プチ機械設計者講座001「SS400とSPCC:まずは材料のサイズを知る」

鋼板の素材の寸法は決まっている

バラシ(与えられた組立図を見て、構成する全ての部品を製作できる部品図に展開していくこと)が出来るレベルになるためには、何をおいても先ずは材料のサイズを覚えることです。

覚えると言うより、実際はやっていくうちに覚えるものですが、オペレータの場合はあらためて教えられていない場合があります

ここで【サイズ】と限定したのは、オペレータからプチ設計者へのランクアップの位置付けによる限定です。
用途に関する常識などは、追々この講座で説明していきます。

一挙には設計者にはなれませんし・・・。
また、物性や強度などは設計者のテリトリーであり、あまりでしゃばらない方が賢明かと思うからでもあります。

担当者によってはけったいな人も居ます。
でしゃばったら気分を害される人も確実に居ますよ。
これは、余談になってしまいましたが、担当者を立てながら、何気なく提案するスタイルがベストです。


それでは、本題に入っていきましょう。
ともかくも、使われる材料は、ほとんどがです。

先ずは、基本中の基本になる、
材料記号がSS400SPCCと呼ばれる軟鉄をしっかりと整理しておきましょう。

経験者は既にご存知と思いますが、イヤと言うほど耳にする『ブラケット』とか『プレート』とかの名称がつく部品は、たいがいがこのSS400SPCCです。

これら『ブラケット』 『プレート』の素材になるのは、【フラットバー】です。
その直訳通り、平板のことです。
この【フラットバー】は、材質SS400になります。
機械屋さんなら【フラットバー】を口にしない日はないでしょう。

と言うことは、
【フラットバー】を知っておれば、半分はプチ設計者を達成したようなものだということかもしれません。

この【フラットバー】に限らず、SS400鋼板の素材の寸法は決まっています。
厚みとしては、4.5mmの次は6mm,9mm,12mm,16mm,19mm・・・というようにこの間の数字を厚みとする素材はありません。

但し、こう書いてしまうと、実用的ではあっても正確ではありませんので、「間違っている」とクレームをつける人が必ず出てきます。

実際には8mmの厚みなども存在しますので、私が上で記載した厚みの基本サイズ以外もあるかもしれないことは頭に入れておいて、必要時に自身で調査されてみて下さい。

私の中では、「厚み8mmもあるけれど、私は基本的に使わない」ということです。
「8mmの鉄板使おうか」という言葉は今まで聞いたことはありません。
そういう意味から、意識から外しておいても特に問題は無いという意味での言葉と受取っておいて下さい。

『何故飛び飛びの値か?』・・・作っていないからです。流通量が僅少だからです。

キリがないですものね!
そのために、日本工業規格JISがあるのです。

一般的にSS400鋼板は売られている素材の単位が914mm×1829mm[3×6(サブロク)の鉄板と呼びます]や1219mm×2438mm[4×8(シハチ)の鉄板と呼びます]などのサイズになります。

注;「サブロク」や「シハチ」というのは、フィートを単位とした呼び方です。

が、みなさんどうですか。
このような鋼板を使うような大きなサイズの部品はそんなにたくさんはありません。

家という大きな器の中に、家財道具というこまごました部品が収められている感じとよく似ています。

機械というのは、多くの小部品や中部品で構成されます。
数で言えば、圧倒的に家財道具が多いわけです。
ならば、これらの部品を作るために、いちいちこんな大きな鋼板から材料取りするのは非効率的ですね。

そこで、幅・奥行・厚みをシリーズ化した素材を流通させておくととても便利ということになります。
これが、「フラットバー」です。

フラットバーの幅としては12mm,13mm,16mm,19mm,22mm,25mm,32mm・・・
この間の数字の幅の素材はありません。
正確に言えば、普通に流通していて「問題なく使える厚みとしては」です。

注)あくまで『鉄』ですよ!
ステンレス、アルミにも同じように「フラットバー」がありますが話が全然違います!(後述)

こんなことだけでも知っていれば、大きく景色が変わってきますよ!
『これは、FB16×6を使えばいいな!』
『こちらは、FB32×19を使えばいいな!』

例えば、誰かが重要でない単なるプレートに穴を開ける場合、
30mm×87mmの厚み5mmで設計したとすると、担当者は言います。

『おたく素人?? 何故30mmにするの? それに厚さ5mmやけどこんな部品で幅も厚みも削れっちゅうことかいな?
32mmの厚み6mmのFBで設計すれば、穴を開けるだけで済むやろ!』と・・・

そういうことなんですね! 30mmの厚み5mmと図面にあれば、職人さんは、その通り32mmから2mm削り落し、厚みも5mmになるように6mmから(場合により9mmから)フライス盤でわざわざ加工するわけです。

何にも大切な役目をしない部品は、素材そのまま使うのが効率的です。
ただ、素材のままでは曲がっていますので、重要な部品は加工して、取り付けるものがゆがまないようにするわけです。

重要な部品とか主要な部品とか、どこで判断すればいいの?
これは、別の項目で説明致します。

下にフラットバーの主な素材サイズ表を記します。
通常、幅×厚みで表現します。

例えば、厚みが9mmで幅が50mmの場合、『フラットバー50の9』と言います。

図面にはいちいち表現しませんが、ただ単にフラットバーに穴が開けてあるだけの部品などには、記載されていると親切だということです。
図面上で表現する場合は、通常『FB50×9』というように表現します。

これは、材料を表すものではありませんので、単なるプレートだけの部品だからといって、材質欄に得意げに『FB50×9』とだけ書かれませんように!
あくまで材質は【SS400】ですよ!

厚み コメント
3 9,13,16,19,22,25,32,38,44,50 厚み3mmのFBがあることを知っておくと便利です!
4.5 9,13,16,19,22,25,32,38,44,50 コメント
6 9,13,16,19,22,25,32,38,44,50,65,75,90,100,125,・・・ よく使うところです。
8 25,30,32 私は使ったことがないですが、知っておくと便利です!
9 12,13,16,19,22,25,32,38,44,50,65,75,90,100,125,・・・ よく使うところです。
10 25,30,32,38,40,50,60,65,75,90,100 私は使ったことがないですが、知っておくと便利です!
12 16,19,22,25,32,38,44,50,65,75,90,100,125,・・・ よく使うところです。
16 19,22,25,32,38,44,50,65,75,90,100,125,・・・ よく使うところです。
19 22,25,32,38,44,50,65,75,90,100,125,・・・ よく使うところです。
22 32,38,50,65,75,90,100,125,・・・ このぐらいの厚みからは、少し頻度は減ってきます。
25 32,38,50,60,65,75,90,100,125,150,・・・ このぐらいの厚みからは、少し頻度は減ってきます。

数字の並びは、どの厚みに対しても決まった数字でそれほど複雑ではないですね!
いちいち材料表見なくても、慣れれば反射的に出てきますよ。
125の上は??とお思いですね。

25飛びが続くのかと言えば、そうではなく、ちょっとひねくれます。
125の次は150,そしてその次は175ではなく180と来ちゃいます。
そして、200,230,250,280,300となります。

ただ、この間には、190や240,285も作られています。
また、6mm,9mm,12mmといったよく使われる厚みの場合は、160,165,170,175というように5mm飛びで市場には出ています。
このあたり(広い幅なので広幅FBと呼ばれる)は、あまり気にしないでいいでしょう。


次は、SPCCについてです。
冷間圧延鋼板の記号です。
3つ目のCはcoolのc:即ち冷間圧延加工を施した鋼板の意味です。

製鉄設備にもあまり縁がなかったので、この記号が何の略なのか考えたこともありませんが、今考えるとsteel plate coil に工程の記号を入れたものなのでしょう。

昨今、フジテックのエレベータ(実は、私の最初の古巣でもあります)で問題になったSPHCとは加熱炉から出てきたスラブを圧延したもので、冷間圧延工程を踏まないものです。(だから3つ目がcではなくhotのh)
余分な工程を踏まない分、SPCCより安価ですね。

自動車業界ではSPHCを使うことも多いようですが、私の主たる電機業界ではあまり図面では見たことがありません。
ここまでに書いたことは、別に覚える必要はありません。

皆様には、SPCCのサイズに関して次のことだけ頭に入れておいて下さい。

厚みは1.6mm,2.3mm,3.2mmがあります。
4.5mm以上はSS400の方に入りますし、[ここ重要です!]
1.6mm以下は実際上あまり使う機会はありません。
一つだけ言っておきますと、1.6mmの下は1.2mmです。

SPCCは、主には、センサーなどの小物を取り付ける金具としてや所謂、鉄板(鋼板)カバーとして使われることが多いです。

カバーとして使う場合は1枚のプレートとして使うこともありますが、寸法が大きくなると重い割にはペランペランなものです。
たいていは曲げ加工をして使うことが多いですね。

小さなブラケットなどで曲げ加工しますと、皆さんはきっとその頑丈さにビックリされると思いますよ。


CADソフトは自分が使いやすいとか気に入ったというだけでは選べませんよね。
クライアントがあってこその仕事ですから、クライアントの機種に合わせることが第一となります。

基本的には、建築・土木系も機械系も、AutoCadもしくはAutoCad LTは必修科目の領域でしょう。
建築・土木系では無料のJw-cadを使うところも多いと聞きましたが、やはり大手をクライアントとして持つ場合は、そういうわけにはいかないでしょうね。

機械系の場合は、昔は使用ソフトも本当にバラバラで分散していましたね。
でも、徐々にAutoCadにシフトしてきている傾向が強いように見受けられます。
その中で、フォトロン社の図脳Rapidを使っているところは多いのではないでしょうか?
僕も、中堅の会社のある部署に出向していたときに使わせてもらいました。

これから仕事を探す場合も、クライアントを探す場合も、AutoCadの経験があれば、門戸が広がりますね。
機械系も、やはり使い方に慣れると最も使いやすいのがAutoCadだと実感します。
僕も、最後の方はAutoCad LTしか使いませんでしたからね・・。

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