遺伝子検査(genetic testing)ってどうなの??

ペットの遺伝子検査

昨今、私たち人間の社会では「遺伝子検査」をする方も多くなって来たようですね。

その結果、遺伝子検査を事業化した会社が増え、DenaやYahooでも事業化しています。

もちろん、主な目的は遺伝子由来の病気のリスクを減らそうという予防です。

万が一、遺伝病の可能性が高く出たとすれば、実際に発症しようがしまいが、発症した場合を想定して最良の治療プログラムを事前に用意することが出来るということですね。

ただ、そのことで遺伝病を根本的に治癒できるわけではありませんし、手の打ちようがない遺伝病の方が多いのではないかとも思います。

しかし、そのような場合でも、心構えや覚悟が準備できるというメリット、今現在を有効に生きることを促すメリットが考えられます。

となると、「人間」に何がしかのメリットがあるのでれば、「ペット」にだってメリットがある筈だという発想で、ペットの遺伝子検査もビジネスとして登場してくるのは、ごく自然の成り行きなのかもしれません。

そして、現実に数年前からビジネス化されていますが、ペットの遺伝子検査会社はまだそれほど多くはなく、海外の機関も含めて3社見受けられるのみです。

ペットの遺伝子検査…私としての結論を先に述べると

よほどの必要性がない限り(ここでは、この表現に止めておきます)、ペットの遺伝子検査などする必要がないのではないかと考えます。

後述しますように、ペットブームによる過繁殖によって遺伝子異常が多くなったことで、飼い主さんが心配されるのは当然のことだと思いますし、遺伝病の可能性を検査することによって、出来る限り幸せな生活を送らせてやりたいという動機であれば、何も異論を唱える筋合いはないことだけはここで申し上げておきたいと思います。

飼い主が知っておきたい愛犬の遺伝性疾患

遺伝病は、遺伝的な要因が考えられる疾患で、犬種レベルで遺伝子異常が解明されている疾患もあります。

犬の遺伝病は、600以上の疾患があるとも言われており、

  • 先天的に肝臓障害を持っていたり、
  • 突然失明したり白内障になってしまうような眼病、
  • 重篤なひきつけやてんかん発作などを繰り返す神経疾患、
  • 出血が止まらなくなる体質、
  • 免疫不全を引き起こす疾患、
  • 関節の形成に異常をきたしたり、極度に筋力が低下して歩けなくなるような関節骨格筋系疾患
  • など、実に様々な病気が潜んでいます。

    何故ペットにまで遺伝子検査??

    ペットの遺伝病に関しては、2017年にNHKのクローズアップ現代で「あなたのペットは大丈夫!?~追跡 ペットビジネス・遺伝病の闇~」と題して衝撃的に採り上げられたことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか?

    あなたのペットは大丈夫!?~追跡 ペットビジネス・遺伝病の闇
    NHK クローズアップ現代

    お話は、あるコーギーが飼い出してから10年ほど経ったある日から、遺伝性疾患の変性性脊髄症の症状を次々と発症していったというお話を中心に構成されていました。

    後ろ足から麻痺が現れだし、前足にまでその麻痺は広がり車いすでも進めなくなった様が描かれていました。

    治療法はなく、最後には麻痺が心肺に達し、発症してから3年ほどの寿命だそうです。

    その上、コーギーを無作為に遺伝子検査したところ、その9割以上に遺伝子異常があったという報告も紹介されました。

    何故、自然的定常状態では考えられないほどに遺伝子異常が多い状態になってしまったんでしょうか?

    岐阜大学で変性性脊髄症の研究を行っている神志那弘明准教授は、1990年代後半に流れた1本のCMで、コーギーの爆発的なブームが巻き起こり、異常なまでの繁殖を行ったことで、遺伝子異常を拡散してしまったと分析されています。

    これは、紛れもなく正しい分析であるでしょう。

    また、色の白いダックスフンドは本来は突然変異によって色素が作れなくなる遺伝子を発現した場合に現れるもので、耳鼻に障害を引き起こす可能性が高いそうですが、いろんな色、特に白を希少価値として欲しがる人間の欲望によって、それが引き起こすであろう負の側面に「見ざる・言わざる・聞かざる」を決め込んで業者が大量繁殖をしてきました。

    可愛いワンコたちの遺伝病による悲惨な映像が映し出されるに至ると、こぞって業者を非難するわけですが、自分の身勝手にも犬たちが犠牲になってしまった責任の大きな一端があると反省をしなければならないのではないでしょうか?

    テレビでもネットでも、悪徳ブリーダーの悪行ぶりやペット産業そのものへの疑問や批判までが報道され記事にされますが、消費者である私たちには何の罪もないというわけではないと私は思っています。

    「お客様は神様ですから」を錦の御旗に、ブリーダーはこれを自分の隠れ蓑にしますが、このことは消費者がそれを当たり前の礼儀として販売者側に強要してしまいがちなことと実は表裏一体なのではないでしょうか?

    その双方の言い分には、なんの理念も倫理も存在する余地が与えられていないのではないかと思えます。

    私なんか、家電のネットショップを運営していた時も、「なんで、こんなに沢山のカラーを用意してまで顧客に媚びるんだろう?」とよく思ったものでしたが、それが技術屋の目なんですね。営業屋とは全く違う目!

    色の相違ですからメインラインの段取り替えは必要ないですけれど、管理の面倒さは付きまといます。

    でも、ブリーダーの場合は、儲けるチャンスには何をしてでも儲けたいですから、面倒なことはやめて近親交配でも何でも平気でやってしまって、とにかく儲けようってなります。

    「みんなが飼っているから」だとか「すごいブームだからうちも飼おう」なんて消費者の欲望は、何の罪もないように思えますけれど、実はすごく罪を作ってしまっているのではないでしょうか?

    まず、人間とかペットとかの相違は少し置いておいて、一般的な「遺伝子検査」そのものの現状についての私なりの分析と結論をまとめておくことにします。

    「遺伝子検査」なるものの分析と私なりの結論

    • 遺伝子情報の解析によって医療が進歩を遂げていることは間違いのない事実
    • 予防医学への寄与という点での未来への可能性という意味では「遺伝子検査」は有意味なものである
    • 最終形としては、事前に最適な医療を模索できるというだけでなく、人生への心構えを持つための選択の幅を与えてくれるもの
    • 遺伝子検査が医療に当たるのかどうかは論争のあるところですが、厚労省は依然として一般ビジネスとして認めている。
    • 現実としては、まだまだデータ不足であり、判定基準とするべき論文やデータが検査業者によって異なることによって、業者によって結果が異なることは十分予想される
    • すなわち、遺伝子検査の結果の信憑性は、まだまだ低いと言えるが、そういうデータの蓄積が検査の精度を高めていくというジレンマは進歩にとっては通過せざるを得ないステップではある
    • 現在の検査の精度がどれほどのものであるかは不明
    • 業者のプロ度や信頼性においては、大手といえどもまだまだ未知数と考えるが、厚労省の規制によって、致命的とも言える悪徳業者の参入する余地は少ないであろう

    一般的な遺伝子検査ビジネスに対する日本医師会の見解

    企業(検査会社)が消費者に対して提供する遺伝学的検査であるいわゆる「DTC遺伝子検査(direct to consumergenetic testing、検査会社が医療消費者に直販する形式)」に関しては、「あくまで確率に基づく疾病罹患の可能性を予測する検査であり、医療で診断のために行う確定的検査とは違う。健康増進のための検査商品であり診断や医療行為には当たらない」というのが企業側の主張です。

    しかし、医療でも確率に基づく検査はいくらでもあり、それらは当然医療行為として実施されており、企業側の主張を以て「DTC遺伝子検査」は医療ではないと断言することはできません。

    患者や家族から相談を受けた際には、安易な推奨は控え、極めて慎重に対応する必要があります。

    引用:かかりつけ医として 知っておきたい遺伝子検査、遺伝学的検査 Q&A 2016(PDFファイル)

    犬の遺伝性疾患の代表例

    眼の疾患

    • 進行性網膜萎縮症(prcd-PRA)
    • コリー・アイ(CEA)
    • 緑内障

    神経系の疾患

    • 変性性脊髄症(DM)
    • セロイドリポフスチン症(CL)
    • GM1-ガングリオシドーシス(GM1)
    • イベルメクチン感受性(MDR1)

    血液の疾患

    • 遺伝性好中球減少症(TNS)
    • フォンウィルブランド病(VWD)
    • 肥大型心筋症(HCM)

    関節の疾患

    • 股関節形成不全(HD)
    進行性網膜萎縮症(PRA)
    網膜が変形、萎縮する病気で遺伝的要因の影響を強く受けます。夜盲症の症状に始まり、徐々に進行して最終的には失明に至ります。トイプードルなどの洋犬に多い。
    緑内障
    眼球内には房水(ぼうすい)が循環していて、産生と流出は一定に保たれ眼球内部の圧(眼圧)が維持されています。緑内障とは何らかの原因で房水の流出が阻害されたために眼圧が上昇した状態をいいます。眼圧の上昇が長期に続くと視神経が障害されるために失明することがあります。犬の緑内障の症状としては、初期は目の強い痛みによってまぶたが痙攣したり、眼圧が高くなっているので、目が真っ赤に充血したり、瞳孔が開いてしまっている状態になったりします。眼圧が高い状態のままでいると眼球が大きい状態になったりします。原発性開放隅角緑内障がイヌ緑内障として最も典型的です。シバイヌとシーズー、アメリカン・コッカ-・スパニエルで発症頻度が高いことが分かっています。
    セロイドリポフスチン症(CL)
    ライソゾーム内の分解酵素の遺伝的な異常により、セロイドやリポフスチンなどの脂質酸化物が細胞内に蓄積し、神経細胞が侵される病気です。
    遺伝性好中球減少症(TNS)
    抹消血中の好中球の顕著な減少や骨髄における骨髄系細胞の過形成を特徴とします。致命的な感染症にかかりやすくなります。
    肥大型心筋症(HCM)
    心筋が厚くなり、心臓の内腔が狭くなることで血液の循環不全を起こします。
    MYBPC3遺伝子の特定部位の変異が関連していることが示唆されています。
    犬では症例は比較的少ないですが、シェパードやドーベルマンでの報告例があります。
    イベルメクチン感受性(MDR1)
    薬物の体内動態に関係するタンパク質「MDR1(P-糖タンパク)」をコードする遺伝子に変異があり、イベルメクチンの投与によって、傾眠や運動失調などの神経毒性の副作用を呈します。
    フォンウィルブランド病(VWD)
    フォンウィルブランド因子の質的・量的な異常から1次止血が障害されることによって引き起こされる遺伝性の止血異常症です。
    コリー・アイ(CEA)
    脈略幕の局所的な発育不全や網膜内の過剰な血管新生などを特徴とする遺伝性の眼疾患です。症状には個体差があり、一生を通じて無症状の場合もあれば、失明に至る場合もあります。
    GM1-ガングリオシドーシス(GM1)
    β-ガラクトシターゼ活性の遺伝的な異常により、脳をはじめ全身の臓器に異常をきたすライソゾーム病です。
    股関節形成不全(HD)
    股関節の形が生まれつき不完全なため、後ろ足の動きに障害がでて、歩き方や座り方に異常がでます。また股関節炎を起こすこともあります。

    遺伝子検査の目的

    遺伝子検査をされるとすれば、その目的は、遺伝病を発症する可能性を知り、もし可能性が高ければ、そうなった事態に対する効果的な対策や予防を行い、いざの場合の心準備を整えるために行うということになります。

    しかし、誰もがそのように考えるわけではありませんし、考えなくてはいけないということもありません。

    「気にはなるけど、それを知ることも怖いので、もし遺伝病になってしまったら、その時はその時でベストを尽くす」とお考えになる考え方も何もおかしなことではありません。

    また、遺伝子異常の可能性はあまり考えられない確かなブリーダーさんから譲り受けたから遺伝子検査までする必要はない(これも一概には言えません)と考えられるケースも少なくはありません。

    それでも安心だけしたいから受けてみようと考えられる飼い主さんもおられるでしょう。

    どちらにしろ、最悪なことは、遺伝子検査を受けた結果、何らかの遺伝病の可能性が高いと出た場合に、「それなら飼うことを放棄しよう」というようなリアクションを取られることです。

    遺伝子検査のスタートライン

    • それぞれの遺伝性疾患の対象犬種となっている場合、愛犬の特に気になる遺伝性疾患があれば、それだけを選んで検査することができます。
    • すでに発症している疾患や対象犬種でない(発症する確率は極めて低い)疾患などの検査は特にする意味がありません。

    犬・猫(ペット)の遺伝子検査を実施している企業・団体

    実際の検査を行うのは福岡県立飯塚研究開発センター内にある有限会社カホテクノ。

    検査機関自体はパイオニアでもあり、公からの新技術支援にも認定されていることも確かであり、代表者は研究者として実績のある方であることにより、ビジネス自体の信頼性は問題なし。

    ただ、販売元となる株式会社DNA FACTORは、カホテクノとの業務提携によって初めて一般向け販売をした先行者であるからと思われますが、検査方式による制度の差が価格差の要因であると説明されたとしても価格がべらぼうに高いと感じます。

    Panasonic出身の方を中心として、関連する専門分野の優秀な人材によって起ち上げられた会社で、自社で検査すると見受けられます。

    検査と販売が一体であり、専門家が母体であるが故に、この価格が妥当な価格であると考えられますし、商売人が介在しない分、信頼性にも勝ると考えます。

    Orivetはオーストラリアの遺伝子検査機関のようで、その検査は世界的にも認識され、検査結果はアメリカのOFAにも登録が可能とのことですから間違いはないでしょう。

    但し、オーストラリアで検査する分、検査結果が出る時間は他者より遅れることは否めません。

    犬種ごとの遺伝疾患

    進行性網膜萎縮症 コリー・アイ(CEA) 緑内障 変性性脊髄症(DM) セロイドリポフスチン症(CL) GM1-ガングリオシドーシス(GM1) イベルメクチン感受性(MDR1) 遺伝性好中球減少症(TNS) フォンウィルブランド病(VWD) 肥大型心筋症(HCM) 股関節形成不全(HD)
    柴犬
    トイプードル
    シーズー
    ダックスフント
    ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
    チワワ
    ポメラニアン
    ヨークシャ・テリア
    ボーダー・コリー
    コリー(ラフ・スムース)
    ゴールデン・レトリーバー
    ラブラドール・レトリーバー
    ジャーマン・シェパード
    シェットランド・シープドッグ
    フレンチブルドッグ