■第4章:食欲と食事の処方箋

3.前門後門から忍び寄る肥満

さて、過少申告があるとは言え、年々、食事量がダウンしている事実は変わりません。
それでも肥満が増え続けているということは、他にも別の理由がありそうです。

食事摂取量の減少傾向は、肥満を回避しようとする方向性が如実に現れているデータと言えますが、反って消費エネルギーダウンをも誘引する現象に繋がってしまうようです。
極端な食事制限だけに依存する逃げのダイエットは結局追いつかれるということなのです。

論理的には、攻めながらのダイエットしか道は無いということになりますね。
かと言って、単に食事量をアップしても、やはり太ってしまうことも現実です。
「攻めながら」ということは単に食事量のことではないことも明白ですね。

ここから帰結されることは唯一つ!
摂取エネルギーと消費エネルギーが釣り合っていないということです。
過ぎたるも足らざるも、それが肥満の引き金になるということです。

ダイエットを完成させる方法は、少なくとも自分の生活で消費するエネルギー分はしっかり食事で栄養を摂り、その摂取・消費エネルギーともに維持していくことです。

もちろんカロリー収支だけで処理できるものではないことも承知していますが、あくまで平均的な目安として私たちが総論的に活用できる有効な手立てには違いありません。

ですから、食事量に比して活動レベルの低い人は、運動とまでは言わずとも生活活動を上げていかねば、肥満に一歩一歩近づくことになりますし、同様に、食事量に比して活動レベルの高い人は、見合った食事をしっかりと摂っていかなければ、これも矛盾が何らかの形で出てくることになります。

もう随分と前からですが、「隠れ肥満」という言葉が表に出て来るようになりましたね。
これは、この言葉通り外見上は肥満に見えないのに、もっと科学的に言えばBMI値は標準範囲に入っているのに、実は肥満であるという状態を言います。

この尺度は体脂肪率で語られます。
体脂肪率は年齢にもよりますが、男性では11~22%、女性では21~35%が適正値と言われており、隠れ肥満の目安は成人男性では25%以上、成人女性で30%以上と考えておかれるといいですね。

体脂肪計、体組成計は今や私たちの生活必需品として普及おり、体脂肪率はもとより、内臓脂肪レベルまで誰でも気軽に測ることができます。

ただ、日本製品の機器の精度は間違いなく高いのですが、多くは生体インピーダンス法といって身体と機器間でできる回路に微弱電流を流し、その電気抵抗から測るものですから、測る時の体の回路に当たる部分の水分量でバラつくものであることを知っておきましょう。
(このお話はまたの機会に別途させて頂きます)

基本的に、隠れ肥満は皮下脂肪よりも内臓脂肪として蓄積される場合が多いそうです。
そして、多くの統計データによれば、隠れ肥満の割合が高いのは、

  • 食事制限をしている人
  • 運動習慣がない人
  • 体力が低い人

という結果が出ています。

この結果からも、特に【食事制限 → 基礎代謝の低下(筋肉の減少=体力低下)→ 食事復活 → 対基礎代謝過剰→リバウンド】という悪循環が待ち受けていることが想像できます。

一方、運動するだけで痩せようとしても、今度は運動することでお腹が減り、反って摂取エネルギーの方が上回ってしまったりしがちです。

これは同じカロリーであっても、食事で摂取するのはいとも簡単だけれども、運動で消費するのには大変な運動量が必要であるという悲しい法則が存在するからです。

例えば、体重60Kgの人が一般的なジョギングを30分した場合に消費されるエネルギーは220Kcal(Mets法で計算)ですが、お腹が減ったとミスタードーナッツ オールドファッションを余分に食べれば290Kcal摂取することになりますから、収支としては70Kcalオーバーということになります。

いやいや、バニラアイス1本食べただけでも収支オーバーです。

「運動しているのに痩せない」というあちこちで聞かれる嘆きは、この辺りに主な原因がありそうですね。
それで、モチベーションも下がり、結局食事制限に走ってしまうのかもしれません。

「食事制限だけで痩せよう」と決意しても、【食事制限 → 基礎代謝の低下(筋肉の減少=体力低下)→ 食事復活 → 対基礎代謝過剰→リバウンド】という悪循環が待ち受けます。

「運動するだけで痩せよう」と決意しても、「運動したぞ~感」には不釣り合いな程小さな消費カロリーがモチベーションや食欲に襲いかかります。

まさに「前門の虎、後門の狼」というところです。

隠れ肥満の特徴である「運動習慣がない」「体力がない」は、そもそもが基礎代謝が小さく、それほど食べなくても維持できる状態でありながら、知らず知らずの内に内装脂肪が蓄積しているということと考えられます。

いくら体形が標準であっても生活習慣病と結びついて来ますから要注意ですね。
ただ、食べても

これらから考えると、最小の怠惰な生活とそれに見合った最小の食事という生活スタイルではなく、ある程度活発な生活活性の上にこれに見合った食生活をするスタイルが最も健康的であり、そのこと自体がダイエットになっているという結論に達します。

何故なら、最小の食事というものは、たとえエネルギー収支は合っていたとしても、絶対量の少なさから栄養バランスも取りにくくなる以上に、何らかの栄養素が不足してしまうリスクを大きくするからです。

逆に、そういった栄養不足が逆に肥満に直結しているケースも、最新の研究では報告されているようです。

要するに、極端な「食事制限だけで痩せよう」「運動するだけで痩せよう」だけが先行すると、エネルギーの収支バランスを崩し、栄養不足をも起こし、特に前者は元の木阿弥以上に悪い状態に遷移してしまいます。

総論的には、

  • 運動消費エネルギーと釣り合った摂取エネルギーを摂ることこそが基本
  • 但し、生活活性を上げる方向でこれを実現しなければならない

ということです…怠惰が最大の敵なのかもしれませんよ!!


本講座は、引き締まった美しい体を作るシェイプアップ(一般的に「ダイエット」と呼ばれているもの)に関する正しい理論と手法を、誰にでも分かりやすく紐解くことを目的としています。

ご存知の方は少ないかもしれないWとB(読まれていく内に正体を現します)にスポットを当て、世にある多くのダイエット手法とは代謝的に全く別の根拠によるアプローチをご紹介しますが、ダイエットの本道は【過剰にならない一定の糖質をジャストインタイムで摂取する】ということ以上でも以下でもないということをバラシておきましょう。

誰にでも理解しやすいようにまとめてはいますが、一方で、医学系・看護系の大学新入生レベルには今後の勉強の基本予習・イメージ作りとしても有益ではないかと思います。