コラーゲンは塗ってもコラーゲンとして浸透しません
コラーゲンの基本
- コラーゲンは分子量の大きなタンパク質です。
- 皮膚のバリアは大きな分子量の物質は通しません。
- 従って、コラーゲンを塗っても、それがコラーゲンのまま真皮にまで到達しコラーゲンを補充してくれるはずはありません。
コラーゲンの低分子化という戦略
そこで、コラーゲンをペプチドとして分子量を10万レベルから数千あるいは数百レベルに下げた低分子コラーゲンが登場します。
確かに数百程度の分子量であれば浸透する可能性はありますから、絶対に浸透しないとは言い切れませんし、むしろ一定浸透すると考えられます。
ただ、そうなると
- 本来コラーゲンが持っている特性がそのまま継承されるかどうかは極めて疑問
- 低分子化して真皮に到達したペプチドが再結合して人間のコラーゲンになってくれるかどうかは極めて疑問
要するに、常識的に考えて、コラーゲンを塗ってそれが私たちのコラーゲンとして定着してくれるというのは限りなくあり得ません。
『生コラーゲン』 が浸透することはまずあり得ないと考えられます。
但し、低分子化したペプチドであれば、浸透してアミノ酸様の作用を発揮してくれることは可能性があるとは言えます。
ここまでが、バランス感覚をもった推論といえるのではないでしょうか?
私たち消費者の素人レベルとしては、少なくとも、こういった素朴な疑問を持てることが大切だと考えます。
出来得れば、結論を出したとしても、それとて何も分かっていないのが現実なんだというバックグランドで捉え、常にアンテナを立てておくという姿勢が最も好ましい姿勢だと思えます。
例えば、テレビなどでお馴染みかもしれませんが、皮膚科医師の吉木伸子先生は、『コラーゲンは肌に塗っても定着しません』と明確に記されています。
しかし、この書籍では低分子化コラーゲンについては触れられていませんでした。
そうすると、これを読んだだけでコラーゲンを×と固定化してしまうと、低分子化コラーゲンで攻めてこられたとき、こちらも固定概念で×としてしまう短絡に陥ってしまうことになりかねませんが、これも正しい処し方とは言えませんね。
特に次に記す予定のコラーゲンの経口摂取については、少し舌足らずの感以上に近年発表された論文結果(執筆される前に発表されていたはず)を見過ごすことにもなってしまいます。
ナノ化すればいいってもんじゃ…
ご丁寧に「ナノ化したカプセルにコラーゲンを詰めることでお肌に浸透します」などという摩訶不思議な説明も見受けられました。
ナノ化したカプセルにそんなでっかい分子を詰めれるでしょうか?
結局コラーゲン自体をナノ化しているということでしょうか?
「そうだとすれば、もはやコラーゲンではなくアミノ酸のプチ集団なのでは?」となりますね!
言葉の使い方とはいえ、それならそれで、『コラーゲンを浸透させる』ではなく、『コラーゲンから分解したアミノ酸小集合体を浸透させる』と言うべきではないでしょうか?
ともかく、何でもかんでも『ナノ化』と謳いさえすれば売れる傾向があります。
もちろん、『ナノ化』が非常に良い効果を与えてくれる場合もありますが、あまり好ましくない成分をナノ化すれば、当然大きな危険性が伴って来ます。
売れさえすれば無茶苦茶なことをするメーカもあるわけですから、このことは今、頭に入れておかれることが自己防衛に繋がります。
簡単な化粧品なら素人でも作れますから化粧品業界には5000以上のメーカと称する会社があるわけです。
それだけに、企業姿勢がただの商業主義の会社も数多ありますので、常識的な防衛はしておきたいものですね。
ベルマン化粧品でも『ナノ化』は一定採用していますが、例えば、UVカット製品における紫外線散乱剤としての酸化チタンや酸化亜鉛などを効果を高めるためにナノ化して肌への浸透の可能性を高めるような愚かなことは決してしません。
アレルギー反応の壁
もう1点、化粧品などで使われるコラーゲンは、おそらく豚か牛か魚が由来であって、人間とは組成が違うことが問題となります。
従って、アレルギー反応の可能性を避けて通ることはできません。
美容外科で行われるコラーゲン注射も厳重なアレルギー反応テストが必須条件であり、これを患者に告知したり実施しない美容外科は商業主義に毒されていると考えた方が賢明でしょう。
もし、本当に巷に溢れる『コラーゲンのまま浸透』するかのような表現が正しければ、アレルギートラブルが続出しているのではないでしょうか?
そういった事例が見受けられないのは、逆に言えば、コラーゲンのまま浸透していることはないという一つの証明と考えられます。
低分子化コラーゲンを塗って一定浸透していると考えられる場合は、もはやコラーゲンではなくアミノ酸として浸透しているためアレルギー反応が見受けられないと考えられるのではないでしょうか?
従って、コラーゲンを塗っても浸透して真皮にあるコラーゲンになってくれるはずがありません。
そして、医学界ではこれが定説です。
コラーゲンを塗ることの結論
これらを総合的に考えると、生コラーゲンそのものは、バリア機能が異物と判断して侵入させないと考えるのが常識的だと考えます。
コラーゲン注射においてすら、時間の経過とともに結局は100%分解されて定着はしないとのことです。
ただ、コラーゲン自体は水分を保持する作用を持っていますので、塗っている間は保湿効果は感じられるかもしれません。
これがプラセボ効果(偽薬効果)を呼び起こす大きな要因になると思われますが、何時かは変質してしまい、保湿効果も一時的なものだと思われます。
幸いに、塗るだけの場合は、浸透しないからこそ危険性が表面化しないというパラドックスが成り立つために、「コラーゲンが浸透する!」なる謳い文句の化粧品が氾濫してしまっていると言えそうです。
次に、低分子コラーゲン(=アミノ酸小集合体)の場合は、これが一定浸透するとすれば、コラーゲンを作る材料になってくれる可能性やNMF(天然保湿因子)の材料になってくれるなどの作用は及ぼしてくれる可能性は否定できません。
ディスカッション
コメント一覧
とても参考になりました。
巷にコラーゲンの効能がはびこっているようですが、消費者も勉強して賢くならねばとつくづく反省いたします。
詳細な解説に心から感謝致します。