このように尋ねられると、尋ねる人の真意というものがいろいろあって答える方も難しいんだね。

だから、対話しながらどういう角度から答えてあげるのがいいのかっていうことを絞りながら答えるのが本当は一番いいんだと思う。

とは言っても、ここではそうも言っておられないから、いくつか予想される範囲で話を進めていくよ。

現代文明はサイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)のおかげ!

もし、君が「ルート\(\sqrt{\quad}\)なんて知ってても将来何の役にも立たないのに何故勉強しなくちゃならないの?」という意味合いで尋ねているのであれば、まず次のように逆に尋ねるよ。

アインシュタイン
  • 「将来何の役にも立たない」あるいは「大人になったら使うことがない」ということは誰が決めたのかな?

昔、僕が高校生の頃にも『受験生ブルース』ってフォークソングが流行ったんだけど、その中に「サイン(sin)コサイン(cos)何になる?おいらはおいらの道を行く」って歌詞があったんだね。

でもどうだろう、僕なんかはサイン(sin)コサイン(cos)やルート\(\sqrt{\quad}\)がないと仕事にならなかったよ!

大工さんや木材屋さんは、曲尺(かねじゃく)という直角の物差しを使っているんだけれど、その裏側の目盛には\(\sqrt{2}\)倍の目盛がふってあって、丸太からどれぐらいの正方形が取れるかが一目で分かるようになっていたりする。

何の役にも立たないという世間の無責任な話を本気にしちゃってほしくはないね。
サイン(sin)コサイン(cos)やルート\(\sqrt{\quad}\)があるからこそ、これだけ便利な生活を君たちもしていられるんだよ。

男子生徒01

でも、先生は理系だからでしょ。おいらは端から文系行くつもりだから必要ないじゃん

アインシュタイン

中学生で、もう文系に行くって決めてるんだ~!
数学が苦手だからという理由だけで決めてるんじゃなければいいんだけれど…。

確かに、事務職の仕事に就いてサイン(sin)・コサイン(cos)やルート\(\sqrt{\quad}\)はほとんど使うことはないかもしれないけれど、文系ったって、何か服飾だったりインテリアだったりCGだったりのデザイン的な仕事に進むことになるかもしれないし、不動産の販売会社にでも勤めることになるかもしれないし、メーカの営業職に就くかもしれないね。

そんな時には、これらの知識がないとお客さんに即座に答えが出ないことだってあるかもしれないし、営業で商品の説明をするときにだって必要になるかもしれないよ。

いやいや、もっと言うなら、事務職の仕事に就いたとしても、何かの統計を取ったりして判断しなけりゃいけないことだって大いに可能性はある。

そんなときに、ルート\(\sqrt{\quad}\)も知らないとなると、もう頭を使う仕事は何にも任すまいと思われてしまうことだって出て来るんじゃないかな?

僕は文系の人の方が友達が多いし、会社でも営業職に限らず事務職の人とも結構話をしてきたけれど、正直な話、ルート\(\sqrt{\quad}\)を理解していないような人に僕は出会ったことがないと断言してもいいね。
僕の奥さんだって、そのぐらいのことは知っている。

もう少し詳しい説明に入る前に、これだけは言っておきたいことを書いておくね。

現代の文明はサイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)によって成り立っている。

君たちが大好きなスマホや君たちがお世話になっているすべてのものは、サイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)のお蔭で生まれたものばかりだと言っても過言じゃない。

君たちが自分自身でサイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)を使う機会があろうがあるまいが、これら無くして現代の文明はあり得ないことだけは知っておかなくちゃならない。

それは、そういう世界のお蔭で自分が楽しく便利に生きることができるということに他ならないことでもあるんだよ。

もし、これらを勉強せずに、いや知ることすらなく大人になれば、自分が他の多くの人やもののお蔭で生きられていることが見えない人になっちゃう。

そうなると当然、感謝をするってことをなおざりにしてしまうことになってしまって人から愛されることも少なくなるのではないかな?

果たして、君たちは当たり前のようにご飯を食べているけれども、そのことにどれほど感謝しているだろうか?

自分で土を耕し、太陽の温もりを素足に感じて汗を流し、天候に翻弄されては涙することを知らなければ、食べ物がどれほどありがたいことかに思いを馳せることはないだろう。

サイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)を勉強する意味というのは、君が可能性を見つける為とか考える力を育てるなんてこと以上に、感謝の気持ちを育てるという意味の方が根本的なものだと僕は思うよ。

さて、サイン(sin)・コサイン(cos)のお話は別の機会に譲るとして、ルート\(\sqrt{\quad}\)の例を挙げておこうか。

ルート\(\sqrt{\quad}\)が分からなかったらサイン(sin)・コサイン(cos)を勉強する土俵にも上がれない最も基本的な概念だからね。

  1. 君は不動産販売会社に新入社員として採用されて、初めてのお客様との打ち合わせに臨んだよ。

    お客さんから、出来るだけ早く、広さが約300平米で出来るだけ正方形に近い土地を探して欲しいと依頼されたとするね。

この時に、ルート\(\sqrt{\quad}\)に関する知識を知らないと幅と奥行きが約17.3mをメドに探せばいいということが分からないことになっちゃう!

もっとも、これは、同じ数同士をかけて300になればいいわけだから、小学生でもセンスを磨いた子なら、だいたい17m四方だよって答えちゃう。

すなわち、「正方形の面積だから同じ数同士をかけて300になるような数」って呟いた後は、例えば「20×20=400だから20mよりは小さい数だな」って始めて追い詰めていく。

もっとセンスを磨いてきた子は「256=16×16だから16mよりは大きい!17×17はいくつかな?」って具合に始めるかもしれない。

ここで気が付いたかもしれないけれど、ルート\(\sqrt{\quad}\)っていうのは単なる記号であって、この記号を習っていない小学生だって答えは出て来るんだね。

「同じ数同士をかけてAという数になったとき、この同じ数のことを\(\sqrt{A}\)という記号で表そう」という約束事だということね。

このように記号を決めておくと、誰かに説明するときに「同じ数同士をかけて300になるような数」という言い方ではなく、「\(\sqrt{300}\)」という一言で済むという便利さがメリットとして出て来るのだね。

もう一つ例を挙げておこうかね。

  1. 君は文具会社の会社員に採用されて、会社から次のような仕事を与えられた。

    次の条件を満足するような用紙を作りたいのだが、君が企画してくれないか?
    これを満足してくれたら、製作費がものすごくコストダウンになって君の給料もアップできるんだ。

    • ある長方形の用紙をSサイズとしたときに、短い辺(短辺)の方向に同じSサイズの用紙を2枚並べたときの大きさと同じ大きさの用紙をMサイズとする。
    • さらに、同じように短辺の方向に同じMサイズの用紙を2枚並べたときの大きさと同じ大きさの用紙をLサイズとする。
    • 同様の考え方でLサイズの2枚版Oサイズ、そのOサイズの2枚版XOサイズまでを作る。
    • 条件はね、全てのサイズの用紙は短辺と長辺との比(縦横の長さの比)が等しいこと。そして、サイズの用紙の短辺は148mmを守ってほしいということなんだ。

さて、君はこれを満足する型紙を作って会社に報告できるだろうか?

君は、きっと言われたことを整理してから下図のようなマンガを書くことだろう。

そして、縦横の比が全て等しいのだから、次のように書くだろう。

Sサイズの用紙の縦横比は、
は1よりおおきな実数だ)

今、例えばを1の長さと決めてやると、ということになる。

さて、Mサイズの用紙は作り方から、
であり、と同じ長さだよね。

これを考慮すると、Mサイズの用紙の縦横比は、となるね。

この縦横比もであることが条件として与えられていた。

ということは、でなくっちゃならないってこと。

これは、 であることを意味する。
即ち、同じ数同士をかけて2になるような数がというわけだ!

そして、こういう言い方をいちいちするのは面倒なので記号を使って、(ルート2)と表現することにしたわけだ。

別に正方形の面積の問題でなくとも、何かを解こうとする途中で、√はいくらでも出て来る。

ここでやって来たことを逆向きに辿ってみると、右の図のように大きな長方形の中に相似形の長方形がきれいに収まることになる。

  • 大きな長方形用紙XOを長辺の真ん中で半分に切るとOサイズの用紙が2枚出来た。
  • その内の1枚のOサイズ用紙を長辺の真ん中で半分に切るとLサイズの用紙が2枚出来た。
  • その内の1枚のLサイズ用紙を長辺の真ん中で半分に切るとMサイズの用紙が2枚出来た。
  • その内の1枚のMサイズ用紙を長辺の真ん中で半分に切るとSサイズの用紙が2枚出来た。
  • 出来た用紙の全てのサイズで、用紙の短辺と長辺の比はであった。

は、√を教わる際に1,4142・・・(一夜一夜に人見ごろ)ということも学ぶことだろう。

これにて一件落着!!

同様に、は、√を教わる際に1,7320・・・(人並みにおごれや)ということも学ぶことだろう。

だから最初の課題で、一辺が17.3mの正方形だとすぐにお客さんと話が出来ることになる。

もっとも、どんな数の√であっても計算で出せなきゃいけないんだけれども、今はそのことは問わないことにしておくね。

さてさて、実は実際に私たちが日常使っている用紙はこの条件を満たして作られているんだ。

SサイズがA5に相当し、以下順次に、MサイズがA4、LサイズがA3、OサイズがA2、XOサイズがA1に相当する。

実際にはもう一つ大きいサイズのA0まであるし、B5~B1といった別のシリーズもあるけれど考え方は同じだから、ここでは省略しておくね。

私たちが使ってる用紙にはという数の規則性で作られていたんだよ。

ちなみに、A1~A5の用紙サイズは下記のようになっています。
全て、縦横比が白銀比になっていますね。

短辺長さ [mm] 長辺長さ [mm] 短辺長さ:長辺長さ
白銀比
A5 148 210 √2≒1.414
A4 210 297
A3 297 420
A2 420 594
A1 594 841

このという比は、『白銀比』あるいは『大和比』って呼ばれていることを知っておくと、ちょっと話のネタになるよ。

銀閣寺や法隆寺の建築物や仏像にこの比が多く見られるということで『美しい比』として奉られているってわけなんだ。

と言ってもね、これだけ単独で話題にしても「それがどうしたの?」って君が友達から言われても困るから、『黄金比』だけイメージで説明しておくことにするね。

というのは、弊著『数学脳への導火線3:フィボナる・リュカる』で散々説明していますから…。

この2つで話題にできればヒーロー間違いなしだジェイ!!

黄金比と黄金の四角形(長方形)

先ほども言ったように、『数学脳への導火線3:フィボナる・リュカる』で散々説明していますから、ここではイメージだけで概略を説明するから、自分自身で何故そうなるのか?出来るだけ考えてみて!

  1. 君は会社から次のような企画を任されました。

    • ある長方形の用紙があります。
    • その長方形用紙からその短辺を辺とする正方形を切り取ったときに残された長方形が、もともとの長方形の短辺と長辺の比と同じにしてください。(相似形)
    • 残された長方形から再び短辺を辺とする正方形を切り取ったときに残された長方形が、もともとの長方形の短辺と長辺の比と同じにしてください。(相似形)
    • そのような長方形の用紙をA1用紙からA4用紙のように短辺の長さは同一にしてシリーズ化して商品企画を提出してください。

君は、きっと言われたことを整理してから下図のようなマンガを書くことだろう。

そしてこれを満足する用紙の短辺と長辺の比はということを見出すことでしょう。

この比は、自然界にも多く見られることで最も美しい比として『黄金比』と呼ばれているわけだ。

この一連の作業を、切ってバラバラにしちゃ分かりにくいから、一番元になる長方形の中に短辺の正方形で次々と分割するというイメージで書き込んでいけば下の図のようになる。

どうだい、果てしなくこの作業が続くであろうことが分かるかな?(顕微鏡で見ながら正方形を切り取ってかなくちゃならない!)

正方形を切りとっても切り取っても、小さな長方形が永遠に残るよね。

もともとの長方形は『黄金の四角形』と呼ばれ、図の四半分円で結ばれた赤い線は『黄金の螺旋』(オウム貝が黄金の螺旋とか??ホンマかいな?)と呼ばれている。

最後に言っておこう!

サイン(sin)・コサイン(cos)・ルート\(\sqrt{\quad}\)を勉強しておくと、丸いデコレーションケーキをかなり正確に3等分・6等分・12等分できる達人になれる!(笑)