拝啓 母上様 ~六道輪廻 裁きの日に~

今日は、これもあなたの名作、可愛いよだれ掛けの刺繍で飾ってみましたよ。

刺繍002よだれかけ 女の子とねこ

早いもので、あなたが逝ってから今日は五七日(ごなのか)。
お変わりなく修行の旅に励まれているでしょうか?

今日は、地蔵菩薩様にお会いする日で大変ですね。
一人では不安だとドキドキなどしていませんか?
きっと閻魔王の形相を見ることもなく、六道輪廻を優しく説かれていることと思っています。

三十五日の今日、お友達が連れ立って来て頂けることになっていましたが、
昨日に続いてあいにくの雨模様。
それに、身体の調子が良くない方も多いそうで、お流れになってしまいました。
きっと心待ちにしていたでしょうに、一緒にお話できずに残念でしたね。

生け花も新しいものに取替え、両脇に小さなスタンド台を設けて、その上にお花を乗せ、その横にはあなたの写真も飾りましたから、とても小ぎれいにまとまったと一人悦にいっていましたのに・・・。

この花を見ると、改めてお葬式のときのお花は酷く、ボッタクリもいいところだったことが分かります。
3分の2の予算で、天と地ほどの違いがありますね。
やっぱり、さすがに、あなたの愛した芦屋フローラさんでしたね。
あなたのお気に入りのお花屋さんには、二楽園芦屋店パフィオ DE ニラクもありましたね。

あなたのお友達のSちゃんが、葬儀の花を見かねて、四十九日のお花は、葬儀の翌々日には手配してくれたんですよ。
葬儀屋と花屋さんのタッグでは、あんなあくどい殿様商売をするんですね。
でも、格式も高く素晴らしいお寺さんにお勤めをしていただけることになりましたから、帳消しにしてくださいね。

親父の実家の相続を放棄した僕たちは、お寺を決めておかないとと気になりながら結局決めずに
ここまで来てしまいました。
でも、変に探すよりは、ずっと素晴らしい結果になったと僕は喜んでいます。

四十九日は親戚だけで執り行いますので、お友達には、今日、満中陰寸志として
わずかばかりの粗品を挨拶状と手紙を添えて送っておきましたよ。

○○ 様

今日は、はや、亡き母の五七日を迎えました。
閻魔王の形相を見ることも少なく、地蔵菩薩様に六道輪廻を優し説かれていることでしょう。

今朝は、生花も新しいものを供え、少しばかり写真を傍らに飾り、今日はあいにくの雨模様の上、XX様やXX様の体調がお悪いことを報告し、一緒にお話が出来ない淋しさをなだめておりました。

母も、最後の最後に○○様に、このような形でご縁をいただくとは思ってもみなかったことでしょう。
何卒、お体ご自愛の上、またの日に会いに来てやってくださいませ。

じっくりと考えてみますと、最後の最後まで親しいお友達に見守られた幸せなど、普通ではなかなか浴せるものではありません。
兄弟姉妹を見送って心淋しかった中、本当に心強かったと思います。

頑固なまで一本気で我侭だった母に、愛想を尽かさず、最後までお付き合いいただけたことを心から感謝いたしております。

さて、母の病気に関して、今になって少し懐疑することがあります。
実は、6年ほど前から『ウコン』を飲んでいました。

飲んでいるといっても、1日30粒を2,3回に分けてという処方とは程遠く、もったいないからと1日1回5~6粒飲んでいる程度で、しかも、忘れて飲まない日の方が多かったというようなレベルです。

私は、こういうことにはほとんど無頓着で、『ウコン』は健康に良いという程度の認識しかなく、肝臓に良いということすら知りませんでしたが、沢山余っているウコンを見て、「あなたも肝臓が悪いかもしれないから飲んだら」と言われ、調べてみたのです。

そうすると、健康食品による肝障害発生事例では、ウコンが原因となっている事例が群を抜いて多いことが分かりました。

アキウコンには鉄分を多量に含有する製品もあるようですし、服用の結果、自己免疫性肝炎が増悪し、ウコン摂取を中止したところ、肝機能検査値が正常値に近づいた例も報告されていました。

母の場合は、多量摂取とは程遠い微量摂取とも言えるレベルにしろ半日常的に飲んでいましたし、微量でも疾患を誘引する事例も実際にあるようですから、ウコンの摂取が最初の肝疾患の引き金になったのかもしれないという可能性は充分に考え得るところだと感じました。

それまでは、何一つ健康上の問題がなかったこと、及び、薬の服用やサプリの服用自体が皆無であったことという条件下では、少量でも相当効いたであろうことは想像するにやぶさかではありません。
(病院での薬も見事に効いていました)

人のために一生懸命生きてきたのに、何が悪くてこんな目に遭うのか?
と、3回目の入院あたりからしばしば口にするようになった母。

ウコンを買ったときに調べていても、どのような結論を出せたのか分かりませんが、正常な身体に反って要らぬ波風を立てることになったとも思え、服用を止めさせることができたかもしれないと思うと残念な限りです。

「何故、一人でおとなしく居れないのか?」と呆れ果てた日々も、いまはいとおしい思い出の日々となってしまいました。

○○様には、こころから母の支えになっていただきましたこと、感謝の念でいっぱいです。
昨日帰ってもらったばかりなのに、「○ちゃん、今日は来ないんか?」と聞くような始末でした。
母の分まで、いつまでもお元気でいていただきたいと願っております。
何か困られたときは、いつでもお申し付けくださいませ。

今後とも、残されし私どももよろしくお願い申し上げます。

5月12日 五七日の日 14:00

あれから、あなたの遺品の整理をしていますが、僕が形見として残したものは、病床で身にまとっていたパジャマやスカーフやハンカチなど、あなたの匂いの染み付いたものを大きな収納ボックスに詰め込んでいます。

トイレに立たせるために、あなたをベッドから上半身を抱え上げたときのあなたの匂いが一番僕の記憶に残っているのです。

3回目の入院の頃からは、抱え上げても自分で踏ん張る力が徐々に無くなってきていましたね。
最後の方は、全体重を僕に預けるあなたを、僕はただただ移し変えなければなりませんでした。
あの時の僕に全身を預けきったときの感触と重さと匂いが僕の形見のようなものになっています。

僕に全身を預ける度に、そんな自分を、僕が思う以上に情けないと自分を責めていたのですね。
夜中に何度も起こすことを詫びて「あんたに迷惑をかける」とオイオイ泣いたのです。

「一生懸命育てた息子に何を詫びることがあるのか?」
僕は、このときに初めてこの言葉をかけることができたのです。

本当は、あなたの食事の世話をするようになってから、僕を育てるために、あなたがどれほど愛情を込めて食事を作っていたかが痛いほど分かり、その感謝を述べたいとは思っていたのに、当たり前の感謝の感情を言葉にすることが、どうも僕は昔から苦手でした。

「言葉で表現してあげなければ女は分からないのよ。言葉で満足させてあげてね。」
今は亡きあなたの友人が、昔、僕に言った言葉を思い出していました。
もう少し、形ある愛情を注いであげればよかったのにと悔いている自分が居ます。

今度生まれ変わるとすれば、僕はあなたの親として生まれ、悔いた分だけ余分に溢れる愛情を注ぎたいと思っています。

-2011年5月12日-


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