アップするには約1年近く時期が遅れてしまいましたが、我が家のラプラス号は2013年1月8日(生後約10か月)に去勢手術をしました。
去勢の可否に関しては賛否両論あるところですし、私自身が獣医学関連の論文を実際に読んでいませんので、多くは語らないことにして単なる経験論として経緯や感想に軽く散りばめるに留めたいと思います。
去勢手術当日
ケージに入る訓練に失敗し、かと言って、リードで繋ぐこともせず(当初は外飼いの予定だったのに可愛さのあまり甘やかし・・・歳のせい?)、拘束されることを知らないで自由奔放に家の内外を動き回る我がラプラス君は、前日から入院できるはずもなく、当日お昼に手術の夕方帰りという形態で行いました。
前日22時以降から絶食ですから、食いしん坊の彼に当日の朝の絶食をどうごまかそうかと思案する毎日。
当日は早朝から交代で散歩に出たり遊んでやったりで空腹を何とかごまかして正午前に病院へ・・。
苦心惨憺でしたが、意外に何とかなるものですね。
手術前に血液・生化学検査をしていただいて問題なし。(右画像)
去勢手術は全身麻酔で睾丸を摘出する方法で行われます。
手術後は当然のごとくエリザベスカラーを装着しての日々。
この約10日間は本人にとっても家族にとっても何とも辛いものでした。
家の内外自由自在に行き来していたラプラス君も、あっちに行ってはコツン、こっちに行ってもコツンとカラーがあちこちに当たります。
散歩にも行きたがらなくなりました。
門を出る前から拒否られたり、何とか門を出ても10m歩いてはストライキ!
「こんなかっこ悪い姿で散歩なんか俺様のプライドが許さねぇぜ!」と思っていたのかも…。
視界も極端に狭くなり、歩いてはどこかにカラーがぶち当たり、嗅ぎたい臭いの対象物にもマズルを近づけられないストレスは大変なものだったでしょうね。
「いつまで続くんやろ?」
まさに、『俺様の人生もう終わり!』状態のように見えました。
辛い日々が終えた後は、その間のうっぷんを晴らすように庭を大爆走!
家族にとってもホッとした日々が戻ってきました。
さて、実はエリザベスカラーを装着したこの間、大きな事件がありましたが、それは最後に述べることにしましょう。
去勢はするべきなのか?しない方がいいのか?
当時は下に書いたような理由で去勢を決断したわけですが、6歳になった今では、もう随分と前からですが、去勢はしなかった方がよかったという後悔をしています。
別に何かがあったというわけではありませんが、一番の決断の決め手となった「望まれない子どもを産ませる」ような状況になるようなことはありませんし、そのことが何故想定できなかったのかと悔やまれます。
そして何より、願いは叶わなかったとしても本来持っている機能を剥奪すべきではないと切に思ったからです。
人と同じように動物は、ある意味、命をつなぐために生まれて来たのではないかと…。
さて、去勢に関しては、一般的には獣医さんからも勧められているところですし、ペットとして飼うには前提のような雰囲気がありますね。
我が家でも、そのメリット・デメリットを考慮した上で、一般的な趨勢でもある去勢に踏み切ったわけですが、私自身の中では本来持っている生殖機能を人間の都合で無効にしてしまうことに何か罪悪感のような気持ちを抱いていたことも事実です。
去勢するべきかどうかの論議はあまり耳にすることもないですから、ペットを飼われた方には必ず通過しなければならない悩みとなります。
今までに飼った4匹の犬たちに関しては去勢など考えることすらなかったのですが・・・。
さしあたって、一般的に謳われている主なメリットとデメリットを整理しておきますと、
■メリット
- 生殖器・性ホルモンに関する疾患予防(前立腺肥大・睾丸腫よう・肛門周囲線種等)
- 長生きをする可能性が増加する(上記の疾患予防と関連)
- 望まれない子を産む可能性がzeroになる
- 性格や問題行動の改善・・・これはさほど期待するべきものではありません
■デメリット
- 全身麻酔に伴うリスク
- 術中・術後の感染症などのリスク
- 肥満傾向になる可能性が増加
家族はメリットの1,2項を期待しての気持ちが大きかったようですが、私としては3項が決断の決め手となりました。
メリットの1,2項に関しては生殖器・性ホルモン以外に関する疾患も含めて、トータルでメリットがあるのかどうかは論文や統計を鋭い目で読み解かないと判断はできないかもしれませんね。
さて、私が子どもの頃はもちろんですが私の子どもが生まれた頃でも、野良犬がまだウロウロしていたものです。
約26年前、我が子が生まれた直後から子どもたちの情操教育のために飼い始めた犬は去勢もせず、夜中~早朝は「勝手にどこにでも行っといで」と鎖を離している状態でした。
ちゃんと朝になったら帰ってきて自分の小屋で寝ていました。
もちろん人に噛みつくような犬じゃないからこそしていたことではあるのですが、それでも、今の時代にこんなことはできませんよね。
たった26年前なのですが、当時はそんなこと世間の誰もが気にも留めていなかったように思います。
「あっ、犬が独りで歩いてるわ。首輪が付いてるからノラじゃないね。」ぐらいの感覚でした。
でも、どこかで生殖本能を発揮していたことは確かでしょう。
当時は、そんなことを深く考えることはなかったのですが、これはマズかったですね。
もちろん同じことをするつもりではありませんし、できようもありませんが、どんな事態があったとしても想定外の子どもが増えないようにしなければならないという意味で、そこが、私の決断の最たる理由となりました。
去勢や避妊が条件となっていない施設の利用での事故を防ぐという意味合いでの判断です。
当初は、人間社会では実りようのない性衝動に悩まされるのも可哀想という思いもありましたが、よく考えれば、去勢すれば性衝動自体がなくなるということにまではならないですから、この理屈は通りません。
ここが同じであるなら、去勢した方がメリットが大きいかなと判断したわけです。
去勢によって煩悩が軽減するということはあるのかもしれませんが、基本的には去勢しようとしまいと人間に管理されている以上、犬にとっては同じストレスを抱えて生きねばならないことに変わりはありません。
ラプラス君は基本は良い子なのですが、知らない人と犬には、近づいてくると鼻にしわを寄せて唸り、今にも飛びかからんばかりで、決して寄せ付けないのですが、半年ほどまえに、久々に1年がかりでお友達になれた飼い主ママさんとワンコが居ます。
ビジョンフリーゼのアトム君(メチャ可愛い顔!)で、1年半ほど前から、散歩で会えば「柴犬先輩」と、唸られながらも果敢に相手になっていただき、1年経った頃に突然と言ってもいいぐらいでしょうか、ラプラス君はアトム君ママにもアトム君にも心を許してすり寄っていくほどになりました。
そのアトム君ママも、当初は去勢するつもりだったそうですが、ある方のアドバイスで「やっぱり、去勢はしない方がいい」と決断されたようです。
「やっぱり自然にあることが一番ですよ」ということで思いは同じでした。
ただ、私としては去勢しないのであれば、できれば、子孫を残すという営みも経験させてあげるように持っていくように努力はしなければならないとは思ってしまうのですが、そうなると、ここでも一苦労ありそうですよね。
2019年10月3日追記
去勢した後のラプラス号の顛末
さて、術後のラプラス君はどうなったでしょうか?
- 生後10か月近くで少しやんちゃないたずらが減ってきて落ち着いてきたかなと思っていたのですが、術後はなんだか再び子どもに戻った感じでやんちゃぶりが復活しましたかね
- マウンティングはほとんどしなくなりましたが、月日が経つと思い出したのか時々復活していました。
- ただ、去勢してから約9か月経った10月~11月の2ヶ月間自宅事務所の改修のため広い個室のペットホテルに預けました。
毎日面会を兼ねて散歩に行っていたのですが、預けて1か月ほど経った頃から散歩でさかんにマウンティングをしだしました。(特に妻や娘にすることが多いですが、息子にも私にもします) - 自宅に帰ってきた現在も結構多くマウント行為をします。
ここら辺りから、マウント行為は権威行動と言うよりも、孤独になりたくないがための自己アッピールの表現ではないかと思うようになったと同時に、やはり性衝動の発現のように思える時もあります。(去勢後も勃起はしますよ。) - マーキングは、去勢する前から習慣になってしまっていたからでしょうか、無くなるなくことはありませんでした。
(マーキングってしないように躾けるべきもののように思われている面もあるようですが、してはいけないところではリードを引っ張れば済むことで、マーキング自体をやめさせる必要性があることには疑問を感じます。)
経験論的結論
- 去勢をしてもマウンティング・マーキング・臭い嗅ぎがなくなるとは結論付けられません。
たいがいは、これらの行為を発現させてからの去勢手術になるでしょうから、「なくならないのが常で、なくなる場合もある」という認識が正しいのではないかと思います。 - 性格は、少々おとなしくなったとかの変化はあるかもしれませんが、確かに基本的には大きく変わることはありませんでした。
(これは、複数の獣医さんがそう仰っておられました。) - 性衝動は、軽減する場合もあるでしょうが、基本的には無くなることはないと考えられます。
エリザベスカラー装着時の事件
さて、最初にお話ししたエリザベスカラー装着時の事件のことをお話しましょう。
写真のようにエリザベスカラーはコーン型をした塩ビか何かのプラスティック製のもので、傷口を舐めないようにプロテクトするものです。
なのに、ラプラス君は4日目ぐらいには、カラーの端面が擦れた結果なのか、自分で噛み切ったのかは定かではなかったのですが、見えていた黒い糸の本数が減っていたのです。
そこで、少し大きいエリザベスカラーに替えていただいたのですが、それでも約10日後には全て抜糸を自力で終えてしまうことになりました。
これには先生も『自分で抜いちゃったの?』と話しかけて苦笑い。
プニョプニョしていますから、端面を傷口の少し手前にセットしてお腹に食い込ませるようにするとマズルが傷口まで届くことに気づいちゃったようです。
気づいた最初は、傷口もまだジュクジュクした感じでしたから化膿しないかと心配しましたので、エリザベスカラーを大きくしてもらうのと同時に、我が家で愛用の光線療法の光線を家族の独断で照射してやりました。
←コウケントー1号器(SF-113)/黒田製作所(株コウケントー)
元々、家畜用としても利用されていたことを知っていましたし、私たち人間の傷や皮膚疾患がみるみる改善されることを知っていましたから・・。
膝の上に仰向けにしてホールドし、傷口に光線を照射してやったのです。
やはり、これは結構効きましたね。
傷口がしっかりと乾燥して安定して来ました。
ともかくも現在、特に健康にも性格にも問題なく暮らしています。
言われているメリットがあるのかどうかは分かりませんが、何かの施設を利用した際に間違って交尾したとしても、想定外の子どもを産ませる心配がないことには安心ができますしスタッフの皆さんの負担も軽減されます。
去勢が条件の施設を利用される予定がない場合や間違いなく他の犬との交尾がないように管理ができる環境下である場合などで、病気や寿命も自然のままで受け入れるとお考えの場合は(私もこの考えです)、特に去勢・避妊をされることもないかと考えています。
みなさんのワンチャンの去勢・避妊について考えるヒントになれば幸いです。