遥かな尾瀬~自然と生命の聖地~


ニッコウキスゲの群生
ニッコウキスゲの群生する尾瀬

あと1ヶ月もすれば初盆ですね。
その前にと、一昨日から尾瀬に行ってきました。
二日ばかり、あなたや仏壇のお世話を出来ずにすみませんでした。

10年ぶりの家族旅行のつもりでしたが、前日の夜に○○(息子)が過労になっていたのでしょうか、発熱してダウンしてしまい、結局一人欠けての旅行となりました。

思えば、その10年前の旅行も自然の聖地、芦生演習林でした。
関東の方はご存知ない方も多いかもしれませんが、京都大学農学部の演習林です。

原生林ですから、当然、湿原の尾瀬とはまた違った趣があります。
尾瀬のような広さはないと思いますが、まさに太古と生命の息吹を感じさせる原生林でした。

あの頃は、まだ、下の息子が小学6年生でしたから、本格的なコースを巡ったわけではありません。
本格的に巡るには、今でもちょっと家族だけでは心もとない感じがしますよ。
あなたなら、「こんな怖いところへはよう行かん」と言ったことでしょう。

前日、車で行ったのですが、民宿に辿り着くまでに、行けども行けども宿らしきものがない!
一本道で道を間違えるはずもないのに、落石でもしてきそうな中、夜の帳は下り、大いに不安にかられた思い出の旅でした。

そして、この民宿こそが、今でも我が家で語り草となっているエピソードを数々提供してくれたことを、いつか、このサイトでも語らずにはおれなくなることでしょう。

あれから10年、今度は尾瀬
またしても、自然を満喫する旅となりました。

この度は、あなたの可愛がった△△(娘)が、僕たち夫婦にプレゼントしてくれる形になりました。
あの△△(娘)が、もう、そんなにまで一人前になってしまったのですよ。

僕は尾瀬は初めてだったのですが、高校時代山岳部だった嫁さんは二度目だそうです。
普段歩いていない僕は、少し大変だったですけれど、それでも、予想以上に元気に歩けましたよ。
やはり、自然の匂いは実に清々しく、久々の達成感と爽快感を味わうことができました。

ツアーでの旅行は、あなたと叔母さんを北海道旅行に連れて行ってあげて以来です。
あれは、学生としての最後の年だったのでしょうから、もう30年を過ぎるのですね。
一度でいいから北海道へだけは旅行がしたいとあなたは常々言っていましたから、後回しにせず、早めに済ませておけてよかったとしみじみ思います。

さて、7月の尾瀬ですから、水芭蕉は終わってしまっていましたが、ニッコウキスゲが綺麗でしたよ。
もっと多いのかと思っていましたが、牛首辺りまでではあまり群生はしておらず、ポツポツ。
牛首を超えて三叉付近までいかないと群生は見れませんでしたよ。

糸トンボが飛び交う尾瀬
糸トンボが飛び交う尾瀬

湿原の中では、糸トンボが沢山飛んでいるのを久々に見ました。

青い色をした糸トンボや赤とんぼに似たトンボがあちこちに飛んでいましたよ。

なかなかカメラに収めるにはすばしこくて大変なようでしたが、交尾をしながら飛んでいた糸トンボを娘が収めました。

僕が子どもの頃には、糸トンボからシオカラトンボ、オニヤンマ・ギンヤンマ、赤とんぼなんて、その辺りどこに行ってもいっぱい飛び回っていましたのに、今やトンボなんてほとんど見かけませんね。

庭の樫の木に蜜を塗ってやれば、早朝には、カブトムシやクワガタが沢山来てくれましたね。

それに、蛍でさえ、よく家の中にまで舞い込んできましたね。
掴まえて虫かごに数匹入れると、真っ暗闇でも、本当に「蛍の光」でほんのりと見えましたね。
本当に、「蛍の光」で勉強が出来るのだと僕は思ったものです。

また、蛍が飛ぶのを見ながら、床机に腰掛けてスイカをたらふく食べましたね。
どちらの実家も農家でしたから、もう嫌と言うほどスイカが食べれたものです。
そうそう、親父が居たあの頃は、その後、蚊帳を吊って寝ていたことも思い出します。

あらゆる生き物が豊かに生きれるということは、やはり僕たち人間にとっても生きやすいということなのだということをしみじみ感じますね。

燧ヶ岳を映し出す尾瀬ヶ原の池面
燧ヶ岳を映し出す尾瀬

さて、尾瀬は本当に良い天候に恵まれましたよ。
ガイドさんによると今まで一番のベスト日和だったとか。

燧ヶ岳(ひうちがたけ)を見ながらの湿原は、実に美しく、あらためて自然の中の人間のちっぽけさを感じました。

暑くもなく寒くもなく程よい気候の中、前半はゆっくりと景色や動植物を楽しみながら、後半は、「一度決めたら目標達成するまで頑張るのね」と冷やかされながらタイムリミットギリギリで三叉まで歩を進めました。
おかげで、帰路の鳩待峠までの最後の上りはキツかったー。

行程を終えたときには汗べっとりでしたよ。
このツアーで自然以外で一番良かったのは、美味しいソフトクリームに数々出会えたことですかね。

尾瀬散策の起点でもあった鳩待峠での散策後の「花豆ソフトクリーム」の美味しかったこと!
これは、疲れていたからだけではないと思うんですよ。
ここで買ったお土産は、花豆の甘納豆も野沢菜も全てが美味かったですね。

ついでなんですけれど、北陸道の有磯海SAで食べた「しんきろうソフト」も実に美味かった!
海洋深層水と塩を使ってあるとかのシャーベット的なソフトなんですが、淡いグリーンブルーが綺麗で上品でしたし、味がその色にピッタリとフィットした感じでした。
これら二つは、あなたにも是非食べさせてあげたかったですね。

もう一つ、ホテルで食べたこんにゃくのソフトクリームも、結構渋い味で美味かったですよ。
あとは、ソフトクリームの話ではないんですが、添乗員さんが絶賛していた「ヤスダヨーグルト」が、行きも帰りも売り切れだったことが残念でした。

それで、帰ってきてから早速ネットで注文しましたから、あなたにはこれをお供えしますね。
誰もに良いものを食していただきたいので、ベルマン・ド・ボーテのお客様に何らかのサービス企画をしたいと思っているんですよ。

ところで、この尾瀬はもちろん国立公園なのですが、何と特別保護地区の7割を東京電力が所有しているということは、この度の福島原発の問題で売却を検討しているというニュースが流れるまで、恥ずかしながら薄学のため全く知りませんでした。

何と、年間2億の維持費が発生するそうですね。
世界はどうなのかは知りませんが、ともかくも、なんだか訳の分からない不思議な構図が出来上がっているようです。

国側からすれば、公立公園の維持管理を私企業にお任せしたまま、一方で対極にある原発推進も電力会社にお任せして来たわけです。

電力会社からすれば、利用価値の無い資産と言っても過言ではないでしょうに、原発の恩恵や利権のお礼とでも言うように、維持費まで支出して守っているわけですかね?

維持費と言っても、結局は電力料金の中にその原価は入っているわけですから、もうどこから何のために何重に盗られているのか分からないことも多いのかもしれませんね。

国立公園など、しかるべき時に国が買い上げて国で管理するのが当然でしょう。
それをしないのなら、国立公園などと指定すること自体がおかしいのではないでしょうか?

東電だからこそ、イメージアップ効果もあり、PR費と考えれば成立もするでしょうが、ごく一般の地主ならば、緑地のまま保存しなければならない等の規制のかかった土地をいくら税金を軽減されたからと言って、相当な出費をしてまで維持したいでしょうか?

あなたの兄は、実にそれで苦労した人でしたからね。
自分はボロボロの野良着で、何一つ贅沢もせず、緑を守らなければの一心で生きた人でしたね。

見てごらんなさい。
緑の残すだの残さないだの、そんなことには頓着無くどんどん売却したり、運用することを考えた周りの人々は、実に現在の世に相応しく上手く生きていったではありませんか?

表向きは、「自然を残すことは良いことだ」と持ち上げても、誰も何一つしてくれませんよ。
どんどん売って、どんどん運用開発することが、国も税務署も一番嬉しいんですから。
そして、それこそが現代の正義なのですから。

原発もそうでしたが、国や未来に生きる人のことを考えれば考えるほど憂き目を見るような社会なんですよ。

自然を壊す側に加担しておきながら、風向きが変わると今度は、自然を守る側の先頭に立って誰もにいい顔をする。
極端に言えば、そんな人々には住み易い社会が熟成してきたのでしょうね。

でもね、僕なんかは、一旦壊した自然は、人の手で無理に再生しようとしてもダメだと直感するんですよね。
違うところのホタルを放流しても生態系やホタル自身にも悪影響があるだろうことは、随分前に僕も書いたことがありますけれども、最近は、学術的にも徐々に分かってきつつありますね。

自然破壊の罪滅ぼしで、無理に人の手で自然再生をしても意味があるのかないのか分からないということが正しい認識だと思うのです。
こういうことをする人は、意外に何の知識も無く、自己アッピールのために行っている場合が多いように思われますから、決して、この類に騙されてはいけないと思うのですね。

尾瀬ヶ原から眺める至仏山
尾瀬からの至仏山

自然はそんなに、日和見人間の思惑を都合よく受け入れてくれませんよ。
自然を守ることは、自然を壊さないことでしか厳密にはなし得ないのではないでしょうか?

尾瀬の散策中、仏になったあなたは、きっと至仏山の頂から僕たちを見守っていてくれたのかもしれませんね。

今年は、あなたの遺品整理をしているからでしょうか、ムカデと2匹もお目にかかりましたよ。
それも、あなたなら悲鳴を上げただろうほどにどでかいムカデ。

そして、これはいつものことですが、草を引いていると沢山のミミズたちともお目にかかります。
そんなとき、いつも僕は何だか心からホッとするのです。

自然を極力壊さないことは、僕たちの生命を壊さないこと。
僕は、この尾瀬の自然と生命の詩を聞き、ますますそう感じ入りました。
尾瀬の自然が、壊されることなく未来永劫であることを信じたいですね!

-2011年7月12日-


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