皮膚の科学 乾燥肌

乾燥肌ってどんな状態?

『乾燥肌』は日常的に使われる言葉ですが、実際にはどのような状態の肌を言うのか説明してと言われると、「肌の表面がいつも乾燥した状態」というような答えしか思いつかないのではないでしょうか?

もう一歩深めて教科書的な説明での理解をしておいた方が、化粧品を選ぶ際にも役に立ちそうですね。

乾燥肌とは「表皮の最上層(即ち空気と直接触れる層)にある角質細胞層内の水分保持力が低下している状態」であるという定義を導入されることを最初に提案しておきますね。

そして、「水分量ではなく、水分を保持する能力が大事なポイントなんだ」という点を念のため付け加えておきます。

化粧品では耳たこの言葉『保湿』は、言葉通り水分を保持するということに他なりませんから、「分かっているわよ!」と言われそうですが、念のため確認しておきました。

いくら水分を補給してもこれを保持する力がなければ一時的な潤いだけで終わるということは十分にわが身で経験されている方も多いかもしれません。

乾燥肌ケアに重要な役割を果たす役者たち?

乾燥肌のケアや改善をしていこうと思えば、この定義からも明らかなように、『保湿』という言葉がキーワードになりますね。

そして、もう一つ必ず出てくる言葉があります。
『バリア機能』という言葉です。

表皮が持つこの2つの重要な機能、『保湿』『バリア機能』を担っているのがセラミドとNMF(天然保湿因子)だということも必ず書かれています。

では、「セラミドとNMF(天然保湿因子)ってどこにある?」と尋ねられたら、的確に答えることが出来ますでしょうか?

セラミドとNMF(天然保湿因子)ってどこにある?

このことを分かりやすくイメージするために、【皮膚の科学(概論)】の復習を兼ねながら見ていきましょうか。

表皮は4つの細胞層から成っていて( 手のひらと足の裏など 特定の部位では5つの層)、その最上層に角質細胞層がありましたね。

そして、どんな説明を読まれても、「この角質細胞層に『保湿』と『バリア機能』に重要な役割を果たす細胞間脂質(セラミドと書かれている場合もあり)とNMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)がある」と書かれてあったはずです。

では、具体的にこれらの物質はどこにあるのでしょうか?
これを知識としてしっかりと留めておくことは、角質細胞層自体が簡単な構造ですからイメージとして眺めておけば全く難しいことではありません。

角質細胞層も、角質細胞があって細胞間脂質(intercellular lipid:インターセルラー リピッド)がそれぞれの細胞間を埋めているというだけの単純なものです。
ですから、細胞間脂質は各角質細胞の間にある物質と想像するにやぶさかではありませんし、現実にそれで正しいわけです。

ただ、セラミドと書かれていた場合は、それがどこにあるのか分からないという問題があります。

    ※注記

    よく、『セラミド(細胞間脂質)』とか『細胞間脂質(セラミド)』と書かれている場合がありますけれども、細胞間脂質とセラミドは同義語ではありません。

    細胞間脂質には、多くのセラミドが成分として含まれており、そのセラミドの持つ『保湿』や『バリア機能』が重要だからこのように書かれているのでしょうが、少し誤解を招く怖れがありますから気を付けてくださいね。

さて、「セラミドとNMF(天然保湿因子)はどこにある?」を結論から言うと、

  • セラミドは細胞間脂質の中にあり、その主要な成分です。・・・脂質
  • NMF(天然保湿因子)は細胞自体の中にあります。・・・水溶性

上記枠内の事情もあり、意外にこういった区別が付いていないものではないでしょうか?

イメージを掴むついでに付け加えておきますと、『保湿』と『バリア機能』に重要な役割を果たすのは細胞間脂質とNMFだけではありません。

もう一つ重要な要素があります。
それは、皮脂腺から表皮全体に分泌される皮脂なんですね。

細胞間脂質とNMF(天然保湿因子)と皮脂
これが、『保湿』と『バリア機能』に重要な役割を果たす三大要素というわけです。

いよいよ、これらの三大要素が密集する表皮を分かりやすく拡大イメージしたモデル図を眺める時が来ました。
(下図:クリックで拡大)

表皮 モデル図

正常な肌では扁平な五角形や六角形の形をした角質細胞が層をなして敷石状に並んでおり、それぞれの細胞はコルネオデスモソーム(接着斑)によって接着結合されています。

そして、多層をなす各細胞の隙間に細胞間脂質が充填されているというイメージです。
(よく、レンガを角質細胞、レンガ間を埋めるセメントを細胞間脂質と例えられます。)

セラミド(スフィンゴ脂質)は、個々の角質細胞の間に詰め込まれた充填物と言える細胞間脂質の約半分を占める主要成分で、髪の毛にも多く存在します。

脂質という名の通り油の一種ですが、その分子構造は7種類あり、そのどれもが油と馴染みやすい親油基と水と馴染みやすい親水基で構成され、それが故に層をなすことで下図のように水分を抱え込むことができるわけです。

セラミドのラメラ構造 モデル図

【脂質-水分-脂質】と水分を挟み込むように抱かえ込んで層をなしていますね。
この構造を脂質二重層状構造(ラメラ構造)と呼びます。

一方、細胞核内にあるNMF(Natural Moisturizing Factor)は水分と結合する性質を持ち、且つ水を抱かえ込む物質で角質細胞の中にあります。

本ページを一通り読まれた後、この図を頭に印象付けておれば、お友達に乾燥肌の説明してあげるにも、自然に言葉が出てくるようになりますよ。

さらに、三大要素のそれぞれの成分についてまとめた下表があれば、『乾燥肌』に関する知識の骨格は出来上がっちゃったも同然です。 どんなカタログを読まれてもスラスラと理解出来ちゃいます。

保湿・バリアの三大要素(皮脂・細胞間脂質・NMF)主成分って?

要素 成分
皮脂 ワックスエステル
脂肪酸・トリグリセリド・スクワレン
細胞間脂質 セラミド・糖セラミド・・・約50%
脂肪酸・コレステロール
NMF
(天然保湿因子)
アミノ酸・アミノ酸誘導体(ピロリドンカルボン酸etc)・・・約50%
ミネラル・尿素・クエン酸塩

これで、存在する場所と成分が分かったわけですが、もう一つだけピックアップしておかねばならない要素があります。

それは、
「細胞間脂質とNMF(天然保湿因子)はどこから来たのか?」という由来の要素です。

皮脂及び皮脂膜の詳しいお話はまた別ページで記す予定にしておりますので、ここでは、細胞間脂質とNMF(天然保湿因子)に限ってまとめておきましょう。

角質細胞層にある細胞間脂質とNMFの原材料は、実際には顆粒細胞層で準備されるのですが、顆粒細胞自体が最下層にある基底細胞から生まれて上層に上がってきたものです。

即ち、細胞間脂質とNMFに限らず、表皮細胞やそれに含まれる物質は全て基底細胞から作られたものと言えます。

聞くと当たり前のことなんですが、細胞間脂質もNMFも私たちの体が自分自身で作り出した物質だということは忘れないでいただきたいと思います。

このことこそが、若い方では一般的には28日間という周期で生成と消滅をくり返す『ターンオーバー』と呼ばれる営みそのもののことなんですね。

皮膚のターンオーバーの復習

基底細胞から生まれた細胞は態様を変えながら有棘細胞→顆粒細胞→角質細胞へと徐々に変化しながら上層に上っていきます。(一般的に『角化』

周期が28日の若い方では、角質細胞になるまでに約14日間、角質細胞になってから垢として表皮から脱落するまでに約14日間と言われています。

最上部の図の角質層の部分に「平均的に約15層」と書いていますが、ここから、健康な若い方ではきっちり1日1層が剥がれ落ち、替って新しい1層が上がって来るということになります。

皮膚の最前線では、核を無くした死滅細胞である角質細胞の一層一層がバリアや保湿のために約14日間を戦い抜いた後、一列ずつ整然と体から完全に散っていくわけですから、実に愛おしい存在ですよね。

私たちは、生きていく中で、ただ歳を重ねるというだけで、このターンオーバーの周期は長くなるとともに、真皮に含まれるヒアルロン酸やエラスチンだけでなく、 ここでテーマとしている細胞間脂質やNMFも悲しいかな、御多分に洩れず減少していきます。

もちろん加齢という長いスパンには、日常的にさらされる紫外線や酸化ストレスや時折見舞われることもある新陳代謝の異常などの蓄積の総和が大いに含まれるわけですね。

また、過剰な洗顔や強すぎる洗顔によって、セラミドやNMF因子が流出してしまうという自らが招くトラブルもあります。

保湿に関して言えば冬場の乾燥期にだけお肌が乾燥しがちになる一時的な現象も垣間見られます。

ですから、乾燥肌も季節的あるいは一時的現象で止まる場合もあれば、加齢や肌トラブル・代謝異常などで尋常性になってしまう場合もあります。

いずれにせよ、表皮細胞全体のありように問題があるというわけですね。

ここまでの重要なポイントだけ整理しておきますと、

  • 細胞間脂質は各角質細胞の間に存在し、NMFは角質細胞に存在すること
  • 細胞間脂質の主要成分はセラミドであること
  • 細胞間脂質はそれ自体に保湿機能があること(ラメラ構造)
  • 構造的に見ても、細胞間脂質が「保湿」「バリア機能」に関して主役であろうと考えられること
  • NMF(天然保湿因子)の主要成分はアミノ酸及びアミノ酸誘導体であること
  • 細胞間脂質もNMFも表皮の最下層にある基底細胞で作られ、ターンオーバーサイクルの終了とともに消失すること
  • ターンオーバーサイクルは加齢とともに長くなること
  • 細胞間脂質もNMFもその生成量は加齢とともに確実に減少していくこと
  • 細胞間脂質もNMFも日常の営みの中で自ら表皮を破壊する行為で減少させている場合があること

ということになります。

ここから、乾燥肌ケアについて考えていくわけですが、一つだけ私も納得し切れていないことがあります。

それは、「ターンオーバーの周期と乾燥の関係」についてなのですが、あちこちのサイトで書かれているような説明は【ターンオーバーサイクルが遅くなることと乾燥肌】の因果関係が私には全く理解できないのです。(推測はしていますが..)

と言うか、どのサイトも判で押したように、ターンオーバーサイクルが早い場合の乾燥との関連を語る明快さとは真逆に、さりげなくこっそりと知らない内に【ターンオーバーサイクルが遅い=乾燥】と据えられてしまっています。

二次情報の加工編集が多いということなのでしょうね。

この命題は、これも別ページで記させていただくとして、今はこの要素は除いて乾燥肌ケアを考えていくことにしましょう。

簡単明瞭!要するにこれが乾燥肌ケア!

では、皆さんが化粧品メーカの開発者だとして、乾燥肌ケアという視点で眺めた場合、どのような方針を立てられるでしょうか?

実に簡単なことです。

  1. 自らセラミドを作る能力を上げてやればいい
  2. セラミドを補給してやればいい
  3. 自らNMFを作る能力を上げてやればいい
  4. NMFを沢山補給してやればいい

要するに、乾燥肌スキンケアの方針としては減少した「保湿」「バリア機能」に有効な物質を自ら産生する能力をアップさせるか、物質そのものを補給してやることしかないのです。

この基本方針までなら、私たちの素人でも立てることが出来るのではないでしょうか?

さて、ここからは専門家に任せる領域になりますが、素人なりに考えていくにあたって2つのヒントを提示しておきましょう。

1点目は、加齢とともにセラミドが減少するのは、産生力が落ちるというよりも、ある酵素の働きが活発化して産生してもその多くが加水分解されてしまうということに主な原因があるようです。

となると、セラミドを直接に補給してやる方が効率的にも合理的ではないでしょうか?
(もっとも、実際にはこんな単純な論理では済まされませんが...)

他方、NMFの方はNMF自体を補給してやるとすれば、要するにアラニン・セリン・リシンHCIなどのアミノ酸を補給すれば良いわけですが、それが核を持たない角質細胞内に取り込まれるのでしょうか?
2点目はそういった疑問が湧くことです。

となると、乾燥肌ケアに関しては、

  1. セラミドを補給してやればいい
  2. 自らNMFを作る能力を上げてやればいい

の2点に絞ることが最も合理的と考えられますね。

即ち、

  1. セラミドを配合したクリームや美容液
  2. NMF産生促進機能を持つ成分を配合した化粧水

なる結論になるでしょうか。

さて、工業的にセラミドを作る製法としては大きく3つに分類されます。

  1. 天然から抽出する
  2. 人と同じ構造のセラミドを酵母から合成する
  3. 化学的に合成して作る

Aは、小麦、大豆、コメ、トウモロコシ、コンニャクなど植物から抽出しますが、人のセラミドとは構造的な相違があります。
さらに、抽出にコストがかかるためどうしても価格的には少し張ってきます。

Bは、バイオ技術により酵母から作られバイオセラミドと呼ばれます。
バイオセラミドの種類は、人が持っているセラミドと同じく、1~5,6Ⅰ,6Ⅱの7種があり、1は主にバリア機能、それ以外は保湿機能に関与していると言われています。

Cは、化学的に合成して作られたもので、成分表示としてはBと同じ呼び方「セラミド*」となります。
ただ、セラミドと似てはいるが非なる疑似セラミドもここに含まれますが、成分表示として「セラミド*」という名称は使われませんから区別は付きます。

「セラミドたっぷり」というキャッチフレーズがあっても成分表示に「セラミド*」がなければ、疑似セラミドというわけですね。

尚、このセラミドにおいてもサプリメント商品が出ていますが、常識的に考えて効果は疑っておく方が賢明だと思いますし、実際に経口摂取による有効性・安全性については信頼できる情報はどこにも見受けられませんでした。

次に、NMF産生促進機能を持つ成分に関しましては、NMFは基底細胞から顆粒細胞に成長する段階で、【プロフィラグリン→フィラグリン→NMF】という過程を経て産生されるという機序分析から数多くの研究・開発がなされているようです。

これは、NMF自体を補給してやっても効果が思うほどでないということの裏返しのような気はしますね。

ということは、結局、

最良の【乾燥肌ケア=保湿ケア】とは、

  • 人と同じ構造のセラミドを補給してやると同時に
  • NMF産生促進機能を持つ成分(おそらく何らかのアミノ酸)を与えてやる

このことに尽きるのではないでしょうか。

ベルマン化粧品の乾燥肌ケアは?

ベルマン化粧品では、美容液ポルトゥール[AG]と[SE]に、酵母由来で人の皮膚の同じ構造を持つセラミド3リポソーム化して配合しています。

また、薬用ホワイティCレームにおいては、骨格にセラミドを持ち細胞膜リン脂質を含む糖脂質スフィンゴモナスエキスを成分として含ませる形で保湿の役割を担わせています。

NMF産生促進機能を持つ成分に関しましては、これもバイオ技術によって納豆のネバネバ部分から抽出されたアミノ酸の一種γ-PGA(ポリグルタミン酸)が最もその機能に優れ、天然保湿因子(NMF)を増加させるとの見解から、主にγ-PGA(ポリグルタミン酸)を使っています。

クレンジング・洗顔は省略させていただくとして、

NMF産生促進機能に優れたγ-PGA(ポリグルタミン酸)を有用成分として含ませたモイストスキンローションとセラミド3を含んだ美容液ポルトゥール[AG]をお顔に塗っていただいた後、保湿クリーム アロビオレームで仕上げていただく。

これがベルマン化粧品ノンルースの代表的乾燥肌ケアとなりますが、実に理にかなっていることがお分かりいただけると思います。

もっとも、ここでは一般的な保湿クリームの説明は省略させていただきましたが、アロビオレームの保湿力があまりにも優れているため(ICgeL会員様でも絶賛)、ポルトゥールを使われた場合にはどちらが効果があるのかが分からないという嬉しい感想も頂きます。

ただ、持続性保湿という視座では、セラミドの貢献度が大きいということを頭の隅に置いて頂ければ幸いです。

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