■第4章:食欲と食事の処方箋

5.糖質を計算してみる!span>

グリコーゲンの貯蔵タンクから出発して、資料2の統計事実を実際に計算してみましょう!

肝グリコーゲンの貯蔵タンクの容量は300~400 [Kcal]です。

3回の食事前にはemptyになり、それぞれの食事で満タンにしておくとして、1日に900~1,200 [Kcal]の糖質を消費できるという計算となります。

[資料2-1]の20-29歳男性と女性が摂取している実際の糖質平均摂取量が1,205[Kcal]と926[Kcal]ですから、まるで打ち合わせしたかのように驚くほどぴったりと一致しますね。

※筋グリコーゲンは、肝臓から出ていった分で筋肉内での余剰分が貯蔵されるものですから、併せて考えると二重計算されることになりますので計算に入れる必要はありません。

[資料2-1]の自己申告が正しいとすると、肝臓の貯蔵タンクを3回の食事で満たしておけば、身体活動レベルⅠ程度の生活ですとピッタリだということですね。

しかし、いくら体を動かさない時代だと言っても、現実には、サラリーマンにしても主婦にしても、もっとエネルギーは消費しているはずですね。

実際、この平均的なデータのほとんどの人は平均的な身体活動レベルⅡと考えられます。

とすると、その差分は食事からでは供給されていないことになります。
即ち、体にとっては、自ずと「食事制限」された状態になっていると言えるでしょう。

さて、どのぐらいの「食事制限」になっているのでしょうか?

実際の生活においては、サラリーマンであろうが主婦であろうが、多くの方が身体活動レベルⅡと考えて話を進めましょう。

[資料2-2]から、身体活動レベルⅡの1日の推定エネルギー必要量は男性で2,650[Kcal]、女性で1,950[Kcal]でしたね。

この全推定エネルギーのうちの糖質摂取比率を[資料2-1]での結果56%を採用し、
推定糖質必要摂取量を、

男性で2,650×0.56=1,484[Kcal]
女性で1,950×0.56=1,092[Kcal]
と設定しましょう。

この設定値と[資料2-1]で得られる実際の摂取量統計データとの差は、

男性;1,484-1,205=279[Kcal] ・・・推定エネルギー必要量の18.8%不足
女性;1,092-926=166[Kcal] ・・・推定エネルギー必要量の15.2%不足

これが、データ上、糖質における「食事制限」と同じことになっていると考えられます。

次に、[資料2-1]のデータが過小申告であることを補正して考えてみましょう。

男性の糖質摂取量;1,205×1.16=1,398[Kcal]
女性の糖質摂取量;926×1.06=982[Kcal]
と補正します。

推定糖質必要摂取量との差は、
男性;1,484-1,398=86[Kcal] ・・・推定エネルギー必要量の5.8%
女性;1,092-982=110[Kcal] ・・・推定エネルギー必要量の10.1%

この場合でも、この程度の糖質における「食事制限」をしていることになりますが、男性と女性で比率が逆転しています。
女性が糖分摂取に敏感になっている様が伺えますね。

いずれにしても、身体活動レベルから推定される糖質摂取量も不足しています。
ですから、実際には糖新生によって糖質の補充が結構行われていることが推定されます。

「食事制限」に関する定説では、

  • 糖質が不足すると筋肉を分解し始めます。(糖新生 アミノ酸→糖質)
  • 即ち、体は筋肉を食らって糖質に変えることで、基礎代謝を落とします。
  • 結果、減らした摂取量以上に消費エネルギーが落ち肥満方向に進みます。
  • 当初減った体重(大部分は水分)がリバウンドしてきます。

即ち、昔の平均的食事摂取量以下であった人の層の一定が、5年後・10年後の今、肥満者の数に吸い込まれてしまったことで、肥満化の統計傾向が出ていると考えねば説明が付かないと考えられます。

「食べなさ過ぎも将来の肥満に繋がる」というのが重要な第1のポイントです。

そこで、「だから、もっと食べなさい」という言葉で単純に指導されることもあります。
このケースには実に適切なアドバイスに思えますが、それほど単純でもないんですね!

仮に、平均的な20-29歳男性と女性が、ちょうど三食で均等にこの不足した分を補う量を食べたとします。

実に消費に見合った適切な摂取と思われますが、果たしてそうでしょうか?

過少申告補正前の統計上の摂取量では、3回それぞれの食事で、肝臓は現状の食事でちょうど糖質を満タンにするだけに十分な量だったことを思い出してみてください。

肝グリコーゲンの貯蔵量はそれほど多くないんです。

これが、ダイエットを難しくさせている元凶であるということはかなりの確率で正論です。(もう一つは、糖質はいったん脂肪になると糖質には後戻りできないという点)

「もっと食べなさい!」を信じて食べたとて、肝臓の貯蔵はすでに満タンです。
さて、どうなるかと言えば、今は余っているからとりあえず中性脂肪として貯えておくことにするしか手がありません。

糖質は即時的な代謝に近いですから、そのときそのときに応じて過不足を調整することがベストだということは、理論から導かれる最も真実に近いことだと考えます。

その意味で、過少申告補正前の統計上の平均摂取エネルギーが3回の食事で均等に摂られているのであれば、糖質からみれば実に理想的な摂り方に近い摂り方なんですね。
しかし、現実には問題点が2つあります。

現実には朝食を抜いたり、昼は粗食で夜は豪華だったりしがちだということが1点。
こういった摂り方は、糖質が余るときと不足するときを作り出しますから、ジャストフィットとは程遠い摂り方になっています。

そして、もう1点は、トータルの必要摂取量から見れば、過少申告分を補正したとしても不足しているという点です。

摂取エネルギーが足りないからと言って、単純に多く食べればよいものではないということがお分かりいただけることと思います。

ですから、上の例では、糖質不足分を3食で均等に補充しようが、3食のうち1食だけで補充しようが、そのときには過分であるという点で同じことになるのです。

1日に必要な糖質量として最適であっても、その時々のニーズには対応できていない。
このことこそが問題なんですね。

では、どうすれば最適か?

単純に言えば、1回当たりの摂取量をやや減らして、その替わりにもう1回食事を摂ればかなりジャストフィットになります。

もっと言えば、食事間隔に比例した配分(活動が時間軸でコンスタントとして)が最善ということです。

身体活動レベルⅡの活動をしていれば、1日の推定エネルギー必要量から、理論的には男性で2,650×0.56=1,484[Kcal]、女性で1,950×0.56=1,092[Kcal]の糖質が必要なことは確かです。

そうなると、男性では1,484÷400=3.71[回] 、女性では1,092÷300=3.64[回]
即ち、現状レベルの食事であれば約4回、均等な間隔(厳密には就寝中の時間を補正の上)で摂取するということが、肝グリコーゲンのemptyにジャストフィットした摂取となり、理想的だということです。

逆算していきますと、推定される1回の食事当たりの糖質必要摂取量

  • 男性;1,484÷4=371[Kcal]
  • 女性;1,092÷4=273[Kcal]

ということになります。

肝グリコーゲンの貯蔵量と実際に今必要な分に使われるボリュームも必要であることも考えれば理想的な摂取の仕方と言えるでしょう。

■閑話休題

著者の親やその兄弟たちは、そりゃぁ驚くほどたくさん食べていました。
(米や野菜が主ですけれどもね・・・)
百姓でしたから朝暗いうちから起きて田畑で一仕事。

重労働だからということもあるでしょうが、前小昼・昼食・小昼・夕食と小まめに栄養を摂ったそうです。

小まめにジャストフィットで栄養を摂取していたことがミソだったと言えます。

いくら糖質を摂っても、次々とリアルで代謝されていったところがミソでしょうね。
これこそが、本物の「食欲」という奴です。

ここまでのことを、もっと分かりやすく表現してみましょう。

皆さんは、会社の食堂、学食、あるいは近くのレストランや喫茶でランチを食べますね。
(手持ちのお弁当という方、なかなか良い心がけですね)

ランチメニューのカロリーを見ると、大抵が600~900Kcal程度ではないでしょうか?
その内、糖質の比率が60%と仮定しますと、糖質量では360~540Kcalですね。

900Kcalのランチを取った人は、肝グリコーゲンの貯蔵量を大幅に超えています。
たとえ最大の貯蔵タンク量400Kcalをこの人が持っていたとしても、140Kcalあぶれます。

この140Kcalは、どこに行くのでしょう?
そうです、中性脂肪になっていくしかありませんね。

ですから、600 Kcalのランチを食べた人も900Kcalのランチを食べた人も、同じ頃にお腹が空いてくることに変わりはなく、中性脂肪を貯えたかどうかだけの差が残るのみです。
いくらたくさん食べても、空腹感までの時間が長持ちするわけではないのです。

男性で、推定必要エネルギー量2650Kcalを摂取しようとするならば、900Kcal相当の食事を3回摂るよりも、600Kcal相当の食事を自然な空腹感に応じて4回摂り、おやつか飲料で不足分をまかなう方が賢明だということになります。

筆者がサラリーマン時代の残業前に、揚げたてのドーナッツを2個口にしていたことは、カロリーが高かったにもかかわらず、以外に質・量とも正解だったのかもしれません。
不規則な食事ではありましたが、23時や24時での夕食でバカ食いすることだけを阻止できただけでも正解だったと思えます。

むしろ、19時や20時という中途半端な帰宅時間の場合、それまでの空腹を我慢していた分をバカ食いすることで解消することの方が良くないことなのですね。

これがなかなか出来ない理由は、本来私たちが持つメカニズムが発する満腹感ではなく、胃の膨張感による満腹感(偽の食欲)に支配されているというところにあります。

間食や飲料で意外にカロリーを摂取していることと併せて、糖質ジャストフィットの理想的な食事配分計画を立ててみられることをお勧めします。

ここで、

時々は、ファミレスなどで外食もするし、家でだって美味しい物は食べてるよ!
誰だって、特に夕食の場合なんて、そうじゃないの?

でも、そういうものって、見るとたいがい800Kcal~1,300Kcalあるわけよ。
糖質が余っちゃって中性脂肪になるから止めろと言われたら、楽しみが無くなるよ!

という声が上がることでしょう。

そうですよね。
私たちは誰でも、家であってもファミレス程度のカロリーを持った夕食を食べていることが多いですし、食べたい気持ちも強いですよね。

ですから、現実には、ほとんどの人が1回の食事で糖質を余らせ、いったん中性脂肪として溜め込んでいると考えられます。

同じカロリーを摂取したとしても、溜め込む量は、その人が持っている肝グリコーゲンの貯蔵容量によって相違してきますが、いったん中性脂肪として溜め込んでいる事実はほとんどの人に共通していると考えられるんですね。

では、この問題を解消するにはどうすればいいのか?

簡単なことです。

いったん溜め込んだ中性脂肪を使うような活動をすればいいというだけの話です。
文字通り「いったん」の貯蔵で済ませるべく、その日の内に使い切るような日常的な活動活性を持っていればことは解決するのです。

重要なのは、【日常的な活動活性】ということで、これが無いと日々貯蔵に回されるばかりになってしまうということです。
気がついてから解消しようとすると、とてつもない処理量が待っていることになります。

ですから、1日のエネルギーの出納さえ辻褄を合わせておけば問題が回避できるのです。
お金の性質とは真逆に、エネルギーの摂取は無意識の内に容易くできますが、消費は意識してすらコツコツとしかできないことを深くかみ締めておくことが大切です。

【美味しい物を食べたければ、その他の食事を粗食にして辻褄を合わせなさい。】

【美味しい物を食べたければ、それに見合って動きなさい。】

この一言に尽きるのです。

ことのついでに、脂質も見ておきましょうか。

[資料2-3]
20-29歳男性:摂取エネルギー平均:2134[Kcal]
脂肪摂取エネルギー 64.4[g]×9.3[Kcal/g] = 599.0[Kcal]
脂肪摂取比率:28.0%

20-29歳女性:摂取エネルギー平均:1,652[Kcal]
脂肪摂取エネルギー 52.9[g]×9.3[Kcal/g] = 492.0[Kcal]
脂肪摂取比率:29.8%

※栄養として摂取する場合は、9.3[Kcal/g]で計算するのが正当です。

ここで、過少申告の補正をしておきますと、
男性の脂肪摂取量;599×1.16=695[Kcal]
女性の脂肪摂取量;492×1.06=522[Kcal]
と補正します。

この全推定エネルギーのうちの脂質摂取比率を[資料2-3]での結果28%,29.8%ではなく、
適正比率としてともに25%(20~30%)を採用してみますと、
脂質必要摂取量は、
男性で2,650×0.25=663[Kcal]
女性で1,950×0.25=488[Kcal]

従って、実際の脂質摂取量との差は、
男性;695-663=143[Kcal]  推定脂質必要摂取量の21.6%
女性;522-488=34[Kcal] 推定脂質必要摂取量の7.0%
が、実質上、脂質における「過剰摂取」と同じことになっていると考えられます。

私たちが活動している以上、脂肪はいつでも燃やされています。
しかし、脂肪はやはり非常時のときに貯えておくという性格が強いものです。

常々、糖質と競合してエネルギーを産生していますが、主には空腹時に燃やされることが多くなります。

「空腹」の感覚を感じないほど、いつも何かを口に入れていることは、脂肪を燃えさせないように燃えさせないようにしているということになるのです。