■第4章:食欲と食事の処方箋

2.ある日の摂取エネルギーから

2012年、ファッティーエ・ヒーマンはまずまず満足な日々を送っていた。
それと言うのも、自らのヒーマン幾何学を駆使して日本肥満化計画の重責を順調に果していたからである。そう!彼は、魔法復旧協会食料破壊部の日本支部長なのだ。

まずまずと言ったのは、やはり、まだまだ日本を肥満大国の仲間入りにするまでは果せないでいるからだが、そう遠くない日に果せるメドは立っているとほくそえんでいる。

人間の手から魔法使いの手に自然と権力を取り戻すことを目的とする魔法復旧協会にとって、世界肥満化による人間力の衰退加速化は主要な戦略の一つであり急務なのだ。

ただ、これは表向きの話で、実は彼のヒーマン幾何学などは何の役にも立っていなかった。
ひとえに、現地採用したアシスタント四方山 花子(よもやま はなこ)の巧みな四方山話術が功を奏していたのである。

日本人にとって現代に深刻な陰を落としつつある肥満の原因は、全てが四方山花子の四方山話術から巧みに巻き散らかされていたことを誰も知らない。

【要するに食べ過ぎなんです。
日常の活動レベルに不釣合いに食べ過ぎているだけの話なんです。
魔法使いのややこしい論議で真実を煙に巻かれてはいけません!】

摩夢化 計子(すりむか けいこ)の講演に埋め尽くされた会場がどよめいた!
ただ、この女史が魔法使いではないことは分かっていても、信用に足る人物なのかどうかは分からない。

誰もが、「魔法使いに騙されるな!」という正義の味方を表すスローガンですら悪用する人々が居ることをも知り始めていたから疑心暗鬼になるのは当然だった。
摩夢化 計子(すりむか けいこ)の講演は続いた。

実は、厚生労働省の統計で公表されている一人当たりの1日のエネルギー摂取量が非常に少なく悶々としていました。

「これほど摂取エネルギーが少ないのに、そして、年々減少しているのに、何故、肥満が増えるのか?」と・・・。

ここには、筆者も最初の執筆の際には見落としてしまっていたことがあったのです。
それは、食事摂取量の自己申告においては、どうやら過小申告されている傾向があるのではないかということを見落としていたのです。

そう考えて調べていきますと、ある食事量の調査では、【摂取エネルギーは、男性では16%、女性で6%少なく申告されていた】との報告が2007年に日本の研究者たちによって発表されていました。
出典は、下記のページからご覧いただけます。

これを、厚生労働省の調査結果に当てはめてみると、

  • 20-29歳男性:摂取エネルギー平均:2134 × 1.16 = 2475[Kcal]
  • 20-29歳女性:摂取エネルギー平均:1652 × 1.16 = 1751 [Kcal]

と、肥満状況を論理的に説明するには、かなり辻褄が合う数値になってきます。

やはり、自分が思っている以上に多くの栄養を摂取しているということ、即ち、過少申告してしまう傾向があるのは確かなようです。

そこで、これを確認する意味もあって、筆者自身のある1日のエネルギー摂取量を具体的に洗い出してみようと思いつきました。

条件は、

  1. おやつを1品食べること
  2. 飲料は最近の自分のペースで摂ること
  3. 昼と夜は普段の食事のボリューム・質に近い食事を外食すること

の3点で実施してみました。

ちなみに、それまでの筆者は、お菓子や飲料のカロリーは桁も分からないほど全く無知で無頓着な状態でしたので、今回は、飲んだ缶を持ち帰って次の日に全てを集計しました。

①に関しては、年老いた親との付き合いでおやつを食べる習慣が付いてから太り出したと自己分析していること。
また、サラリーマン時代(30歳まで)は、帰宅が毎日深夜になるため、残業前に近くの店に売っている揚げたてのドーナッツを2個かじることが習慣化していたこと。

②に関しては、もともと水分を欲しがる体質で、いけないと思いながら外に出ると自販機でついつい缶コーヒーやジュースを買って飲むクセがついてしまっていること。

これらの影響を、ちょっと数値的に見てみたいという思いに駆られて条件としました。
結果は、やはり、自分の思い込みとは少々異なっていることが判明する面白いものでした。

③に関しては、言わずもがな、摂取エネルギーを明確にするためです。

では、見ていきましょう。
男性58歳の例で申し訳ないのですが、誰にも参考に出来ることが見えて来るのではないかと思います。

【朝食】

Pasco超熟食パン5枚切り1枚:199Kcal
雪印バター 4g:30Kcal
生野菜サラダ(ドレッシング掛け):80Kcal
大山山麓 牛乳 1杯 200ml 135Kcal
[普段は自宅で砂糖抜きカフェオレ カップ1杯 71.5Kcal]

朝食 計444Kcal

【昼食】

ガスト チキン唐揚げネギ甘酢ソース和膳:748Kcal
砂糖抜きフレッシュ入りコーヒー カップ1杯:20Kcal

昼食 計768Kcal

【間食・飲料】

ジョージア(牛乳22%)カフェオレ 250g:112.5Kcal
ミニッツメイド ピンクグレープフルーツ 280g :132Kcal

ミスタードーナッツ オールドファッション:290Kcal
自宅で砂糖抜きカフェオレ カップ1杯:71.5Kcal
お茶 3杯:約6Kcal

間食・飲料 計612Kcal

【夕食】

和食のさと さと和膳:810Kcal
[踏みとどまったバニラアイス:255kcal]
お茶 3杯:約6Kcal
自宅で発泡酒 サントリージョッキ生 350ml 122.5Kcal
(普段は チューハイと交互 例:ほろよい 梅酒 350ml 189Kcal)

夕食 計938.5Kcal

さて、この日は1日合計で約2762Kcal摂取していたことになりました。
これで、バニラアイスでも食べていたら3000Kcalになってしまうところでした。
ただ、普段は間食しませんから、日常的には何とか2400Kcal台をキープしていそうです。

実は、筆者も今現在の日常では2200~2400Kcalぐらいではないかと感覚的に捉えていましたから、まずまずいい線を予想はしていたと思うのですが、内訳に関しては感覚的にはかなりずれていましたね。

ただ、今でも間食をする時やアイスクリームを食べる時、ビールとチュウハイを両方飲む時も時々ありますから、そういう時は、結構3000Kcal近くいっているときもあるのかもしれないことは、実に意外で実に注意しなければならないと学習した次第です。
(筆者は甘辛両党・変幻自在で、それが反ってよくないことは確実ですね)

また、親との付き合い食事が習慣化した時には、二重食事を意識しセーブはしていましたが、苦しく感じる時も多かったですから、3000Kcalを軽く超えていたのかもしれません。
それで徐々にメタボになっていったことは、自分でも分かっていたのです。

若い頃は当然ながらよく食べていた感触はありますが、自販機で飲料を飲む回数も今ほど多くは無く、残業前の間食も夕食代わりと考えれば、むしろ適正だったのかもしれません。
それに活動も活発ですから、スリムを維持できていたのでしょうね。

さぁ、この内訳でお分かりですよね。
意外に間食と飲料の摂取が知らず知らずにかさんでいることがお分かりいただけるのではないでしょうか?

僕の年齢と活動レベルでは、推定必要摂取エネルギーは2400Kcalとなっています。
この日は約300Kcal、即ち、ほぼおやつの分が過剰となってしまいましたけれど、普段の食生活では、間食はほとんどしませんから、まずまず過不足が無いと考えられます。
それで、メタボが徐々に解消して来たのだと分析もしています。

皆さん、【脂肪1gは7Kcal】であることを目安として覚えておいてください。
余分なエネルギーは中性脂肪として貯えられますが、脂肪1gには7Kcalのエネルギーが貯えられるのです。

先に、脂肪は1gで9.3Kcalであるとお話しましたのに、おかしな話だと思われたでしょう。
実は、僕も、ここまでに参考文献でご紹介してきました京都大学の森谷敏夫教授やそれなりと思える医師の方が使っておられたので【体重1gは7Kcal】を採用したに過ぎません。

この根拠に関しては、筆者自身は納得できているわけではありません。
ほとんどのサイトでは、体脂肪には約20%の水分が含まれているので、体脂肪1gには0.8gの脂肪しか含まれておらず、それで9×0.8≒7Kcalと説明されています。

体内脂肪を水分無しで計測することは難しいと思われますから、多分、間違いはないということでいいだろうという判断はしています。

それで、【脂肪1gは7Kcal】としますと、この日の約300Kcalの余剰分は、300÷7=42.2gの中性脂肪として貯えられる計算になります。
毎日、この余剰が続きますと、1ヶ月で約1.3Kg太ってしまうということになりますね。

この、日々約300Kcalの余剰分を解消しようとすると、毎日約30分欠かさずジョギングをするか、毎日約1時間半ほど歩かなければなりません。

【脂肪1gは7Kcal】と同じことですが、もう一つの捉え方は、【7000Kcalの過剰は脂肪1Kg】という覚え方です。

即ち、1日約233Kcalの過剰摂取は1ヶ月で体重脂肪1Kgの増加を呼び込むということです。
こう考えれば、1日にお菓子1個を減らせば解消できるレベルだと実感できますね。

今回の筆者のケースでも、間食のミスタードーナッツ オールドファッション(290Kcal)1個を抜くとどうでしょう。
それだけで、この日の余分なエネルギーの収支をほぼ解消することができますね。

また、自販機で飲む1本の缶ジュースをやめるのはもちろん、これをお茶にするだけでも余剰摂取分は大きく減ることになります。
ジョギングやウオーキングと比べて、あなたにとってどちらが現実的でしょうか?
どちらが実行しやすいでしょうか?

筆者は、母親を亡くしてから、先に述べたような事情が消失し、自然に過大だったエネルギー摂取量が減りましたから、かなり体を絞り込めました。
体重で言えば約6Kg減少させて安定しています。
これには、褐色脂肪細胞へのアプローチによる効果も含まれてはいますが・・・。

おそらく、習慣になっている自販機での人口甘味料を使った飲料の摂取を止めれば、さらに適切な体重に近づいていくことが出来ると踏んでいます。

ダイエットの真の主役は、やはり「食欲」のコントロールであることは間違いありません。
これができてこそ、初めて生活習慣の改善や運動の効果がジワジワと相乗効果で現れてくるのです。

「食欲」のコントロールが出来なければ、生活習慣や運動からのアプローチも水の泡に消える可能性が大きいという考え方の根拠は、この事実にもあるのです。

「食事制限無し!」「好きなだけ食べて痩せる!」などという巷でよく耳にするキャッチフレーズは、基本的に絶対あり得ません。

ミスタードーナッツのドーナッツを好きなだけ食べたら・・・。
今の皆さんの基準で好きなだけ食べれば、どうなるかは明らかではないでしょうか?
好きなだけ食べたから、ダイエットしなければならない事態になっているのですから。

あなたの基準で好きな食べ物を抜かれて、替わりにあなたの嫌いなものに置き換えられたら、量的には満足できるとしても、それは「好きなだけ食べて」とは普通言わないですね。

ともかくも、別に食べずに済まそうと思えば済ませられるもの、飲まずに済まそうと思えば済ませられるものはオミットしていくということが、最も根源的で且つシンプルな対処であるとは言えそうです。

ダイエットを達成するためには、
自分の「食欲」と向き合い、これをコントロールする賢明さが大前提となるのです。

不必要な食欲と思える1日約233Kcalの食物を摂らないことだけで、1ヶ月1Kg太らずに済むのです。
そして、これが徐々に適正体重に減じてくれる確かな引き金になってくれるのです。


本講座は、引き締まった美しい体を作るシェイプアップ(一般的に「ダイエット」と呼ばれているもの)に関する正しい理論と手法を、誰にでも分かりやすく紐解くことを目的としています。

ご存知の方は少ないかもしれないWとB(読まれていく内に正体を現します)にスポットを当て、世にある多くのダイエット手法とは代謝的に全く別の根拠によるアプローチをご紹介しますが、ダイエットの本道は【過剰にならない一定の糖質をジャストインタイムで摂取する】ということ以上でも以下でもないということをバラシておきましょう。

誰にでも理解しやすいようにまとめてはいますが、一方で、医学系・看護系の大学新入生レベルには今後の勉強の基本予習・イメージ作りとしても有益ではないかと思います。