紫外線を正しく理解する
光電効果でダメージを受ける肌
私たちがその恵みを受けている太陽光線の中には、約50%の赤外線と約44%の可視光線と約6%の紫外線が含まれています。(下表『太陽光線の種類』参照)
この中の紫外線が私たちの身体にはとても厄介な代物になります。
私が携わって来た工業用の装置の中にも、例えば2種混合の接着剤を硬化させる目的でUV光線を照射する装置を使いますが、その調整時には、決して光線を素で見ないなどの注意を払わなければなりません。
そして、もちろん、使う作業者が決して直視できないようにカバーリングを施して製品に仕上げなければなりません。
即ち、紫外線は、それほど危険な光だということですね。
ストーブを何十台集めて、その前で暖を取っても、その光は私たちには何の害も及ぼしません。
同じ光でありながら、可視光線は私たちに何の害も及ぼさないのです。
このページでお話していく紫外線や太陽光は電磁波の1つです。
そして、赤外線も含めてこれらの光は私たちの健康とも密接な関係にありますから、様々な健康の話を理解する上でも、これらが電磁波の中でどのようなポジションにあるのかを一目でイメージしていただけるように下図を作成してみました。
このイメージさえ頭に留めておけば、健康と光に関するどのような話も理解が早まり、何かと便利だと思いますので、光の話題になった時には、是非思い出してみてください。
光はエネルギーを持っています。
そのエネルギーは【E=hν】(hというのはプランク定数と呼ばれる面白い定数です)なる式で表されます。
ここで、ν(ニュー)は光の周波数(振動数)を表しており、波長と逆数の関係にあります。
即ち、周波数νが大きいほど(波長が短いほど)エネルギーも大きいことになります。
可視光線より周波数の高い(波長の短い)紫外線の方がエネルギーが大きいのですね!
ここで、
エネルギーは小さいけれど可視光線の方が大量にあるから大きなエネルギーじゃないか?
そう思われても当然ですし、実際トータルのエネルギーでは正しいことになります。
そうですね。
沢山あれば確かに大きなエネルギーにはなりますが、いくら沢山可視光線があっても私たちの細胞には何の害も及ぼしません。
沢山の水鉄砲で撃たれてもどうということはありませんが、1発の弾丸であれば大変なことになるのと同じ理屈なんですね。
即ち、トータルのエネルギーではなく、たかだか1個のエネルギーが大きいかどうかで、私たちに及ぼす影響が決定されるからなんです。
(光は波であると同時に粒子でもあるという性質を持っていますから、1個という表現はおかしいかもしれませんが、光子と呼ばれています光子1個と考えれば考えやすいのではないかと思います。)
皆さんは、学校で【光電効果】という言葉を聞かれたことがあると思います。
金属に光を当てると電子が飛び出して来る現象のことです。
しかし、金属に蛍光灯の光を照射しても電子は決して飛び出してきません。
電子が飛び出すためには、拘束を断ち切って飛び出してくる大きなエネルギーがひとつの原子に与えられなくては実現しません。
ひ弱なエネルギーを大量投入しても、全く効果がないんです。
それよりも、最も強い精鋭のNo1の光子を確実にその原子に命中させれば、電子は飛び出してきます。
何だか量子論の導入部みたいになりましたけれど、私たちの皮膚に及ぼす光線の影響はこれと同じ原理なのです。
ちょうど、一人でしかぶちあたれない面積しかないドアを破ろうと思って、沢山の人を呼んできても意味がないですよね。
一人でぶちあたって壊せる力持ちが居なければどうにもならないということなのです。
紫外線は、一人で一つの細胞に化学反応を起させるエネルギーを持っている力持ちというわけです。
弱いものが集団で寄ってたかっても、夫々の細胞はビクともしませんが、紫外線は一人で一つの細胞をやっつける一人一殺集団とお考えいただければ分かりやすいかと思います。
私たちにとって命とも言えるDNAは、よりによって、波長260nm(ナノミリ)のUVCに分類される紫外線を吸収するようにできています。
この紫外線がやってくればDNAは破壊されてしまうという恐ろしい事態になりますが、幸いなことに、この波長の紫外線はオゾン層で散乱、反射、吸収されて地上にはやって来ません。
自然は巧くできたものだと感心させられますが、これはオゾン層が形成され、地上に到達していたUVC紫外線を遮る環境ができたからこそ、生命が誕生したとも進化したとも言えるのではないでしょうか?
同じく様々な放射性宇宙線が地上に降り注がないからこそ存在しうる生命なのに、処分のあてもないのにわざわざ大量の放射性物質を作り出している人間とは何と滑稽な生き物なのでしょうか?
太陽光線の種類
光線 | 波長 | 色 | 含有量 |
---|---|---|---|
赤外線 | 760~3000nm | 太陽光線の50% 大気中の水蒸気、CO2などによって約15%は吸収されます。 760~1500nmの近赤外線は皮膚透過力があり、温熱効果によって、血行や代謝を促進する作用をします。 |
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可視光線 | 400~760nm | 赤・橙黄・緑・青・藍・紫 | 太陽光線の44% |
紫外線 | 320~400nm | UVA(長波長) | 太陽光線の5.5%で日常的に我々に影響のある成分。生活紫外線と呼ばれます。 |
280~320nm | UVB(中波長) | 太陽光線の0.5%で、日常的にはそれ程影響を及ぼしませんが、海水浴や夏山、ゴルフ、スキーなど澄んだ空気の元での直射日光を浴びる場合に影響が出ます。 レジャー紫外線と呼ばれます。 ※UVAは軟質ガラスをも透過しますから、屋内に居ても被曝することを知っておくことが大事です。 |
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190~280nm | UVC(短波長) | オゾン層で吸収され地上には到達しない筈ですが・・。 DNA(核酸)が波長260nm付近の紫外線を吸収しますので、私たちにとっては命取りの非常に危険な紫外線です。 |
紫外線の種類
太陽光線のうち、最も短い波長領域にある非電離放射線が紫外線(ultra violet:UV)です。
IARC(国際がん研究機構)では、太陽光における紫外線暴露が発がん要因のグループ1に分類されています。
紫外線は波長により、UVA(320~400nm)、UVB(280~320nm)、UVC(190~280nm)に分類されますが、波長290nm以下の電磁波はオゾン層に吸収され地上に到達しません。
即ち、実質的に私たちに多大な影響を及ぼすのはUVAとUVBの一部と言えます。
- UVA
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- エネルギーは弱いですが、波長が長いので皮膚真皮下層まで到達し、約30%は真皮底部にまで届くと言われています。
- UVA照射は突然変異を誘発し、マウス実験では皮膚がんを誘発するという報告があります。
- DNAの紫外線吸収スペクトル(230~300nm)とは重なりませんが、細胞内在性の光増感物質がUVAによって励起されて発生する活性酸素やラジカル種などによって二次的に発がんを引き起こすと考えられています。
- また、UVA暴露は、皮膚内のメラニンを酸化することによって、皮膚に即時型黒化のサンタンを起こす。
- UVB
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- エネルギーはUVAよりも強く、皮膚真皮乳頭まで透過するとともに、角膜の吸収スペクトルと重なりますので、生体への影響もUVAよりも大きいと言えます。
- UVBはDNAの吸収スペクトルの波長を一部含んでいますので、直接DNAに吸収されてDNAの塩基の修飾や鎖切断を引き起こします。
- これらの傷害は通常、除去修復機能によって修復されますが、修復されずに残った場合は、突然変異を誘発し、皮膚がんの原因になることもあります。
- 除去修復機能の働かない色素性乾皮症(遺伝病)の場合は、わずかな太陽光に暴露されても皮膚がんを発症します。
- また、UVB暴露は、皮膚に発赤、膨張、水泡といったサンバーンを引き起こしたのち、メラニン色素沈着による遅発型黒化のサンタンを起こします。
- また、UVBは角膜に吸収されやすいので、角膜炎や雪目など眼の光傷害を引き起こすことがあります。
- UVBは皮膚内のビタミンDを活性化する作用があるため、かつては、くる病の予防に”日光浴”が推奨されていましたたが、日射量が特別少ない地域以外ではUVB量が不足することはありませんので、現在では皮膚がんの予防のためにも「紫外線暴露を避けることが望ましい」とされています。
紫外線の皮膚に対する作用
UVA | 生活紫外線 | 真皮下層まで透過する | 窓ガラス、車のフロントガラス、物干し、散歩など日常シーン | 紅斑にならず黒くなる=サンタン現象 |
---|---|---|---|---|
UVB | レジャー紫外線 | 真皮乳頭まで透過する | 海水浴、山、ゴルフ、スキーなど障害物が少なく、澄んだ空気の直射日光 | 紅斑、水泡=サンバーン現象 |
紫外線量の月別変化
紫外線と言えば、7月から8月の真夏だけに強いものと思っておられる方が意外に多いように見受けられますが、実は、4月から紫外線量はグングンと上昇。
そして、5月にはすでに7月のピークと同じぐらいに達するのですね。
特に西日本では4月にはすでに中程度の紫外線を浴び、5月には強レベルの紫外線を浴びることになるのです。
新緑の美しい5月は清々しいですが、陽射しは意外に厳しいのですよ。
下のデータは気象庁が観測したつくばにおける2013年の月別紫外線量の実測値です。
推定値ではありません。
気象庁で観測データとして公表されているのは、札幌・つくば・那覇・昭和基地しかありません。(全国の各地点でのデータは推定値)
紫外線は2月から急増し始め、5月から8月にかけてピークが維持されます。(下表)
この時期、紫外線と同じくグングン上昇してくるのが湿度だということも注意を払わなければなりません。
紫外線は四害線と呼ばれ、私たちの身体、皮膚に、色素沈着・老化・皮膚がん・光アレルギーの4つの害を与える光線となっています。
紫外線吸収剤と散乱剤
UV対策としては、紫外線を吸収してケアする方法と、紫外線を散乱してケアする方法があります。
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