新型コロナウィルス症 Covid-19 論考 1
新型コロナウィルスを患者として判断するための考えるヒント 1
本論考には、まだ「免疫システム」の基礎知識を散りばめていませんため、これだけでは判断にまでは至らないと思いますので、論考 2では生物で受験する受験生の整理レベルで分かりやすく「免疫」を含めていきます。
いずれにせよ、新型コロナウィルス特異のORF遺伝子の作動阻害、並びにウィルス自前のRdRp阻害をターゲットとするが故に、現状では極めて有望と考えられるお薬「イベルメクチン」の適応外使用に対する異常なまでの世界的阻止反応には著しい違和感が伴いますので、ミネルバの梟にならない内に先行でアップいたしました。(私も忙しい身ですので心苦しいのですが..)
この点に関しては、ノーベル生理学医学賞受賞の本庶佑 先生が、イベルメクチンを表舞台に登場させたくない社会全体のというか、経済至上主義の身勝手な闇自体に警鐘を鳴らされています。
ちなみに、本稿を執筆している私自身は中高時代から「生物」大嫌いで、今でもそれほど好きにはなれない領域の人間です。
そんな人間が、自分の身近な問題として必要に迫られて学び、それを判断材料にしただけの論考に過ぎないことをお含みおきください。
その自分なりの結論として、Covid-19元年の年末にイベルメクチンのジェネリックを保険として確保し、ワクチンは一切打たないと決断しました。
ただ、周囲の誰にもはもちろん家族にすら、そのことを押し付けるどころか推奨したこともありません。
※やはり、調達する際には、より信頼のおけるところという観点から、インド大手、結果的には最大手のサンファーマ社をチョイスしました。
ただ、数値としては極めて小さいとはいえ、インフルエンザ等に比すとワクチンの相対的に有意な死亡率の高さは家族には語りましたし、際限なくブースター接種を勧めるやり方の危険性だけは、老婆心ながら情報としても発信しています。
その判断の顛末として、自分がコロナ原因で死に至っても、それはそれで自身の直感、及び思考力・想像力・類推力が足りなかったというだけのことだと腹は括っています。
- 新型コロナウィルスは単なる風邪症候群で処理できるのか?
- 通常、日常的に感染する風邪症候群で最も多い原因ウィルスはライノウィルス(Rhinovirus)で、30~50%を占める。
- 次いで、10~15%がHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1なる4種のヒトコロナウィルス(Human Coronavirus:HCoV)、5~15%が多種のインフルエンザウィルス(Influenzavirus)を原因とする。
- その他は、それぞれが5%程前後でRSウィルス・パラインフルエンザウィルス・アデノウィルス・エンテロウィルス等を原因とし、原因不明のケースも20~30%ある。
- 2000年以降に動物から感染する重症肺炎ウィルスとして、SARS-CoV, MERS-CoV, SARS-CoV-2の3種類が新興コロナウィルスとして加わった。
- 但し、従来の4種のヒトコロナウィルスと類似したウィルスは他の哺乳動物からも見つかっており、人獣共通感染によってヒトに伝播した可能性が高いとも言われている。
- だからと言って、動物から感染すると分類された3種類の新興コロナウィルスを従来のヒトコロナウィルスと同列に扱うことは早計であり短絡である。
同じコロナウィルスでありながら何が相違するのか?が徹底的に探求されねばならない。 - コウモリのインフルエンザウィルスH17, H18の受容体は、ヒトを含む広範囲の宿主に存在するMHC クラスIIタンパク質であるという発見からも、コウモリのウィルスは免疫細胞に感染する可能性があり、宿主の免疫システムの障害を招く恐れがあると考えねばならない。
- 「人獣共通感染ウィルス」なるアバウトな共通視座からだけではなく、純粋に物質としての探求から、今後のウィルスの進化(?:進化なる表現は私には違和感大いにあり)やリスク予測までもの研究が加速されなければならない。
- とともに、野生動物の食用としての捕獲や密猟、あるいは接触といった人間の営為の問題が「殺生感」の問題とは別次元で意識化されるとともに科学的に研究されねばならない。
- 基本的に、生命に関わる研究の中でも、ウィルス学、病理学、免疫学、分子生物学、生化学、微生物学、薬理学などは常に後追いであることが宿命である。
- にもかかわらず、来たりし招かれざるウィルスに、より早い先見性をもって大筋の方向性を提示できるジェネラル(あらゆる視座からのデータを綜合できる哲学者的科学者)の存在は必須である。
- コロナウィルス科(Coronaviridae)は全てエンベロープを持つ一本鎖プラス鎖RNAウィルスである。よって、従来のヒトコロナウィルス及び新興コロナウィルスはともにコロナウィルス属に属する一本鎖プラス鎖RNAを遺伝子とするウィルスである。
- インフルエンザウィルスはオルソミクソウィルス科(Orthomyxoviridae)に属する分節状マイナス鎖RNAウィルスである。
- A型及びB型インフルエンザウィルスは8分節、C型インフルエンザウィルスは7分節のRNA遺伝子である。
- 新型コロナウィルスの登場した2019年以降、インフルエンザウィルスが激減・皆無状態になったのは何故か?
- 参考資料
- 新型コロナウイルスについてウィルス学的見地から COVID-19有識者会議
- インフルエンザウィルスの基礎知識 北海道大学大学院 獣医学研究院 微生物学教室
- 感染と防御12-9 摂南大学 薬学部 微生物学研究室
MHCクラスIIタンパク質は、コウモリインフルエンザウィルスの種間侵入を媒介する -PubMed
- SARS-CoV & MERS-CoVの概要
- SARS-CoV(通称:SARSコロナウィルス)は2003年に中国広東省を起点として大流行し、重症急性呼吸器症候群 (Severe acute respiratory syndrome = SARS) の病原体として同定されたウィルスである。
- SARS-CoVは、野生コウモリが保因するコロナウィルスが自然界でハクビシンなどに伝播し、それが食品市場などを経由してヒトに感染した人獣共通感染ウィルスと考えられている。
- SARS-CoVの感染は同年2003年に終息しており、2022年現在も日本での感染者は報告されていない。
- MERS-CoV(通称:MERSコロナウィルス)は2012年からサウジアラビアやアラブ首長国連邦など中東地域で広く発生している中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome =MERS)の病原体として同定されたウィルスである。
- MERS-CoVは、コウモリからヒトコブラクダを経て人に伝播した人獣共通感染ウィルスと考えられている。
- MERS-CoVの感染は、ヒトからヒトの感染が限定的(院内感染)であるため、感染者数は少ないが致死率が非常に高く、中東地域では2022年現在も進行形であるが、日本での感染者は確認されていない。
- 何故、SARS-CoVは短期で感染が収束し、MERS-CoVは感染が継続しているのに院内感染に限定されているのか?
- SARS-CoV(通称:SARSコロナウィルス)は2003年に中国広東省を起点として大流行し、重症急性呼吸器症候群 (Severe acute respiratory syndrome = SARS) の病原体として同定されたウィルスである。
- SARS-CoV-2の概要
- 「SARS-CoV-2」(通称:新型コロナウィルス)は2019年末に中国湖北省武漢を起点としてヒトへの感染が報告されたウィルスである。
- SARS-CoV-2はSARS-CoVの直接子孫ではないが、ウィルスゲノムの相同性79.6%の姉妹種である。
- SARS-CoV-2に最も近縁なウィルスはコウモリやマレーセンザンコウの保因するコロナウィルスである。
- コウモリ由来のSL-CoV (SARS様コロナウィルス)とはウィルスゲノム89.1%の相同性
- 雲南省の野生コウモリの保因するRaTG13コロナウィルスとはウィルスゲノム96.1%の相同性
- 北ラオスのコウモリの保因するBANAL-52コロナウィルスとはウィルスゲノム96.8%の相同性
- マレーセンザンコウの保因するコロナウィルスとはウィルスゲノム97.4%の相同性(RBDドメイン=受容体結合ドメイン:receptor binding domain)
- SARS-CoV-2はSARS-CoV-2同様、コウモリ由来のウィルスであるが直系ではないことが推測できる。
- SARS-CoVと同様に、絶滅危惧種とも言われるマレーセンザンコウには中間宿主しての可能性があると考えられているが、現状はまだ可能性に留めておかねばならない。
- SARS-CoV-2とSARS-CoVは、ともにベータコロナウィルス属サルベコウィルス亜属に属する。
- SARS-CoV-2とSARS-CoVはともにプラス鎖一本鎖RNAウィルスである。
- 2012年から現在も続いている中東におけるMERS-CoVもベータコロナウィルス属であるが、系統の違うメルベコウィルス亜族に属する。
但し、プラス鎖一本鎖RNAウィルスであることはSARS-CoV, SARS-CoV-2と共通している。 - インフルエンザウィルス、エイズウィルスもプラス鎖一本鎖RNAウィルスであるが、コロナウィルスとは相違する種族に分類され、その増殖メカニズムも相違する。
- サルベコウィルス亜属に分類されるコロナウィルスに特異的な遺伝子はORF6である。
- 遺伝子ORF6(Open Reading Frame)は遺伝子「Matrix (M)」と遺伝子「Nucleocapsid (N)」の間にコードされているアクセサリー遺伝子である。
- SARS-CoV-2のORF6には、SARS-CoVのORF6よりも強いインターフェロン産生(応答)抑制機能がある。
- SARS-CoV-2は、SARS-CoV及びインフルエンザや他の呼吸器感染症と比較して、インターフェロンの産生が顕著に抑制されている。
- インターフェロン抑制活性は、46番目のアミノ酸の違いによって規定されている。
SARS-CoV-2はグルタミン酸(E)なのに対し、SARSウィルスはリシン(K) である。 - SARS-CoV-2のORF3bにもインターフェロン応答を抑制する機能がある。
- 参考資料
- インターフェロン応答を阻害する新たなSARS-CoV-2タンパク質の発見 東京大学 医科学研究所 佐藤佳准教授 グループ
※SARS-CoVにおいて、ORF6がSTAT1を抑制しインターフェロンの産生を阻害する論文はアメリカのマウントサイナイ医科大学から公開されています。
さらに、ORF6ではありませんが、エボラ出血熱で同じメカニズムが働いていることが2011年に同じくアメリカのマウントサイナイ医科大学から公開されています。(知見は2007年以前)
- SARS-CoV-2の構造
- SARS-CoV-2は直径約100nmの球状粒子ウィルスである。
- SARS-CoV-2の表面はエンベロープ(脂質二重膜:Eタンパク、Mタンパク)とこれに突き刺さる形でSタンパク(スパイクタンパク)、粒子内部にはエンベロープに包まれてゲノムRNAとこれに結合するNタンパクからなるヌクレオカプシドによって構成されている。
- エンベロープ(脂質二重膜)を持っていることで、石鹸での洗浄やアルコールによる消毒が有効である。
- ゲノムは約30,000塩基のRNAから出来ており、RNAウィルスのゲノムサイズとしては最大である。
- ゲノムはタンパク質へと転写・翻訳される可能性のある11の遺伝子(Open Reading Frame, ORF)がコードされている。
- それぞれの遺伝子は,1 種類の非構造タンパク質(NSP:Non-structural protein)、4 種類の構造タンパク質(SP:Structural protein)、および6種類の付属タンパク質(AP:Accessory protein)をコードしている。
- 非構造タンパク質:ORF1a,ORF1b(合わせた呼称としてORF1ab が使われる)
- 4種類の構造タンパク質:スパイクS,エンベロープE,メンブレンM,ヌクレオカプシドN
- 6種類の付属タンパク質:ORF3a,ORF6,ORF7a,ORF7b,ORF8 および ORF10
- ゲノム5’側 – 非翻訳領域側には全体の3分の2を占める非構造タンパク領域ORF1ab、ゲノム3’側 – 翻訳領域側にはE,M,S,Nの構造タンパク及びアクセサリー遺伝子が入り混じってコードされている。
- Sタンパクは糖鎖で覆われており、これによって免疫系の監視の目を逃れている。(免疫逃避)
- Sタンパクは2つのサブユニットで構成され、外周側のS1サブユニットのRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)がACE2受容体との結合を担い、内周側のS2サブユニットはウィルスと宿主細胞膜との融合を担っている。
- SARS-CoV-2の際立った特徴の一つは、S1サブユニットとS2サブユニットの境界(S1/S2)部位に、SARS-CoVを含む近縁のコロナウィルスには見られない4つのアミノ酸配列 [PRRA] の挿入が見られることである。
- 参考資料
- Covid-19 概要
- 「Covid-19」とは、SARS-CoV-2感染によって引き起こされる疾患・病態の総称であり、通称「新型コロナウィルス感染症」と呼ばれる。
- COVID-19の重症化段階での特徴的な症状は急性呼吸促迫症候群(Acute respiratory distress syndrome = ARDS)であり、敗血症や多臓器不全等を伴う。
- COVID-19は他のウィルス感染症と比較してI型IFN(インターフェロン)に応答しにくい。
- I型IFN (IFNα、IFΝβ) は、免疫システムの中でサイトカインとして産生され、下流のSTAT1、STAT2、STAT3等を介して様々な遺伝子の発現を誘導する。
- ウィルスの増幅を抑制する因子ISGs(IFN stimulated genes)の発現が低下している。
- SARS-CoV-2侵入の受容体となるACE2はI型IFNによって発現誘導される。
- 薬としてのI型IFNは新型コロナウィルスの主要な治療薬とはなっていない。
- COVID-19重症化の引き金はサイトカインストームである。
- 感染者の体内、特に肺胞上皮細胞内でSARS-CoV-2が増殖すると、肺傷害を引き起こしながら、免疫細胞である肺胞マクロファージが高度に活性化されることで、肺胞局所で過剰な炎症 (hyper-inflammation) が生じる。
- RNAウィルスの変異について
- RNAウィルスの変異とは、宿主細胞の中でRNA複製を何度も実行する中で起こる遺伝情報のコピーミスによって、遺伝子のアミノ酸基が変わり、タンパク質の形が変わったものが生み出されることである。
- 通常のコピーミスでは、その性質にまで影響を及ぼさない場合が多いが、宿主細胞へ侵入する際の足場となるSタンパクの遺伝情報部位にコピーミスが起こると、ウィルスの持つ性質が大きく変化する可能性が出る。
- 第5波を構成した「デルタ株」は、ウィルスが細胞に侵入する際に使うSタンパクを構成しているアミノ酸基の452番目が、「L(ロイシン)」から「R(アルギニン)」に変異した「L452R変異」によって発生したものが主流である。
- デルタ株は、S1サブユニットに複数の変異があり、そのうちの3つはRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)にある。
- RBDがACE2と結合して免疫系の監視から逃れる能力を高めている。
- 第6波を構成した「オミクロン株」は、ウィルスが細胞に侵入する際に使うSタンパクを構成しているアミノ酸基の484番目が、「E(グルタミン酸)」から「A(アラニン)」に変異した「E484A変異」によって発生したものが主流である。
- 「オミクロン株」には、その他、Sタンパクを構成しているアミノ酸基の484番目が、「G(グリシン)」から「D(アスパラギン酸)」に変異した「G339D変異」、856番目が、「N(アスパラギン)」から「K(リシン)」に変異した「N856K変異」など多くの種類がある。
- 変異による性質の変化は、以下の3点で問題となる。
- 伝播性(感染力)が強くなる可能性
- 病毒性が強くなる可能性
- 免疫逃避が生じワクチンの効果を弱める可能性
- デルタ株主流の第5波から第6波オミクロン株への置き換わりは、伝播性が強まり、病毒性は弱まるか同等。ワクチンの効果に関しては現状まだ不確定。
- 約0.2%の流行株にはORF6遺伝子が欠損する変異が挿入されていることが明らかにされた。
- 英国ウェールズにおいて、ORF6欠損株が散発流行していたことも確認された。
- SARS-CoV-2の侵入メカニズム
- 結合
- ウィルスの表面のスパイクタンパクS1サブユニットのRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)が宿主であるヒト(動物)の細胞表面にあるACE2(アンデオテンシンⅡ)受容体に結合する。
- ACE2受容体は、咽喉や肺のほとんどの細胞の表面にある。
- 侵入
- 宿主の細胞表面に存在する酵素TMPRSS2(Ⅱ型膜貫通型セリンプロテアーゼ)の作用でスパイクタンパクS2サブユニットのS2’部位が切断され、ウィルスのエンベロープと細胞膜との融合が始まり、細胞内に速やかに侵入する。
- SARS-CoVもTMPRSS2を使って速やかに侵入することができるが、多くの場合、エンドソーム(endosome:脂質に囲まれた小胞)経由(=エンドサイトーシス)でカテプシンLを利用して細胞内に侵入していた。
- 対照的に、SARS-CoV-2はTMPRSS2を積極的に利用し、エンドソーム経由の経路をできる限り避けていることが、SARS-CoVよりも速く・広く感染した要因の一つである。
- すなわち、感染すると同時にSタンパクS2サブユニットS2’部位の開裂活性化(=ウィルスRNAの侵入)が始まる。
- この点が、放出時にTMPRSS2で開裂をし、侵入時にはTMPRSS2を利用せずエンドサイトーシスで侵入するインフルエンザと原理的に相違し、現実的にTMPRSS2をほとんど利用しないSARS-CoVと相違する点である。
- エンドソーム経路で細胞内に侵入したウィルス粒子は、抗ウィルスタンパク質に捕まってしまうというウィルスにとっての弱点がある。
- それが、SARS-CoVが限定的に収束した結果に表れていると考えられる。
- 開裂
- 侵入(感染)とほぼ同時に、侵入したウィルスはSタンパクS2サブユニットS2’部位が開裂し、ゲノムRNAを細胞質に放出する。
- 結合
- SARS-CoV-2の複製・増殖
- ウィルスゲノムから複製素材の合成
- RNAウィルスは原則として細胞質で増殖する。
- RNA合成酵素はウィルスRNAを鋳型として細胞質で作られ、且つ、機能する。
- RNAウィルスゲノムは、宿主のリボソームを利用して、自身の遺伝情報をmRNA(伝令RNA)として読み込ませ、1本鎖の長いポリタンパク質を翻訳(合成)する。
- このポリタンパク質が切断されることで、それぞれの断片がウィルスの増殖に必要な構造タンパク質や酵素として働く。
- RNAウィルスゲノムには複数のプロテアーゼ遺伝子が含まれ、一本の長いタンパク質から個々の役割を担うタンパク質を切断・へ切り出しする作業を触媒する酵素メインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)も繋がっている。
- さらに、このポリタンパク質の1本鎖には、複製に必須な酵素としてウィルスゲノムにコードされているRdPp(RNA-dependent RNA polymerase :RNA依存性RNAポリメラーゼ)が繋がっている。
- RNAウィルスゲノムにおいて、ウィルスの複製に必要なタンパクがコードされているORF1ab(Open Reading Frame a/b)から、最終的にNspタンパク質(非構造タンパク質)が合計16個産生される。(Nsp1~16)
- Nspタンパク質(非構造タンパク質)はRNAウィルスゲノムの約2/3を占め、ウィルスの複製に関与するばかりでなく、細胞に様々な影響を与える。
- その中でも特にNsp1タンパクは細胞質内でボソームと結合して、宿主のmRNAの分解を促進すると同時に、ウィルス由来RNAと宿主由来RNAの区別を行い、宿主のタンパク質合成を特異的に阻害する。
- さらに、Nsp1タンパクは宿主の自然免疫応答に必須なRIG-I やISGsの発現を抑制し、宿主 の免疫システムから逃避する役割を担う。
- RdPpは非構造タンパクNSP12を本体としてNSP8,NSP7の補完によって活性する。
- 「私たちヒトの細胞においてRNAからRNAを作るということはない=RdPpは存在しない」という常識は、「ある条件の下で2本鎖のRNAを合成する酵素として存在する」に置き換わりつつある。
- しかし、マクロ的に常識が覆る条件はないと仮定すると、RdPpあるいはNSP12を標的とすることは有力な抗ウィルス薬の候補となると推測する。
- タンパク翻訳(合成)のお膳立て
- 先ず、メインプロテアーゼがポリタンパク質の1本鎖からRdPpを切り出します。
- 以後、RdPpがゲノムの複製と遺伝子の転写に必須の酵素として主役の役割を果たし始めます。
- ゲノム複製
- RdPpによって、プラス鎖(+)RNAゲノムからマイナス鎖(-)RNAを合成し、これを鋳型としてプラス鎖(+)RNAゲノムを複製します。
- mRNA転写&遺伝子発現
- 複製プラス鎖(+)RNAゲノムに加え、マイナス鎖(-)RNAを鋳型として4種のサブゲノムmRNA(伝令RNA)=ヌクレオカプシド(N)、スパイク(S)、膜(M)、エンベロープ(E)を転写・合成します。
- 複製されたRNAゲノムとmRNA転写によって合成されたNタンパクは融合してヌクレオカプシドを形成します。
- 同じくmRNA転写によって合成されたスパイク(S)、膜(M)、エンベロープ(E)の3種のタンパクはそれぞれに小胞体を形成します。
- アッセンブリ
- 3種のタンパク小胞体はコルジ体に至る小胞体ERGIC (ER-Golgi Intermediate Compartment)に結集し、ここでヌクレオカプシド小胞体と会合してウィルス粒子が完全に複製されます。
- 放出
- 複製されたウィルス粒子はゴルジ体を介してエキソサイトーシス(Exocytosis)で細胞外に放出されます。
- 次の宿主細胞への侵入の準備として、ゴルジ体でスパイクタンパクのS1/S2部位がプロテアーゼのフーリン(furin)によって開裂されます。
- Sers-Covでも同様に、S1/S2部位の一部は宿主細胞外へ放出されるまでの間に、開裂を受けると考えられています。
- 他の宿主細胞への侵入(感染)
- S1/S2部位の開裂が不完全であるか、あるいはTMPRSS2によるS2’部位開裂を受けずにエンドサイトーシスで取り込まれたウィルス粒子は、エンドゾーム内のカテプシンLでS2’部位開裂活性化を受けて感染を成立させる。
- 参考資料
- 新型コロナウィルスが細胞に侵入する仕組み Nature ダイジェスト
- 新型コロナウィルスのウィルス学的特徴
- コロナウィルスの構造と複製サイクル(ライフサイクル) 城西国際大学 薬学部
- 新型コロナウイルスSARS-CoV-2の宿主プロテアーゼによる開裂活性化 日本病態プロテアーゼ学会~JSPP~
- コロナウィルスの基礎 群馬大学大学院医学系研究科 生体防御学講座
- ウィルスゲノムから複製素材の合成
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません