コラーゲンの経口摂取は美肌に効果があるかもしれない

コラーゲンの旧基本

コラーゲン産生促進の成分は?
  1. コラーゲンは分子量の大きなタンパク質です。
  2. タンパク質はアミノ酸やアミノ酸ペプチドに分解されて体内に消化・吸収されます。
  3. 従って、コラーゲンを食べても、日常的に食事からタンパク質を摂取することと何ら変わりはありません。

そこで、コラーゲンをペプチドとして分子量を10万レベルから数千あるいは数百レベルに下げた低分子コラーゲンが登場します。

『旧基本』と書いたのは、2.に関して反証が提示されたことによります。

筆者としては、『旧基本』の常識がありましたので、コラーゲンペプチドとして分子量を小さくしたとしても、そのまま吸収されるはずはなくアミノ酸に分解されて吸収されるはずですから、経皮摂取以上にあり得ないと考えていました。

結果、要するにタンパク質を食べるのと同じことだと考えていましたし、実際に、機会があるごとにそのように書いてきました。

この点に関して、若干の修正をしなくてはならないと言える反証が提示されたというお話です。

コラーゲンに関する新たな見解

従来、コラーゲンを食べたり飲んだりする場合は、大きな分子量のままで腸管までは辿り着くことは認められてはいましたが、腸管から直接低分子コラーゲンを体内に吸収したという報告は見られず、結局、基本的には消化で分解されてアミノ酸などとして吸収されるというのが定説でした。

そこに、近年、コラーゲンペプチドは他のタンパク質と相違して、必ずしも2.の規則に従わないという研究結果が発表されました。

コラーゲンペプチドの一部はアミノ酸まで分解されずにオリゴペプチドとして血中に入り込む事実が確認されたという報告です。

実は1962年、すでにコラーゲンを分解したゼラチンの消化・吸収において、コラーゲンに特徴的なアミノ酸であるヒドロキシプロリンを含有するオリゴペプチドが血中に確認されたという論文(Gastrointestinal absorption and renal excretion of hydroxyproline peptides.::消化管吸収およびヒドロキシプロリンペプチドの腎排泄:Darwin Prockop博士etc)はアメリカにてすでに発表されていたのですが、アミノ酸配列が不明のため、近年まで注目されなかったようです。

ところが、2003年頃から民間の研究者であった岩井浩二氏や京都府立大学の佐藤健二教授,(財)日本皮革研究所etcの研究によって、ゼラチンに引き続きコラーゲンペプチドを摂取後の血液から、コラーゲン特有のプロリルヒドロキシプロリン(Pro-Hyp)及びヒドロキシプロリルグリシン(Hyp-Gly)が確認されたという報告が2005年以降に正式に上がってきています。

即ち、
コラーゲンペプチドは従来の常識を覆して、そのまま血中に吸収されアミノ酸に分解されることなくオリゴペプチドのまま血液中を流れる
という発見です。
(佐藤教授によると、半分はアミノ酸に分解され、半分がペプチドのまま吸収されるということのようです。)

【参考文献】

  1. 2005年Journal of Agricultural and Food Chemistry
    Identification of food-derived collagen peptides in human blood after oral ingestion of gelatin hydrolysates.
    ゼラチン加水分解物の経口摂取後のヒト血液中の食品由来のコラーゲンペプチドの同定:岩井浩二氏etc
  2. コラーゲンペプチド摂取による機能性メカニズム解明システムの開発:京都府立大学/生命環境科学研究科/佐藤 健司
  3. そうだったんだ!コラーゲン!!:(株)ニッタバイオラボ主催コラーゲンシンポジウム(大阪)
  4. 天然素材コラーゲンの機能性etc:(財)日本皮革研究所

さらに、このペプチドの成分であるプロリルヒドロキシプロリン(Pro-Hyp)が繊維芽細胞の産生を大幅に促進し、傷の修復や肌の潤い改善することが実際に確認されたという報告があがり、コラーゲンペプチドの経口摂取によるこれらの効果のメカニズムが解明されつつあるという状況です。

筆者としては、

  • 産学共同研究の色合いが強い分野でもあり
  • メカニズム・機序がまだまだ分からない段階でもあり
  • 国立健康・栄養研究所の見解が2012年段階でも修正されていないこと

などの理由から、無条件に信じる段階ではないと思うのですが、二重盲検法で行われた検査である点などの信頼性は認められますので、過剰摂取をしない限りは効果を期待してもよいのではないかと考えます。

但し、美容面に限れば、【部分痩せ】が困難なことと同じく、膨大な表面積の皮膚で、希望するところのハリや弾力に分配される可能性は神に任せるしかないことは言えると考えています。

コラーゲンと同じ働きをするオリゴペプチドが血中に流れているとしても、どこに分配されるかは、ハンカチ落としゲームで誰にハンカチが落とされるのか分からないことと同じ段階であることは確かでしょう。

真っ当なメーカなら公式に謳うメーカはないでしょうが、もし、ご自身のフェイスに都合よく落としていってくれてプルプルになるというような印象を抱かせるPRがあったとすれば、それは切ない願いであるという言い聞かせだけは事前にしておかれた方が無難だと思います。

私たち消費者の素人レベルとしては、ここまでが、バランス感覚をもった推論といえるのではないでしょうか?

出来得れば、結論を出したとしても、それとて何も分かっていないのが現実なんだというバックグランドで捉え、常にアンテナを立てておくという姿勢が最も好ましい姿勢だと思えます。

例えば、テレビなどでお馴染みかもしれませんが、皮膚科医師の吉木伸子先生は、『飲んだり食べたりしたコラーゲンは、そのまま肌には定着しません』と明確に記されています。

上記のような反証の研究結果がすでに論文やニュース等で正式に発表されて以降の執筆だと見られますが、この書籍では低分子化コラーゲンや新しい見解にについては語られていませんでした。

そうすると、これを読んだだけで従来の固定概念に囚われたまま、新たな動きを見過ごしてしまうのも切ないということになりそうですね。

コラーゲンの経口摂取は効果がありそう・・・2019年

2017年、ファンケルと横浜市立大医学部の共同研究でもコラーゲンの経口摂取がコラーゲンの増大に寄与していることを確認。

この論文だけからではないのですが、どうやら、コラーゲンペプチドが存在することで、体がコラーゲンの分解が進んだと勘違いしてコラーゲン合成を活発化させるということのようです。

なるほど、脂肪細胞生成と似たような、なかなか面白いシステムがあったのですね。(まだ断言はできませんが…)

コラーゲンに関する総合的な結論

これらを総合的に考えると、コラーゲンは飲んだり食べたりする経口摂取では、コラーゲンが持っている機能を補足してくれる可能性が出て来たと捉えることができるのではないかと考えます。

但し、あくまでも可能性ということで捉え、決して過剰摂取はしないことです。
何にしてもそうですが、一番問題なのは信じ過ぎて、あるいは願望に集中してしまってバランス感覚を失うことです。

本当は、食材からタンパク質をバランスよく摂取すれば済むことなのですから…。

最後に、

コラーゲンだけが他のタンパク質と相違して一部がそのまま吸収されるとすれば、その特異性には何らかの理由があるのかもしれないことは想像されます。

即ち、「他のタンパク源とは別にコラーゲンを摂取することに意味があるのではないか?」ということは考えられます。

但し、

  1. コラーゲンを摂取するのとコラーゲンペプチドを摂取するのでは何らかの差異があるのか?
  2. 差異が無ければ、コラーゲンをペプチド化するメリットが他にあるのか?

などについては調べてはいないのですが、とりあえずは、コラーゲンを含む食材を別の枠組みで採り入れるということは悪いことではないように思われます。

と言っても、下の食材のように、意識せずとも結構日常的に採れているものなのかもしれませんよ。

コラーゲンを豊富に含む食材

  • 動物性
    • 牛スジ
    • 牛テール
    • 豚白モツ
    • 豚小間肉
    • 鶏軟骨
    • 鶏砂肝
    • 手羽元
  • 海洋性
    • フカヒレ
    • ウナギ
    • ハモ
    • 鮭(皮に豊富)
    • サンマ・サバ・ブリetc各種魚(皮付きが豊富)
    • イカナゴ(コウナゴ)
    • エビ・イカ

ここから言えることは、もしサプリメントを活用するなら、

  • 肉ばっかり食べている方は、魚由来のコラーゲンは如何?
  • 魚ばっかり食べている方(少数派でしょうが…)は、肉由来のコラーゲンは如何?

といった利用の仕方が、直感的に思い浮かびます。

一般的には、やはり、「もう少しお肉をお魚に替えましょ!」が多いのではないでしょうか?

まぁ、お魚を煮つけた際に、表面にヌルっとへばりついているコラーゲンをすすれば済むことなのですが…。

我が家の柴犬もお肉が好きだから、認知症にならないために、ドッグフードにはフィッシュが含まれたもの(少し前までは、お魚成分の多いもの)を使っているほどです。