さらば 燃えない脂肪の憂鬱 第2章:エネルギー代謝 | 5
ATPの顛末~エネルギー価値の低いAMPのこと
ATPの合成には3つのルートがあることを知りました。
ATPがADPになるときに、エネルギーが発生することを知りました。
その上で、もう一つ言っておかねばならないことがあります。
例えば、ハイパワーをある程度の時間発揮し続けなければならない状況では、P(リン)の1分子放出だけでは賄えない場合が想定されますね。
確かにミドルパワーでATPを発生させる回路も動くのですが、それでも足らない場合、一部は、P(リン)を連続して放出することでエネルギーを発生させる反応が起こります。
すなわち、
の反応の直後に、
の反応を連続して起こすということです。
ADP(アデノシン二リン酸)が2分子あるP(リン)のうち1分子を放出することで、自らはAMP(アデノシン一リン酸;Adenosine Monophosphate)になる反応を起こすことで、逼迫したエネルギー事情を解消してくれるということですね!
そして、AMPとなった時点で、これ以上はエネルギーとしての使い道はなくなるのですが、細胞内にあるAMPキナーゼ(AMPK)という酵素に結合してこれを活性化することで、後述するGLUT4が細胞表面に移動し、糖の取り込みをするように働くんですね。
すなわち、AMPキナーゼはエネルギー価値の高いATPと価値の低いAMPの濃度比を監視することで、価値の低いAMPの濃度に比例して糖質を取り込もうとさせるわけです。
「カスのAMPが増えてきたぞ!解糖系にグルコースを投入してくれ!」の指令ですね。
インスリンの「エネルギー逼迫事情内部告発版」と考えると分かりやすいかもしれません。
糖質を取り込もうとするわけですから、ダイエットから見れば逆の働きをするように見えますが、同時にミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進し、脂肪合成を抑制してくれる作用も及ぼすのです。
すなわち、運動することで活性化するAMPキナーゼは、エネルギーの使用状況に応じ、逼迫してきた糖質の補充指令も出し、すぐに脂肪にも動員をかけて燃やして対応していきましょうというミッションを帯びているのですね。
なんと見事に秩序だった動きをしていることでしょう!
東京大学付属病院では、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンがこのAMPキナーゼの活性化を誘引するとして、薬理学からの抗肥満対策として研究を進めているようです。
【参考文献】
アディポネクチンが筋肉内で運動と同様の効果をもたらす可能性を発見(削除済)
東京大学付属病院 門脇 孝 教授 等
私たちの体は、エネルギーが必要だからこそ栄養取り込みと脂肪燃焼を絶妙のバランスで指令してくれます。
エネルギーが必要ないのに、脂肪だけ燃焼してくれる都合の良いシステムはないのです。
さて、第2章|2の化学反応式に書いていますように、ATPは決まった一定量のエネルギーを生み出します。
ATP 507g(1mol)あたり7.3Kcalのエネルギーが放出されます。
ということは、1日の消費エネルギーが2000Kcalの人は、なんと!
のATPを毎日生成している勘定になりますね。
全てのエネルギーがATPによると仮定して(ここまでで理解されたように、褐色脂肪細胞はATPによらずにエネルギーを産生)の単純メド計算ですが、それにしてもびっくりするようなオーダーのATPを、毎日私たちは生成していることに著者も驚きました。
さぁ、如何でしょうか?
ATPという物質を通して、生活活動で体を動かすことや運動することで消費するエネルギーレベルの仕組みが大よそお分かりいただけたでしょうか?
第2章|6:エネルギー源として使われる順序?運動をするタイミング?-NEATとともに-
本講座は、引き締まった美しい体を作るシェイプアップ(一般的に「ダイエット」と呼ばれているもの)に関する正しい理論と手法を、誰にでも分かりやすく紐解くことを目的としています。
ご存知の方は少ないかもしれないWとB(読まれていく内に正体を現します)にスポットを当て、世にある多くのダイエット手法とは代謝的に全く別の根拠によるアプローチをご紹介しますが、ダイエットの本道は【過剰にならない一定の糖質をジャストインタイムで摂取する】ということ以上でも以下でもないということをバラシておきましょう。
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