利尿剤について | 種類や副作用

利尿剤まとめ

利尿剤の種類や副作用を仔細にまでまとめると少し複雑になりますので、訪問される方が一般的に必要とされる範囲内で簡単にまとめるに止めます。

最初に申し上げておきたいのは、個人輸入で入手される場合は、最低限、日常的に脚が浮腫んで辛い場合やきちんと効果効能に記されている疾患で服用の実績がある方以外で、単なるダイエット目的だけで利用されることは差し控えられた方が、後々の自分のためであることを申し上げておきます。

幸い、あまりにも強力な「ラシックス(有効成分:フロセミド)」及びそのジェネリック薬は、2019年の年頭より個人輸入での調達も禁止されましたが、これは賢明な判断ではなかったかと思います。

ラシックスは世界でも有数の製薬会社サノフィー社が開発した優秀な薬ですので、もちろん処方薬としては承認されていますが、個人で自由に調達できるようにしておくには少し危険なことは確かでしょう。

スポーツ選手が短期間での減量に使うことが出来るお薬ですし、それ以上に、禁止薬物使用をカモフラージュするためにも使えるお薬ですから、実際に、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)では、フロセミドは禁止薬物になっているほどです。

ですから禁止されるまでは、単なるダイエット目的で購入された方も多いと見受けられ、そうなると必ず依存症にまでなってしまって健康を害された方も必ず少なからず居られると予想されます。

「ルプラック(有効成分:トラセミド)」も同じループ利尿剤になり、利尿作用はむしろフロセミドより強い一方、カリウム保持性を持ち、フロセミドと比べると低カリウム血症を起こしにくく且つ安全性が高いというメリットが論文で報告されていますが、それでも自分を律して使用する覚悟は最低限必要です。

利尿剤の 大きな分類

まず、基本を抑えておきましょう。

  • 尿を生成するスタート地点である腎小体でろ過された原尿は、流れ出た尿細管においてほとんどは血液内に再回収され、不要物だけを排泄する。
  • 実際の尿として排泄されるのは、1日でドラム缶1缶のろ過に対し約1.5Lに過ぎず、ほとんどは血液内に再回収される。
  • 腎小体と尿細管の対は腎臓の基本機能単位として「ネフロン」と呼ばれ、左右腎臓合わせて約200万個で構成されている。
  • 再回収される割合は、尿細管の上流ほど多い。(近位尿細管:約60% ヘレンループ:約10% 遠位尿細管&集合管:約30%)
  • 利尿薬は尿細管におけるナトリウム再吸収を抑制し,水とナトリウムを排泄させる作用をする。

利尿薬には6つほどの分類がありますが、私たちにとっては、下記の3つで分類しておくことで十分でしょう。

この分類は、尿を生成するスタート地点である腎小体から流れ出る尿細管のどこに作用するかどうかの遠近によって分けられると考えれば分かりやすいかと思います。

下記の記載順は腎小体から近い順、すなわち流れの上流側の順ですから再吸収が多い順になります。
したがって、利尿作用は記載順に劣っていくと考えていただければ結構です。

一方、高血圧症の方に関心がある降圧作用は真ん中のサイアザイド系利尿薬が最も強く、それほど強くはないカリウム保持性利尿薬も有効であり、ループ利尿薬はかなり弱いということになっています。

現在、個人輸入で調達可能は、ループ利尿薬ルプラックのジェネリック薬とカリウム保持性利尿薬の先発薬アルダクトンA錠のジェネリック薬だけになります。

  1. ループ利尿薬(ヘレンループでの阻害作用)
    • 有効成分:フロセミド=先発薬商品名:ラシックス(Sanofi)
    • 有効成分:トラセミド=先発薬商品名:ルプラック(第一三共)
    • 有効成分:ブメタニド=先発薬商品名:ルネトロン(第一三共)
    • 以下省略
  2. サイアザイド系利尿薬(遠位尿細管での阻害作用)
    • 有効成分:トリクロルメチアジゾ=準先発薬名:フルイトラン錠(塩野義製薬)
    • 有効成分:ヒドロクロロチアジゾ=ジェネリック薬名:ヒドロクロロ錠(東和薬品)
    • 以下省略
  3. カリウム保持性利尿薬(集合管での阻害作用)
    • 有効成分:スピロノラクトン=先発薬商品名:アルダクトンA錠(Pfizer)
    • 有効成分:トリアムテレン=準先発薬(京都薬品):先発薬:ダイアジド(アメリカ)は消滅
    • 以下省略
  4. よく使われる利尿剤 分類一覧表

    分類 ループ利尿剤
    作用部位 ヘンレループの太い上行脚
    特長
    • 利尿作用は強い
    • 降圧作用は弱く、持続時間も短い
    • 腎機能を悪化させない
    有効成分 フロセミド トラセミド
    先発薬商品名 ラシックス ルプラック
    メーカ Sanofi(サノフィー) 第一三共
    腎性浮腫
    肝性浮腫
    心性浮腫
    高血圧症 ×
    悪性高血圧症 ×
    その他 月経前緊張症
    末梢血管障害による浮腫
    ×
    副作用 ショック, アナフィラキシー様症状, 再生不良性貧血,汎血球減少症, 無顆粒球症, 赤芽球癆, 水疱性類天疱瘡, 難聴, 中毒性表皮壊死融解症, 皮膚粘膜眼症候群群), 多形紅斑, 心室性不整脈, 間質性腎炎 肝機能障害, 黄疸, 血小板減少, 低カリウム血症, 高カリウム血症
    個人輸入可能ジェネリック薬 個人輸入禁止薬 トール20mg(ルプラックジェネリック)
    ダイトール10mg(ルプラックジェネリック)
    分類 サイアザイド系利尿薬
    作用部位 遠位尿細管
    特長
    • 利尿効果は弱い
    • 降圧効果は強く高血圧症の第一選択薬
    • 長期投与は代謝に影響する
    • 高尿酸血症を引き起こす
    • 低カリウム血症には、カリウム保持性利尿剤またはカリウム製剤併用が必要
    有効成分 トリクロルメチアジゾ ヒドロクロロチアジゾ
    先発薬商品名 フルイトラン錠 ヒドロクロロ錠
    メーカ 塩野義製薬 東和薬品
    腎性浮腫
    肝性浮腫
    心性浮腫
    高血圧症
    悪性高血圧症
    その他 月経前緊張症 月経前緊張症
    薬剤による浮腫
    副作用 再生不良性貧血, 低ナトリウム血症, 低カリウム血症 再生不良性貧血, 低ナトリウム血症, 低カリウム血症,壊死性血管炎, 間質性肺炎, 肺水腫, 全身性紅斑性,狼瘡の悪化, アナフィラキシー様反応
    個人輸入可能ジェネリック薬
    分類 カリウム保持性利尿剤
    作用部位 集合管
    特長
    • 利尿効果,降圧効果ともに弱い
    • Na再吸収及びK排泄効果がある(スピロノラクトンはアルドステロンに拮抗)
    • 利尿薬による低カリウム血症の予防に併用される
    有効成分 スピロノラクトン トリアムテレン
    先発薬商品名 アルダクトンA錠 トリアムテレン
    メーカ Pfizer(ファイザー) 京都薬品工業
    腎性浮腫
    肝性浮腫
    心性浮腫
    高血圧症 ×
    悪性高血圧症 ×
    その他 突発性浮腫
    肝硬変による浮腫・腹水
    悪性腫瘍に伴う浮腫・腹水
    栄養失調性浮腫
    なし
    副作用 急性腎不全, 高カリウム血症, 低ナトリウム血症, 代謝性アシドーシス等の電解質異常 急性腎不全
    個人輸入可能ジェネリック薬 アルダクトン25mg