルあるいはジェネリックのイトラコナゾール カプセル が真菌に対する抗菌力すなわち有効性が高く、一般的な皮膚カンジダ症では第1選択薬とされています。
  • アリルアミン系のラミシール錠は公式の効果効能には「腟炎及び外陰腟炎」は表記されていませんが、「表在性皮膚真菌症」として性器の周辺に発赤や浮腫が発生する外陰カンジダ症のみには多く処方されているようです。
  • ポリエンマクロライド系は主に、フルコナゾール耐性を持ったカンジダが出現している場合に使われます。
  • イミダゾール系のミコナゾール ゲル剤(商品名:フロリード ゲル 経口用2%)は口腔や食道のカンジダ症に使われます。

すなわち、性器カンジダ症治療としての内服薬に限れば、フルコナゾール(商品名:ジフルカン)が第1選択薬ですが、イトリゾール カプセルとラミシール錠も少なからず処方されていると考えられます。

以上により、性器カンジダ症治療としての最も一般的な治療は、

  1. クロトリマゾール腟錠100mg(商品名:エンペシド腟錠)またはオキシコナゾール硝酸塩 腟錠100mg,600mg(商品名:オキナゾール腟錠)での通院治療
  2. クロトリマゾールクリーム(商品名:エンペシドクリーム)などの軟膏・クリームなどの外用薬タイプによる局部塗布治療
  3. フルコナゾール カプセル剤(商品名:ジフルカン カプセル)の服用での治療

において、1のみ、1と2の組合せ、あるいは、3のみ、3と2の組合せになると言えます。

もし、再発が頻繁なことにお悩みであるのであれば、あまり抗生物質を多用されますと耐性菌が現れ、お薬の効果が減少して来ますので、ポリエンマクロライド系での治療になります。

これらを頭に入れられて、プロバイオティクスを採用されて、お薬から離れることが出来る日常のケアを心がけることにトライされてみることは根本的な対策として大いに期待できる選択肢だと考えます。

性器カンジダ症治療 一覧表

やっつけなければならない相手

真菌:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)orカンジダ・グラブラータ(Candida glabrate)

※カンジダ菌は常在菌であり、異常増殖して悪さをした時に敵となります。

※海外では随分と前から常識となっているプロバイオティクスで日常的にケアしておくことが、再発防止には有効と考えられます。

膣坐剤

有効成分 クロトリマゾール イソコナゾール
硝酸塩
製品名 エンペシド腟錠 アデスタン腟錠
メーカ Bayer(バイエル) Bayer(バイエル)
添付文書 エンペシド腟錠 100mg アデスタン腟錠 300mg
国内処方
ジェネリック
クロトリマゾール腟錠100mg「F」
(旧名:エルシド膣錠-富士製薬)
イソコナゾール硝酸塩腟錠100mg,300mg「F」
(富士製薬)
添付文書 クロトリマゾール腟錠100mg「F」 イソコナゾール硝酸塩腟錠100mg,300mg
ジェネリック

カーネステン膣錠100mg
Bayer Zydus Pharma
(バイエル・ザイダス:インド)

クロトリマゾール膣錠100mg
Christo Pharma社(香港)

カンディノックス膣錠100mg
Charoen Bhaesaj社(タイ)

トラボゲン腟錠600mg
Bayer HealthCare Manufacturing S.r.l
(バイエル S.r.l:イタリア)

市販薬
第1類医薬品
エンペシドL 膣錠
(佐藤製薬)
フレディCC 膣錠
(ロート製薬)
有効成分 オキシコナゾール
硝酸塩
ミコナゾール
硝酸塩
製品名 オキナゾール腟錠 フロリード腟坐剤
メーカ 田辺三菱製薬 持田製薬
添付文書 オキナゾール腟錠 100mg,600mg フロリード腟坐剤 100mg
国内処方
ジェネリック
オキシコナゾール硝酸塩腟錠100mg「F」,600mg「F」
(富士製薬)
添付文書 オキシコナゾール硝酸塩腟錠100mg「F」,600mg「F」
ジェネリック
市販薬
第1類医薬品
オキナゾールL100 膣錠
(田辺三菱製薬)
フェミニーナ 膣錠
(小林製薬)
メディトリート 膣錠
(大正製薬)

※内服薬として、フルコナゾール耐性を持ったカンジダが出現している場合に使われるポリエン系の膣錠が海外では存在します。
たとえば、ヴァギシン(Vagicin)という膣錠が入手が可能となっていますが、よほど打つ手がない場合に、あくまで医師に相談された上で判断されるのが望ましいでしょう。

※有効成分のナイスタチン、クロラムフェニコール、ジヨードヒドロキシキンを含有し、タイでは細菌性膣炎・トリコモナス症・カンジダ症への効用があるとして、ある意味、万能で使われているお薬ですが、日本ではナイスタチンは消化管カンジダ症への効用としてしか承認されていません。

外用薬

有効成分 クロトリマゾール イソコナゾール
硝酸塩
製品名 エンペシドクリーム アデスタンクリーム
メーカ Bayer(バイエル) Bayer(バイエル)
添付文書 エンペシドクリーム 1% アデスタンクリーム 1%
ジェネリック クロトリマゾールクリーム
Bayer Zydus Pharma
(バイエル・ザイダス:インド)
トラボゲンクリーム
Bayer HealthCare Manufacturing S.r.l
(バイエル S.r.l:イタリア)
市販薬
第1類医薬品
エンペシドL クリーム
(佐藤製薬)
フレディCC クリーム
(ロート製薬)
有効成分 オキシコナゾール
硝酸塩
ミコナゾール
硝酸塩
製品名 オキナゾールクリーム フロリードDクリーム
メーカ 田辺三菱製薬 持田製薬
添付文書 オキナゾールクリーム 1% フロリードDクリーム 1%
ジェネリック
市販薬
第1類医薬品
メディトリート クリーム
(大正製薬)

内服薬

有効成分 フルコナゾール イトラコナゾール
製品名 ジフルカン カプセル イトリゾール カプセル
海外での名称:
Sporanox(スポラノックス)
スポラノックス
左項と同一薬
メーカ Pfizer(ファイザー) Janssen Pharma(ヤンセンファーマ)
=Johnson&Johnson
Johnson&Johnson
(ジョンソン&ジョンソン)
添付文書 ジフルカン カプセル 50mg,100mg イトリゾール カプセル 50mg スポノラックス 100mg
ジェネリック フォルカン カプセル
Cipla(シプラ)
国内処方:澤井製薬など多数 イトラノックス
Cipla(シプラ)

※「フォルカン」製造元のシプラ(Cipla)社は、ジェネリックで躍進するインド製薬業界で第4位にある超大手製薬会社。

※「クロトリマゾールクリーム」製造元のBayer Zydus Pharma社は、誰もが知る世界のバイエル社とインドの巨大ヘルスケア・医薬品企業グループZydusの合弁会社。

※内服薬において、膣カンジダ症への適応が謳われているのは「ジフルカン」のみです。

※詳しくは、それぞれのお薬のページをご参考ください。