レチノールはコラーゲン産生を促進するか?

表皮の下部にある真皮は線維層とも呼ばれ、皮膚のハリ・硬さ・弾力に関与する重要な役割を果たしています。
ハリ・柔軟性に寄与する膠原繊維(コラーゲン)と弾力・伸縮性に寄与する弾力線維(エラスチン)及び肌の保湿力の源となる基質(ムコ多糖類)から成る結合組織の層で、これらの線維や基質は真皮の線維芽細胞で作られています。
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ところが、製造元である線維芽細胞も御多分に漏れず加齢とともに衰え、コラーゲン・エラスチンが減少していくことで、ハリ・弾力が失われていくわけですね。
また、せっかく維持しているコラーゲンも紫外線によって変形したりやっつけられたりしますから、自然な加齢の影響以上に減少すると考えられます。
コラーゲンの損傷は『糖化反応』によるという研究報告からアプローチしますと『抗糖化』という対処法が出てきますが、子のお話は下記からご一読ください。
ハリや弾力が失われてくると、所謂シワやタルミとなって目に見える形で現れてきます。
ですから、いつまでも健やかで若々しいお肌を保つためには、コラーゲンやエラスチンを出来る限り多く産生するようにケアしてやらねばなりません。
さて、コラーゲン産生を最も有効に促進すると言われている化粧品成分って何だと思われますか?
正解はレチノール(ビタミンAの一種)なんですね。
私たちの血液にあるビタミンAはほとんどがレチノールだそうです。
レチノールは特定の酵素の働きでレチノイン酸(トレチノイン)に変化して、線維芽細胞に働きかけることで、ターンオーバーを促進することやコラーゲン産生やヒアルロン酸産生に効果的だと言われています。
しかし、ベルマン化粧品ではレチノールを使用した化粧品は1種類しかありません。
美容液にエスピュラン[50]に水添レチノールとして安定化させた成分を微量配合しているに留まっています。
※レチノールそのものでは非常に不安定で塗った途端にもう機能しなくなるような代物ですから、誘導体の形にして安定化させます。
何故でしょうか?
どうやらコラーゲン産生やヒアルロン酸産生にそれほど効果がないか、危険性があるということを疑わねばなりませんね。
では、ベルマン化粧品のエスピュラン[50]での水添レチノールの役割を見てみましょう。
すると、『ターンオーバー促進』という機能として使われているんですね。
なるほど、特定の酵素の働きを得てトレチノインに変化すると、凄まじいターンオーバー効果があります。
そのトレチノインの薬理作用は前駆体であるレチノールの100倍と言われています。
そりゃぁ、ここまで作用が強いということは、副作用も強いということになりますから、医療の監視下の下でしか使えないのは当たり前のことですね。
実際、トレチノインによる尋常性ざ瘡や尋常性乾癬・ケロイドの治療や、あるいは、美容外科のシミ・ニキビ除去などの治療は、皮膚炎が避けては通れないプロセスとして立ちはだかっているようです。
さて、重要なポイントは、レチノールとトレチノインは別物であるということです。
薬理作用の強力なトレチノインは医療用としては使われますが、化粧品に使われることは認められていません。
上記の理由から当然ですね。
ということは、レチノールではターンオーバー効果やコラーゲンやエラスチン産生促進作用というのは、現実的にはそれほど大きなものではないか、あるいは人間にとっては適切な緩慢さと考えるのが合理的でしょう。
そこで、人間考えることは同じです。
トレチノインが使えないなら、劇的な効果を生み出すためにレチノールの濃度を高くして配合してやろうという発想ですね。
実際に、高濃度のレチノールの場合にはメラニン排出効果があることが論文でも発表されていますが、レチノールでのその他の作用についてはまだ確かなものではなく、むしろ、確実に現れる副作用として皮膚炎が出る可能性が指摘されています。
レチノールを売りにした化粧品シリーズで皮膚の炎症や肌荒れが続出!
実際に、販売中止になったという事例が2013年にすでに発生しています。
結論的に言えば、何度も同じ繰り返しになってしまいますが、『劇的な効果』は『劇的な副作用』と同じことであるということです。
「自分に限って被害者になることはない」と誰もが堅く信じていますから、なおさら、華々しく劇的な効果をイメージさせるような文言には注意しましょうよということですかね。
というようなわけで、ベルマン社では、コラーゲン産生機能としては、より穏やかなリン酸アスコルビルやテトラへキシルデカン酸アスコルビルといったビタミンC誘導体やダイズ種子エキス・ツバキ種子エキスetcを多く採用しています。
レチノールの成分を見たときに、判断する参考としていただければ幸いです。
(もちろん、もっともっと勉強しなければなりませんが、化学はどうも理屈が連鎖しないので難しいですね)
ディスカッション
コメント一覧
いつもお世話になっております。
コラーゲンに関する記事、興味深く拝見しました。
友人の勧めで5年ほど前から「長寿の里」というメーカーの「まるコラーゲン」を使っております。水分(化粧水)で溶かして肌に直接塗るタイプのものです。
HPに細かい成分表示がなく、不安を感じました。
今現在、肌の調子は(ベルマンのゲル・ホームのお陰もあり!)すこぶるよいですが、このまま併用してもいいのか、併用する必要があるのか悩むところです。
他社のことを伺うのは失礼と思いましたが、何かアドバイスを頂ければと思いコメントをさせていただきました。
まだ、どんなものか見ていませんが、コラーゲンそのものを塗るのであれば、基本的にお肌に浸透することはありません。
次に記載する予定だったのですが、口からコラーゲンを入れても限りなく効果はないと言えます。
ただ、危険性があるかどうかは別問題ですが、コラーゲンの場合は過剰な場合を除き、ただ効果がないだけで留まれる
レベルだと思います。
もう少し深めてお返事させていただきます。
早速のご返信に心より感謝致します。
「効果がない」という部分に過剰反応しております。
更に詳細なご連絡が頂ければ幸いです。
厚かましい質問で本当にすみません。
Webページにする前に、一般的な考え方として要点だけ示させていただきます。
【経皮摂取】
コラーゲンは分子量の大きなタンパク質です。
皮膚のバリアは大きな分子量の物質は通しません。
そこで、コラーゲンをペプチドとして分子量を10万レベルから数千あるいは数百レベルに下げた低分子コラーゲンが登場します。
確かに数百程度の分子量であれば浸透する可能性はあります。
しかし、もう1点、化粧品などで使われるコラーゲンは、おそらく豚か牛等であって、人間とは組成が違うことが問題です。
(美容外科で行われるコラーゲン注射も厳重なアレルギーテストが必須条件です。)
バリア機能が異物と判断して侵入させないと考えるのが常識的だと考えます。
もし、本当に浸透していれば、アレルギートラブルが続出しているのではないでしょうか?
従って、コラーゲンを塗っても真皮にあるコラーゲンになってくれるはずがありませんし、医学界ではこれが定説です。
(コラーゲン注射も結局は100%分解されて、定着はしないとのことです。)
ただ、コラーゲン自体は水分を保持する作用を持っていますので、塗っている間は保湿効果は感じられるかもしれません。
と言っても、何時かは変質してしまい、保湿効果も一時的なものだと思われます。
また、愛用者は情報を求めることさえなければ(幸いに、塗るだけの場合は危険性が低いと思われる)、プラセボ効果は大きいと思います。
【経口摂取】
上記と同じく、コラーゲンペプチドとして分子量を小さくしたとしても、そのまま吸収されるはずはなくアミノ酸に分解されて吸収されるはずですから、経皮摂取以上にあり得ないと考えていました。
タンパク質を食べるのと同じことだと考えていました。
この点に関しては若干の修正をしなくてはならないようです。
近年の研究で、コラーゲンペプチドは他のタンパク質と相違してアミノ酸まで分解されずにオリゴペプチドとして血中に入り込むことを確認できた論文が出ています。
詳しく質・量を精査しないと何とも言えませんが、仮に真実であったとしても、【部分痩せ】が困難なことと同じく、膨大な表面積の皮膚で希望するところのハリや弾力に分配される可能性は神に任せるしかないことは言えるでしょうね。
とにかく、「コラーゲンが浸透する」ということを売りにしているのであれば、それだけでアウトと判断できます。
また、「コラーゲンなのかコラーゲンペプチドなのか?由来は何なのか?」を明示していないのも信用できませんね。
ご丁寧な返信に心から感謝致します。
毎晩、使用していましたが、確かにその後数時間は肌の質感がしっとりとしているのですがその後はまたかさかさとしておりました。(御社のゲルホームを使い出してそれは全くなくなりましたが。)
また、朝、メイク前に使用したこともあるのですがファンデーションのりがかえって悪く、ムラムラになったこともあって朝の使用はやめました。つまり、仰るとおり、肌には浸透せず肌の質感のみが一時的に良くなっていたと勘違いしていたわけなんでしょうね。とてもとても参考になるご意見に心から感謝致します。今後塗るコラーゲンに頼ることは止めようと思います。