完全数から友愛数・婚約数へ

完全数・友愛数・婚約数
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『幸福』を探すにあたって、避けて通ることができないのが『自分自身の完成』と『友情』と『恋愛』ですよね。

そこで、これらに大いなる示唆を与えてくれる『完全数』『友愛数』『婚約数』なる『数』の世界をご紹介しておこうと思います。

おそらく、『友愛数』『婚約数』を目当てにご訪問される方も多いかと思いますので一言。

まずは『完全数』からの流れで読まれていきませんと素敵なドラマの本筋が見えてきませんので、飛ばさずに流れ通りにお読みください。
算数レベルの物語ですから誰にでもお楽しみいただけます。


■はじめに

本著作は、1995年阪神・淡路大震災の前に企画したFAX塾に集まった阪神間の中学生~高校生の教え子向けに、保護者さんを通して小学生でも楽しめ、且つ、数学への導火線となり得る読み物をとのコンセプトで震災直後に執筆し配布した資料です。

ここでは、決して学校では習わないけれども、とても素敵な数をご紹介していきます。

ミレニアム2000年の前にはネットでも公開し、数学への導火線としての読み物の内の一篇として、その当時の小学生の親御さんにも少なからずお買い求め頂き、子どもさんが大変興味を持ったと感激していただいた資料です。(その後、東大理Ⅰに進まれたそうです。)

当時の僕の教え子たちはすでに社会の中軸として、ネット公開時のミレニアム前の小学生たちも、ちょうど社会人になられる年頃と思うと感慨も一入です。

その後、映画「博士が愛した数式」も公開され、また、ネットの急速な発展に伴いタイトルにある数たちも随分とあちこちで書かれているのを目にすることも多くなりました。

『友愛数』『婚約数』に興味をお持ちで読まれている方も多く居られるかと思いますが、まずは『完全数』からの流れで読まれていきませんと素敵なドラマの本筋が見えてきませんので、飛ばさずに流れ通りにお読みください。

これらの数をやさしく解説した本もありますが、多くの中の一つとして埋もれてしまう程度だったり、形式ばっていたりのものが多く、『完全数』『友愛数』『婚約数』の3つに絞って、本資料ほどかみ砕いて表現されたものは少ないように見受けています。

僕の教え子たちがそう思ってくれたように、中高生の諸君には、数学って結構面白いのではないかなと興味を湧かせてもらえるのではないでしょうか?

そんな中で、完全を目指して一生懸命生きること、友と協力して完全を目指すこと、良きパートナーと巡り合い無償の愛を育てること、そんなことまでを発展的に考えてもらえたなら、ものすごく魅力的な大人に成長されるのではないでしょうか?

そして、心からそう願っております。
では、3つの数の物語をお楽しみください。


■完全数

『9回の裏、ツーアウトランナー無し。カウントはツーストライクワンボール。
さあ、あと一人、あと一球だ!! 守る野手には緊張の色がありありと見える!見える!!
世紀の瞬間は来るのか? はたまた、バッター景浦が夢を打ち砕くのか? ピッチャー振りかぶった! 投げたー! ストライーク! やった!やったー!やりましたあーぁ!!』

興奮し過ぎるきらいがあるアナウンサーの絶叫とともに、そして、アブさんこと景浦さんのほろ酔い気分とともに完全試合は達成されたのである。

「『アブさん』て何にゃ?」と思ったらお父上にお聞き下さい。
決して、お母上にはお聞きにならない方が無難かと存じます。
『星飛雄馬』ではなく『景浦』を起用するところが【帝都大学へのビジョン】たる所以なのですが…。

『完全試合』
この一言が、野球でピッチャーをする人にとっては最大の目標であり夢なんですね。
野球をよく知らない人には何のことだか分からないかも知れませんので、簡単に説明をしておきますね。

誰一人にもヒットやホームランを打たれない上に、誰一人にもフォアボールやデッドボールすら与えず、味方のエラーで出塁させることもなく、1試合に27人だけの打者から27個のアウトをとって試合を終えることを言うんです。

『完璧に』あるいは『一つの無駄も無く』るいは『つけいるスキを全く与えず』に勝利したということになります。

ただ、味方のチームが点を取ってくれない場合も無きにしもあらずなので、必ず勝利するとは限りません(負けることは絶対にありませんが、0対0で引き分けることはあります)が、この場合でも記録としては『完全試合』は達成されたことになるわけです。

『完全』
この言葉から、皆はどんなことを思い浮かべ、あるいはどんなことを連想するのかな?

どんな勉強をしているにしたって、どんなスポーツをしているにしたって、どんな仕事をしているにしたって、それぞれの人が目指し目標にしているのが『完全=パーフェクト』なのではないでしょうかね?
誰しもの合言葉は『パーフェクト』といったところでしょうか。

しかし、「現実は?」と見渡してみると、『完全』なるものは、まぁ、なかなか存在しないのではないでしょうか。

スポーツや勝負の世界では『完全制覇』(テニスのグランドスラム達成や将棋・囲碁の全タイトル獲得など)ということも時々耳にしますが、それとてめったにないことですね。

『完全なる・・・』とかの文言も目にすることはありますが、哲学的・宗教的色合いのことが多く、『我が神こそが完全である』と主張するいろんな宗教家の人々の言葉と同じく、全く次元の違う問題として、これは別にしておきましょう。

『完全』を目指してはいるのですが、あまりに『完全』を目標にしたり、要求され過ぎると、正直、苦しくって苦しくってしようがないですよね!

自分にも他人にも『完全』なることを要求し過ぎる『完全主義者』と呼ばれる人々も、僕たち凡人には決して好意的に見られないですから、『人にそのように見られることが”あなたが不完全である”証拠だ』と皮肉な論理が成立しちゃうことになりますね!

『完全』は皆が目指しこそすれ、なかなか得ることの出来ない状態であり、当然ながらその数も非常に少ないという結果になります。
どんな事がらにせよ、『完全』なる状態は数えられるほどに少ないものなのです。

なんだかわけの分からないことを書いてしまいましたが、野球における『完全試合』のように、算数や数の世界にも『完全』と呼ばれるものがあるんですよ!

例えば、なんと『正方形』という四角形がこれに相当するんです!
「なんでや?」って・・。
いつか、『正方形は究極の四角形なんだよ!』と説明したことがありますね。

その通り、英語では『正方形』は通常 ”square”(スクエアー)が使われますが、より厳密に表現したい時には”Perfect square”(パーフェクト・スクエアー=完全な方形)が使われます。

さて、君たちに、「好きなように四角形を一つ書いて」とお願いすると、君たちの人数分だけの形が違った四角形が集められますね。

「いっぱい書いて。」とお願いすると、形の不揃いの四角形がたくさん出来るでしょう。

「次に、向かい合った1組の辺だけを平行にして。」とお願いすると、今度は『台形』と呼ばれる四角形がたくさん書かれることになります。
みんなの書いた四角形に少し共通点が出来てきて、不揃いが少し小さくなりましたね。

次に、「さらに、平行でないもう1組の辺も平行にして。」とお願いすると、今度は、『平行四辺形』と呼ばれる四角形がたくさん書かれます。
たてに長いものやら、横に長いものやら、いろいろありますが、共通点がググッと増えて、不揃いが極端に減ってきます。

さらに続けて、「4つの角を全部同じ角度にしてくれたまえ。」とお願いすると、今度は『長方形』と呼ばれる見慣れた四角形がたくさん並びます。

最後に、「お隣同士の辺の長さを同じにして。」とお願いすると、ここに『正方形』なる四角形が誕生し、みんなの書いたものは大きさこそ違え全く不揃いが無くなってしまいました。

コピーで拡大したり、縮小したりすると、誰の書いた四角形もピタッと一致させることが出来るわけで『形』としては全く同じになっちゃいました。

これに比べ、『長方形』はコピーで拡大、縮小しても、みんなの書いた長方形がピタッと一致することはまずまれでしょうね。

まず、縦だけ拡大/縮小するコピーにかけて、次に、横だけ拡大/縮小するコピーにかければ一致させることはできますけれどね・・・。

このように、単なる『四角形』に一つずつ条件(勝負)を与えてやって、これを次々にクリアーする(勝負に勝つ)ことの究極の行き着く先が『正方形』だったのです。

すなわち、このことによって『正方形』は『完全』と呼ばれるわけで、その形はただの一つしかありません。
『神』が『唯一』であるという理論とよく似ていますね。

一方、数の世界では、『完全数(パーフェクトナンバー:perfect number)』と呼ばれる数があります。

このことについて、「何が完全なんや?」との疑問を一緒に考えながら、少し探検してみようと思います。

自然数(0は含まない自然にある整数1,2,3,・・・・・・)は、それぞれに『約数』なる自分を割ることのできる自然数を持っていることはみんな知っているよね。

『8』という自然数は約数として、『1』『2』『4』『8』を持っている。
この約数に『1』か自分自身の数しか持っていないような自然数のことを『素数』と呼ぶことも学校や塾で習ったと思うんだ。(『素数さんざめく宇宙への旅』参照)

まず、結論から先に言うと、
『完全数(perfect number)』とは次のように取り決められているんだ。

ある自然数の約数の内、自分自身を除いた約数を全部たしたら、自分自身の数になった場合、この自然数を『完全数』と呼ぶ。
ただし、『1』は完全数には含まないこととする。

分かるかなー?
次のページ読む前に、完全数を自分で探してみて下さい。

すぐ身近にありまーす。

たとえば、

『6』の約数は自分自身以外には、『1』、『2』、『3』だ!!
この約数『1』、『2』、『3』を全てたすと、

『1』+『2』+『3』=『6』となり、自分自身になる!!

したがって、 『6』は『完全数』ということになる。

これで、『完全数』の意味は分かってもらえたかな?
しかし、この取決めが『完全』の名にふさわしいものかどうかは、実は僕にも『完全』には言い切れないところがあるんですよ。

確かに自分自身を構成するすべての数(人間に例えれば、自分自身の内にあるいろんな側面だろうか?)をすべてたし合わせれば、正味自分自身ちょうどになる(うそで固めた飾りも無く、自分を卑下することも無く、”ありのまま”ということになろうか?)ことには違いないが、そのことが『完全』の名にふさわしいのだろうか?

完全数・友愛数・婚約数
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じっと目を閉じて瞑想すると、『ありのまま』=『完全』というイメージがしてくるようでもありますね。
あるいは、『自分自身に矛盾が無い』=『完全』というイメージも浮かんでくる・・・。

まあ、そんなとりとめもないことを瞑想していても始まらないか!
とりあえず、次の『完全数』を探しながらでもボチボチ考えていくとするか。
と、軽く言ってみたものの、これを探すのも大変そうなんだね!!

まず、『素数』は自分自身以外の約数は『1』しかないからアカンわ!
『素数』は除外じゃー!!

4の約数は1と2      ⇒1+2=3・・・あきまへん!ダツラクー。
6の約数は1と2と3     ⇒1+2+3=6 ・・・うわっ!早くも発見!
8の約数は1と2と4     ⇒1+2+4=7 ・・・あきまへん!ダツラクー。
9の約数は1と3      ⇒1+3=4・・・あきまへん!ダツラクー。
10の約数は1と2と5    ⇒1+2+5=8 ・・・あきまへん!ダツラクー。
12の約数は1と2と3と4と6 ⇒1+2+3+4+6=16・・・あきまへん!ダツラクー。
14の約数は1と2と7    ⇒1+2+7-10・・・あきまへん!ダツラクー。
15の約数は1と3と5     ⇒1+3+5=9 ・・・あきまへん!ダツラクー。
16の約数は1と2と4と8   ⇒1+2+4+8=15・・・あきまへん!ダツラクー。
18の約数は1と2と3と6と9 ⇒1+2+3+6+9=21・・・あきまへん!ダツラクー。
20の約数は1と2と4と5と10 ⇒1+2+4+5+10=22・・・あきまへん!ダツラクー。
21の約数は1と3と7    ⇒1+3+7=11・・・あきまへん!ダツラクー。
22の約数は1と2と11    ⇒1+2+11=14・・・あきまへん!ダツラクー。
24の約数は1と2と3と4と6と8と12 ⇒1+2+3+4+6+8+12=36
                      ・・・あきまへん!ダツラクー。
25の約数は1と5      ⇒1+5=6・・・あきまへん!ダツラクーです
26の約数は1と2と13    ⇒1+2+13=16・・・あきまへん!ダツラクー。
27の約数は1と3と9     ⇒1+3+9=13・・・あきまへん!ダツラクー。

28の約数は1と2と4と7と14 ⇒1+2+4+7+14=28・・・うわっ!世紀の大発見!

あーあ疲れた!
ちょっと『完全数』を探すだけでも、えらく辛気臭い大変な作業だじぇい!

お疲れのところすみません。
「あのー、言いそびれてたんですが、この件に関しては紀元前のユークリッドさんが完全数を見つけるための式をお作りになっているんですが・・・」

『なんで、それを早く言わんのや、もぅ・・・!』

■ユークリッド式『完全数』の見つけ方

① 2に2を1回かけた数から1をひいたら
    2×2-1=3で素数や!
 このとき、この素数3に、2を1回かけると
    3×2=6で、これこそが完全数になるんやでー!

② 2に2を2回かけた数から1をひいたら
    2×2×2-1=7で素数や!
 このとき、この素数7に、2を2回かけると
    7×2×2=28で、これこそが完全数になるんやでー!

③ 2に2を3回かけた数から1をひいたら
    2×2×2×2-1=15で素数とチャウチャウ!
 この場合は、アキマヘン。

④ 2に2を4回かけた数から1をひいたら
    2×2×2×2×2-1=31で素数や!
 このとき、この素数31に、2を4回かけると
    31×2×2×2×2=496で、これこそが完全数になるんやでー!

これが、算数の元祖中の元祖、古代ギリシャのユークリッドさんがおつくりになったお見事な『完全数』に関する規則化を簡単に表現したものなのです。

ここで、『なんだかどこかで見たような式だなー?』と思った君は、算数をイメージで捉えることの出来る数学者向きのセンスを持っているのかもしれないね!

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